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みんなで学んでいきたい「Webアクセシビリティ」

本記事は NRIネットコム Advent Calendar 2022 15日目の記事です。
🎁 14日目 ▶▶本記事 ▶▶ 16日目 🎄

はじめまして、入社6年目の小林です。
普段はフロントエンドエンジニアとして、Webサイトの構築・運用などを担当しています。

今年はWebアクセシビリティ関連のセミナーに多く参加しまして、
より多くの人にこの分野を知ってもらいたいという思いから、本記事を執筆していきます。
(実際に執筆してみたら色々書ききれず、また第2回もどこかで書きたいと思います)


Webは "本当に" 多くの人が利用している

自分が作ってきたWebサイトやWebシステム、
どんな人に・どんな状況で・どれだけの人に利用されているか、気にかけたことはありますか?

総務省が毎年実施している「通信利用動向調査」、令和3年版では、
「インターネット利用者の割合は82.9%、年齢階層別にみると、13~59歳の各年齢階層で9割を上回っている」
という調査結果が公表されています。

中でも、高齢者の利用率に関しては、数年前と比較して増加傾向にあります。

  • 65歳以上の利用率は5割以上(53.4%)
  • 60~69歳の世代に絞った場合、利用率は8割以上(84.4%)

Webを当たり前に利用する世代が高齢化していく中で、この数字は今後も伸びていくのではないかと思います。

また、少し古い情報にはなりますが、「障がいのある人のインターネット利用率」についても調査結果が公表されています。

  • 障がいのある人の半数以上がインターネットを利用している
  • 視覚障害者・聴覚障害者に至っては、利用率は9割以上

視覚障害者:91.7%、聴覚障害者:93.4%、肢体不自由者:82.7%、障がい者全体:53.0%
障がいのある方々のインターネット利用率(平成24年)
出典:障害者によるインターネットの利用率:NICT

今からおよそ10年前の時点でこの利用率の高さです。
スマホの普及をはじめ、デジタル化が進んだ現代では、より欠かせないものになってきているのではないかと思います。

ここまで高齢者・障がい者を交えたインターネット利用率のお話をしてきました。
思ったよりも多くの人がインターネットを利用しているんだな・・・と思った方もいらっしゃるのではないかと思います。
さて、我々の作ってきたWebサイトやWebシステム、これらの人々みんなが使えるサイトになっているでしょうか?
ここで重要なテーマとなってくるのが「Webアクセシビリティ」です。

Webアクセシビリティについて

Webアクセシビリティって何?

デジタル庁が出している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」では、以下のように定義しています。

ウェブアクセシビリティは、利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度を意味しています。

前章でお話した、インターネットを利用する人の全て(これから利用する人も)がこの対象となります。
高齢者や障がい者を特記して定義している場合もありますが、意味合い的には全ての人が対象であることには変わりません。

本当の意味で「だれもが使える Webサイト・Webシステムであること」、これがWebアクセシビリティです。

どんなところを気にしないといけない?

Webアクセシビリティに関する規格としては、以下の3つが策定されています。
規格を理解し、項目を達成していくことで、Webアクセシビリティの向上を図ることができます。

  • JIS-X 8341-3:2016 ・・・ 日本工業標準調査会(JISC)が制定した国家規格
  • WCAG 2.0 ・・・ W3C(Webの標準化団体)が定めた国際規格
  • ISO/IEC 40500:2012 ・・・ 国際標準化機構が定めた国際規格

上記3つの規格はすべて技術的に同じ内容になっており(原案は「WCAG 2.0」)、
「JIS-X 8341-3:2016」の規格に準じて対応することは、国際的な規格を満たすことにもつながります。

