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スクラムマスター研修を受けて理解したスクラムマスターの役割とその先

概要

先日、認定スクラムトレーナーであるJoe Justiceさんの認定スクラムマスターを受講したので、研修内容を整理しつつ、備忘録として記事にしたいと思います。またスクラムがしっかりと機能し、スクラムマスターを必要としなくなったチーム(この状態を"その先"と表現しています)についても触れたいと思います。
またこの記事で使用させていただきました画像につきましては、講師のJoe Justiceさん本人より使用許可頂いています。使用させていただきました画像につきましては、2022/12/2現在の内容であり、将来的に変更していく可能性もありますのでその辺りはご了承お願いします。
改めてですが、とても勉強になる研修の提供及び、全ての資料に対して快く使用許可をしてくださったJoe Justiceさん本当にありがとうございます!

研修前の理解

今回私が受講した研修です。

abi-agile.com

研修を受ける前の自分がどの程度の理解だったのかについてですが

  • スクラムという言葉は知っている
  • スクラムマスターとはスクラムについて相当な経験と深い知識があり、スクラムについて何でも知っている人
  • なんかよくわからないけどアジャイルとセットでよく聞く名前

でした。この知識でなぜこの研修を受けたのか疑問に思われる方もいるかと思いますが、こちらは社内で受けた方がいいとおすすめをいただいた事がきっかけで受けました。
ですので、受講を申し込んだ際の期待値として受講後にスクラムについてなんとなく理解が進み、今後のチーム開発で何か役に立てばいいなーぐらいの期待感でした。

受講初日

ざっくり初日の内容はこんな感じでした。

1.運営陣の自己紹介
2.合意事項の説明
3.チーム紹介と研修の進め方
4.アジャイルやスクラムについて
5.スプリントについて
6.見積もりについて

以下それぞれの内容と所感です。

1.運営陣の自己紹介
まず講師、ファシリテーター、通訳の3名で研修を行う為、運営陣の自己紹介から始まりました。
今思えばこの3名体制もスクラムを意識してなのかもしれません。

Joeさんの紹介資料

2.合意事項の説明
ここではスクラムマスターとして初期段階でチームへ合意事項を提示するという内容でした。事例をみつつ、この研修内でのルールや合意事項についても触れていました。

3.チーム紹介と研修の進め方
ここで初めてこの研修(2日間)で共にするチームが公開されました。スクラムやアジャイルについて体験的に学ぶことも含まれている為、実際に擬似チームとして、今後の課題をこなしてくチームとなります。
チーム構成は5-6名の構成だったと記憶しています。(自分のチームは5名)またチームでの作業場としてZoomのブレイクアウトルームを使用しました。チーム発表後は簡単な自己紹介を行い、この研修で使用するボードの説明を受け、チーム名決めなどを行いました。ボードは以下のようなものを使いました。

4.アジャイルやスクラムについて
そもそもアジャイルについても理解がない自分にとってはありがたいセクションで、「スクラムとウォーターフォールの違い」というテーマでウォーターフォールとアジャイルを比較して学びました。

図だけ見るとスクラムとアジャイルがいまいち理解できてない自分にとっては「ん?アジャイルの話?スクラムの話?」となりましたが、説明を聞くことでざっくり以下のように理解する事ができました。

  • アジャイル開発は要件〜展開までを細かく繰り返し行う開発手法
  • 細かく切り出す事で、リアルタイムなニーズやフィードバックを受けて、小さな単位で改善を繰り返す事が可能
  • 常に変化するビジネスの対応に柔軟に対応しやすい
  • アジャイル開発の一つにスクラムがある

ウォーターフォールとアジャイルの違いについて理解できた事に加え、スクラム(アジャイル)かウォーターフォールかを選択する際には仕様変更が4%未満か以上かで判断すると良いという話がありました。この4%についてはどの様に取るのかとか、根拠は何かについては研修内では分かりませんでしたが、ザックリ自分の中で新規サービス開発など不確実性に対応をしていく要請が高いことが多い開発現場においては相性の良い開発手法だと理解しました。

アジャイルについてもっと詳細にしりたいと思う方は以下弊社のアジャイルに関する記事がありますのでよければ読んでください!

