NRIネットコムでデジタルマーケティング領域を担当する山田輝明です。VR・メタバースのビジネス、マーケテイング活用についてVR・メタバースの海外、日本での旬な情報を集約し、展開します。 今回は第2弾として、メタバース熱狂に華を添えるNFTについて。 ぜひご一読ください。
メタバース成長のきっかけ
「次のインターネット革命は、VR・メタバースから起こる。」という声もあがる一方、また2003年の「Second Life」ブームと同じく一時期だけの盛り上がりではないか、といった懐疑的な見方もある。 もちろん、必ずメタバース時代が来ると断言することはできないが、前回の記事(インターネットの次の革命「VR・メタバース」 Web3時代に企業はビジネスにどう活用するべきか?)でも触れたとおり、2003年とは、ビジネスにおいて活用されるための背景として、大きな違いが3点ある。
1つ目は、マシンスペックが段違いに違うことだ、2003年と比較すると段違いにPC等のマシンスペックは高性能になっている。2003年というと、まだWindows XPの時代であり、CPUのクロック数が高スペックマシンで1GHzの時代だ。さらにその4年後に、初代のiPhoneが発表されている。PCはスペックが高性能になっていることに加え、今や誰もが使っているスマートフォンの登場も大きい。いつでもどこでも手元でインターネットに接続し、様々なメディア、アプリを利用できる大きな端末としての改革が、2003年以降起こっている。 2つ目は、その端末がつながるインターネット回線の容量だ。2019年に5Gが実用化され、圧倒的な速さのネットワークに繋がることが当たり前になった点も大きな違いと言える。 最後の3つ目が2003年時代とは、最大の相違点だと考えるNFT(Non-fungible token)の登場だ。これも2003年以降であり、初代iPhone発表の1年後に発明されたブロックチェーンが大きなターニングポイントだったと言える。このブロックチェーン技術により、まず暗号資産が発明された。代表的なものと言えば、ご存知ビットコインである。ビットコインについては、ここでは深く言及しないが、ビットコインが2014年あたりから話題になり、その後、様々な暗号資産が登場した。この暗号資産の発展に伴う、技術革新により登場し、技術を確立したのがNFTである。NFTとは?
では、NFTとは何なのか?ビットコインもNFTも同様に暗号トークンであり、データの単位と言える。しかし、ビットコインとは違い、相互に交換することができない。そのため、Non-fungible token(非代替性トークン)と呼ばれている。今では、NFTの言葉自体を、唯一無二の価値を持つデジタル資産と解釈されている。逆にビットコインは、いわゆる世に流通するお金と同様に基本的には等価で代替、交換できるもの(代替可能性があるトークン)である。
NFTは、唯一無二のデジタル資産であるため、交換や代替はできないが、資産の価値に応じて買ったり、売ったり流通することは可能だ。この点は、リアル世界に存在する絵画や不動産、1点ものの商品と同様だが、このリアル世界に存在する1点ものと同じ価値をデジタル上で担保することができる仕組みがNFTには備わっている。今までデジタル上では、絵画をコピーすることもできるし、特に音楽、映像などはインターネット上の海賊版が横行してきた。そういったデジタル上の資産を守る仕組みがNFTである。上記を踏まえれば、デジタル上でもリアル世界と同様にコピーされず、唯一無二の資産として所有できることになる。 しかし、所有があれば、資産の移転も存在する。NFTは、交換・代替は出来ないが、取り引きをすることは、リアルの1点ものと同様に可能だ。その所有と取り引きを証明する仕組みがが、スマートコントラクトという技術であり、この機能が唯一無二の資産の裏書きとして、所有と取り引き履歴を記録する。例えば、Aさんが書いたデジタル絵画は、Aさんが書いたデジタル絵画であるとブロックチェーン上に記録される。これは、ビットコインの価値を証明する仕組みと同様に改ざんすることが技術上できない。そうすれば、Aさんが書いたデジタル絵画は、Aさんが書いたこと、世の中に2つと無いことをこの技術で証明できる。