NRIネットコムでデジタルマーケティング領域を担当する山田輝明です。VR・メタバースのビジネス、マーケテイング活用についてVR・メタバースの海外、日本での旬な情報を集約し、展開します。 今回は第3弾として、業界としては異彩を放つ、老舗百貨店が創造するメタバースに注目します。 ぜひご一読ください。
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なぜ、三越伊勢丹百貨店がメタバース?
メタバース関連の記事第1弾(インターネットの次の革命「VR・メタバース」 Web3時代に企業はビジネスにどう活用するべきか? Vol.1)でも触れたが、執筆後も成長著しいこのメタバースを再度フォーカスする。
そもそも、なぜ百貨店がメタバースなのか。この挑戦は三越伊勢丹が新規事業を社内で公募する仕組みから始まっている。この事業を最初に企画したのが、株式会社三越伊勢丹営業本部オンラインストアグループデジタル事業運営部の仲田氏、池田氏、丸山氏の3名である。企画は2008年から始まっているという。そこから12年を経て、2020年4月に最初にお披露目したのが、「VIRTUAL MARKET4」に出店されたバーチャル伊勢丹である。そもそも百貨店に来る若者が減ったという現実の悩み、課題からバーチャルワールドに挑戦した。デジタルの世界とは遠い存在と思える百貨店の有志社員が3DCGモデリングを独学で勉強し、店員の方の接客を受け、実際にショッピングが出来たという、まさにバーチャル伊勢丹を実現させた。 2020年4月は、共同出店方式のメタバースへの出店だったが、2021年3月10日についに自社で仮想都市を作り上げ、「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」はリリースされた。 構想から、デジタル世界に飛び込み、企画実現までの胆力と、独学で3DCGまでをも作ってしまうという熱量がこの「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」には詰まっている。
REV WORLDSとは?
国内でも様々なメタバースが登場しているが、「REV WORLDS」は、仮想新宿を中心とした舞台に展開される。新宿東口、ALTA前など国内でも多くの方が知っている場所がこのメタバースには登場する。その仮想新宿に仮想伊勢丹新宿店を構える。


進化する仮想三越伊勢丹新宿店
仮想伊勢丹新宿店内には、様々なテナントが続々と追加されている。1階のスタイリングショップ「リ・スタイル」には、季節に応じて新商品ファッションが入荷する。 ディズニーの小物を買えるショップとコラボしたり、同じく日比谷花壇とコラボし、フラワーデザインのアバターウェアを登場させたり、イセタンビューティーコーナーでは、アバターをメイクアップさせることも可能になっている。 百貨店と言えばおなじみのデパ地下にも有名レストランとコラボしたキッチンステージも登場する。
百貨店だけに留まらないREV WORLDS
百貨店の内部の店舗だけに留まらない点も、このメタバースの発展の一つのポイントである。あえて、仮想伊勢丹新宿店ではなく、「REV WORLDS」という仮想“都市”を作り上げた点も広がりを持たせる要素になっている。仮想新宿のターミナル前では、東京ガールズコレクションとのコラボでブースを展開し、ファッションフェスタの世界観をバーチャル上で体験できる。(※東京ガールズコレクションのブースは2022年4月19日までの開催で終了)


今後のメタバースのビジネス活用
ご紹介してきたように、メタバースは、単なる新しいSNSとは言えない。当然仮想空間内で、ユーザー同士のコミュニケーションも可能だ。仮想都市を一人でアバターを活用し街歩きすることも出来るし、ファッションを楽しんだり、イベントに参加することも出来たり、表現の場はさらにSNSよりも拡張しているとは言える。
しかし、メタバースを単なる新しいSNSと捉えるのではなく、今回ご紹介した三越伊勢丹がそうであるように、ビジネスとしてはもっと可能性が広がる。ECサイトで表現されるよりもさらにわかりやすい3Dモデルを活用した商品の表現でユーザーはショッピングを楽しんだり、コロナ禍で現実には来訪し辛い店舗へ、同じ訪問体験ができるバーチャル上のデジタルツイン店舗としてのメタバースという位置づけもある。新しい広告モデルも生まれつつある。さらにメタバース関連の記事vol.2(メタバース熱狂にNFTが華を添える Web3時代に企業は「VR・メタバース」をビジネスにどう活用するべきか? vol.2)で取り上げたNFTを絡めたメタバース上の土地売買も海外では広がっている。アバターを活用し、ゲーム性を持った新しい課金モデルもその一つだ。 今後もこういったSNSの延長だけではない広がりを見せるであろうメタバースについて周辺領域の新技術と合わせて、ビジネス活用のために模索していきたい。