実際にこれらの規格に掲載されている項目を紹介します。
ここでは各規格の原案である「WCAG 2.0」で定義されている項目を掲載します。

1. 知覚可能, 1.1 代替テキスト,すべての非テキストコンテンツには、拡大印刷、点字、音声、シンボル、平易な言葉などの利用者が必要とする形式に変換できるように、テキストによる代替を提供すること。 1.2 時間依存メディア,時間依存メディアには代替コンテンツを提供すること。 1.3 適応可能,情報、及び構造を損なうことなく、様々な方法 (例えば、よりシンプルなレイアウト) で提供できるようにコンテンツを制作すること。 1.4 判別可能,コンテンツを、利用者にとって見やすく、聞きやすいものにすること。これには、前景と背景を区別することも含む。 2. 操作可能, 2.1 キーボード操作可能:すべての機能をキーボードから利用できるようにすること。 2.2 十分な時間:利用者がコンテンツを読み、使用するために十分な時間を提供すること。 2.3 発作の防止:発作を引き起こすようなコンテンツを設計しないこと。 2.4 ナビゲーション可能:利用者がナビゲートしたり、コンテンツを探し出したり、現在位置を確認したりすることを手助けする手段を提供すること。 3. 理解可能, 3.1 読みやすさ:テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にすること。 3.2 予測可能:ウェブページの表示や挙動を予測可能にすること。 3.3 入力支援:利用者の間違いを防ぎ、修正を支援すること。 4. 堅牢(けんろう), 4.1 互換性:現在及び将来の、支援技術を含むユーザエージェントとの互換性を最大化すること。
「WCAG 2.0」での定義項目

画像の代替テキスト設定やキーボード操作の考慮など、開発者自身の考慮で対応できるものから、
要件定義やコンテンツ設計、デザイン設計時点で考慮しないといけないものまで、さまざまな項目が掲げられています。

「WCAG 2.0」はW3C(Webの標準化団体)が定めた規格であるため、基本的にはWebの標準に準拠する形で各項目が策定されています。 つまり、Webアクセシビリティの対応において重要なのは「Webの標準に準拠した形できちんとWebコンテンツを設計・制作しましょう」ということなのです。

今回は各項目の詳細には触れませんが、また第2回目以降でお話していきたいと思います。

Webアクセシビリティと向き合う上で重要なこと

状況を知る

冒頭で、高齢者や障がい者を含むインターネット利用率の高さについてお話しましたが、あくまでも数字ベースでの見解となります。 実際にどのような使われ方をしているか、イメージできてない人も多いのではないでしょうか。

本当の状況を知る上で良いきっかけとなるのが、Webアクセシビリティ関連のセミナーへの参加です。

Webアクセシビリティ関連のセミナーは、けっこう頻繁に開催されています。
実際に障がい者の方がWebサービスを使う様子をデモ形式で紹介いただけたりすることもあり、どういったところが使いやすい・使いにくい(使えない)かを実感しやすく、規格を学ぶ上でも重要な機会です。
また、周囲が当たり前のようにWebアクセシビリティと向き合う雰囲気を感じられることも、セミナー参加のメリットの1つです。

規格を知る

実際に対応していくためには、Webアクセシビリティの規格を理解していることが必要です。
今回紹介した規格の中でも「WCAG 2.0」の規格は、開発時の参照元として有効です。

www.w3.org waic.jp

また、WCAGの規格自体は「WCAG 2.0」公開以降も検討が進んでいます。

  • WCAG 2.0 ・・・ 2008年12月11 日に公開
  • WCAG 2.1 ・・・ 2018年6 月5日に公開
  • WCAG 2.2 ・・・ 2023年始め頃に公開予定 ←NEW

現段階では「WCAG 2.2」まで検討が進んでおり、ドラフト版が公開されています。 「WCAG 2.0」の内容を踏まえつつ、今後の状況もキャッチアップしていきたいところです。

www.w3.org

みんなで考える

Webアクセシビリティの規格の項目を見てもわかるように、Webアクセシビリティはどこか一つのポジションの人が一人で考慮しきれるものではありません。
ディレクター・デザイナー・エンジニアなど、Webサービスの制作に関わる一人ひとりが、Webアクセシビリティと向き合い、みんなで一緒に考えていくことで成り立っていくものです。

Webアクセシビリティと向き合うことは、自分自身の未来のためにもなります。
これを機に、一緒に考えていきませんか。

参考

今年参加したWebアクセシビリティ関連のセミナー

執筆者 : 小林優莉

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