tech.nri-net.com

5.スプリントについて
ここではスプリントについてとスプリント内で行う4つのイベントについて説明がありました。
参加者の話を聞くとこのスプリントについて少し理解が難しかったという話が多く上がっている印象でしたが、自分が参加しているプロジェクトでは部分的にかいつまんで体験してきたのでむしろ一番腹落ちしたセクションでもありました。

自分の理解ですが、スプリントと言う一つの単位の中にスプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、レトロスペクティブの4つのイベントがあり、そのスプリントを何度も繰り返していく事でプロジェクトを進めていきます。以下はアジャイルの例ですが、スプリントの中身が違うだけで繰り返し行う点や、それによる利点、リスク回避などの効果は同じかと思います。

またそれぞれのイベントについては以下の通りです。

  • スプリントプランニング:開発者が技術的なタスクを計画するイベント。このスプリントのゴールや成果物を定めた上で、作業プランを考え、スプリントバッグログを作成する。
  • デイリースクラム:チーム内で進捗を確認し、1日の作業を再計画するイベント。ここでは再検討できるので必要に応じてスプリントバックログを再検討することもできる。
  • スプリントレビュー:スプリントが終えた時点でスプリントの成果を開発者からステークホルダーへ見せるイベント。事前にプロダクトオーナーに確認済みに状態にしておく必要があり、ここでフィードバックをもらって修正するという意味のイベントではない。(修正や再検討はデイリースクラムの中で行う)
  • レトロスペクティブ:スプリントレビューが終えた後にチーム内でスプリントの改善点を確認するイベント。ここではプロダクトの改善ではなく、プロセスに関する技術面や、チームに関する感情面について振り返り、改善点を洗い出します。また次のスプリントまでに改善する方針を定め、実践します。

6.見積もりについて
このセクションでは冒頭に100%正確な見積もりや、計画はありません。よって期間を見積もるのではなく、相対的にサイズを見積もります。それによって正確な期間を見積もる時間が短縮され、見積りの精度も向上させる事ができます。と言う話があります。
今まで期間でしか見積をした事がない自分にとっては目から鱗でしたが、確かに経験則からサイズで見積もる方が遥かにイメージしやすく、正確な見積もりが不可能であるのならざっくりとしたサイズにした方が遥かに時間の短縮と見積に対しての実施の精度は向上するだろうなと思いました。

受講2日目

2日目の内容は以下の通りでした

1.モブプロについて
2.スクラムについてのテスト
3.3-5-3について
4.Lean Coffee

1.モブプロについて
モブとは、チーム全員が同じ事を同時に、同じスペースで、同じコンピューターで作業する方法で、ペアプロから進化して、チームで行えるようになったものをモブプロと言うそうです。
また期待できる効果については

  • 質問から回答を待つ時間や、文面だけのやりとりで生じる誤解など、チームが持つ問題を軽減できる
  • お互いから知識やスキルを学ぶ事で(例えばシニアメンバーからは技術面、ジュニアメンバーからは創造性など)チームで知識を共有し、クロスファンクショナルなチームの育成が期待できる
  • チームメンバーの作業切り替えが発生した場合もスムーズに切り替え、作業の続行ができる為スピードが向上する
  • 迅速なフィードバックが行え、不要な会議を削減する事ができる

があげられていました。少しですが模擬モブプロを実践し、体験してきましたが、確かに上記にあげられている効果はありそうでした。特に質問からの回答スピードや、迅速なフィードバックによる不要な会議削減は効果として即効性が高く感じました。
ただ、モブプロに関してはオフラインが推奨されている為、オンラインでの環境になれている現状では少し受け入れられない部分があるかもしれないと感じましたが、オンラインでもビデオ通話などを利用して画面共有を行う事でモブプロに近い状態で上記の効果が出せるのではとも感じました。
またどこかで試せたらなと思います。

2.スクラムについてのテスト
ここではスクラム認定試験の模擬テストを10問ほど行いました。
こちらに関しては是非受けていただければと思いますのであまり多くは記載しません。

3.3-5-3について
ここではより実践的に3つに責任にそれぞれ役割に分かれ、5つのイベントを実践し、3つの成果物を作成しました。
3-5-3に関しては以下の図に記載されている通りです。

3つの責任と3つの成果物については以下の通りです。(5つのイベントにつきましてはスプリントについてでそれぞれ説明しましたの割愛しました)

3つの責任
・スクラムマスター:スクラムの5つのイベントを促進し、チームのスピード、幸福度、能力の向上・改善に努めます。スプリントバックログの作業に、開発者のメンバーと共に参加することもあります。
・プロダクトオーナー:チームの仕事に優先順位をつけること、組織が正しいものを構築すること、また多くのステークホルダーの間で、正しいものが何であるかについて調整し認識を合わせることを行います。
・開発者:実際に開発、作業に責任を持ちます。またスプリントの作成からプロダクトインクリメント(顧客に納品が可能な状態のプロダクト)を行うのも開発者の役割です。

3つの成果物
・プロダクトバックログ:スプリントやプロダクト、サービスなどをリスト化したものを指します。
・スプリントバックログ:最優先のプロダクトバックログアイテムをスプリントへ移行した状態で、スプリントをのゴールを達成させるための計画です。
・インクリメント:スプリントで完了した成果物であり、顧客に納品が可能な状態のプロダクトを指します。

4.Lean Coffee
ここでは研修を一通り終えて、実際に学んだ上で出た疑問などを基に議論したいテーマを一つあげ、チーム内で優先順位を設け、実際に議論していく事をしました。
ここでの体験もスクラムを意識したものとなっていおり、チーム内で自律的に活動し、メンバーたちで優先順位を決め取り掛かるといった体験をしました。
研修を受ける前の最初の状態とは違い、一通り研修を受けたメンバーでの議論はとても濃い内容になったように感じました。またチーム全体が自律的に活動している様子がすごく感じ取れました。

以上でスクラムマスター研修は終えました。

スクラムマスターとは

この研修を通してスクラムマスターとはチームを自律的な組織に導く事が最大の役割という事が理解できました。
その為にプロダクトオーナーと開発者の間に入ってそれぞれが自律的に仕事が行えるようサポートしていく事が必要であることも理解できました。
またスクラムにはプロジェクトマネージャーが存在しません。その理由もスクラムマスターが自律的な組織へと導く為、そもそも管理する事が不要であることも理解できました。

スクラムマスターのその先

スクラムマスターの役割について理解した上で、「チームが自律的になった時、スクラムマスターは何をするのでしょうか?」という疑問が湧きました。こちらは研修の最後にJoe Justiceさんに直接質問してみました。
回答としてはチームが自律的になった時点でスクラムマスターというポジションは消滅し、開発者に引き継がれていくべきだとの事でした。
またスクラムの理想は全員がフルスタックな開発者で自律的に取り組む事とも話していただきました。
実際にチーム全員が自律的に必要なゴールを定め、そのゴールに向かってスプリントをたて、開発、レビューを繰り返し、その中で細かく修正を行い、ステークホルダーやユーザーが希望する製品に限りなく近づけていく手法がスクラムだと理解しました。

まとめ

今回の研修にて以下理解する事ができました。

  • アジャイル開発とは要件から展開までを細かく行う開発であること
  • スクラムとはアジャイル開発の一つで、3つの役割、5つのイベント、3つの作成物がある
    • 3つの役割:プロダクトオーナー、スクラムマスター、デベロッパー
    • 5つのイベント:スプリント、プランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、レトロスペクティブ(振り返り)
    • 3つの作成物:プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメント
  • 最終的な理想としては自律的な組織になり、チームの全員自律的に開発に携わる事でスクラムマスターが不要になる

大変良い勉強になり、今回のスクラムマスター研修で学んだことは今後の活動で生かしていきたいと思います!そして今後もより良いチーム作りについて学んでいきたいと思いました!

最後にこの記事で使用させていただきました画像につきましては、講師のJoe Justiceさん本人より使用許可頂いています。本当にありがとうございます。

執筆者岡優志

iOSエンジニア
iOSを専門とし、モバイルアプリの開発を行なっています。

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