さらにスマートコントラクトという技術が、Aさんが資産をBさんと取引した際の履歴を記録する。この取り引き履歴の記録は今のリアル世界では、例えば契約書を取り交わしたり、有識者が判別し、何らかの証明書を発行する手続きが必要だったりと、大変手間のかかるものとなる。しかし、この取り引き自体、さらに履歴を自動かつ信頼性、透明性を保って実行できるのが、スマートコントラクトという技術だ。今のデジタルの世界を大きく変える存在となっている。 このNFTとスマートコントラクトという技術は、どういった分野で活用され、話題となっているか、代表的な2つを挙げる。盛り上がるNFTアート
まずはNFTアートだ。前述したように、まさにデジタルアートは、今までは簡単にウェブ上でコピーが出来た。しかし、NFTとして履歴を裏書きされたデジタルアートは、コピーされてもそれが本物かコピー品かがブロックチェーン上に記録されているため、本物であると証明できる。このNFTアートが話題となっているのには理由がある、まず数多くのマーケットプレイスが登場したことだ。
海外の代表的な3つのマーケットプレイスをご紹介する。 まずは、「Opensea」だ、ここでは、デジタルアートをはじめ、ゲームで利用するアセット(例えばゲームのアバターの衣装や、戦うゲームであれば武器等)、トレーディングカード、デジタルミュージック等幅広くNFTが取り引きでき、現時点では世界最大のNFTマーケットプレイスと言える。 また、同様に取引量が大きいマーケットプレイスが、「Rarible」になる。こちらもデジタルアート、ゲームアセット、デジタルミュージック等を取り引きできる。 デジタルアートに特化したマーケットプレイスもある。「SuperRare」は、デジタルアートに特化しており、熟練したデジタルアートクリエイター、コレクターが集まる。 では、国内に目を向けるとどうだろうか。国内でも様々な企業がマーケットプレイスを展開し始めている。まず暗号資産取り引き関連のニュースで一躍有名になったコインチェック社の「Coincheck NFT」だ。特徴としては、暗号資産取り引きのためのコインチェック口座を持っていれば、NFT取り引きも簡単に行うことができる。 次に、「miime」だ。このマーケットプレイスは、トレーディングカード、ゲームアセットなども取り引きできるが、前述の「Opensea」とも連携できる機能も備えている。 また、その他には、「Adam byGMO」と「nanakusa」も取り引きが活発化してきている。 この2つは、デジタルアートが取り引きの主力であり、海外の「SuperRare」に近い特性を持っている。 海外、国内問わず、NFTマーケットが活性化している点に加え、高額で取り引きが行われたというニュースが、このNFTアートが人気を博すきっかけとなった。 最初に話題となったの[は2021年3月のニュースだろう。ネット上で、Beepleとして知られるアーティストのデジタルアートが、75億円で落札された。この取り引きでNFTが世に広く知られることとなり、NFTアート加熱は始まったと言える。 その後、ほぼ同時と言えるタイミングで、暗号資産のイーサリアムにおける最古のNFTプロジェクトと言われる、「CryptoPunks」のコレクション作品が、約8億2000万円で販売された。この「CryptoPunks」は、アートコレクションとして1万点の作品から構成されている。2017年にリリースされていることから、最古、初のNFTアートとも言われ、今でも高額取り引きが継続している。 以上のマーケットプレイスの発展と、高額での取り引きの事実が、NFTアートの加熱につながっている。 同様に日本でも2021年8月にニュースが飛び出した。小学生の夏休みの自由研究のテーマでNFTアートに取り組む。学生の夏休みの自由研究のテーマでNFTアートの数多くの作品が売れ、全体の取引高が約380万円に到達したというニュースである。 このようにマーケットプレイスの発展と、高額での取り引きの事実が、NFTアートの加熱につながっている。VR Chatの動向
メタバース上の不動産などNFTの活用が盛んになっているが、かたやブロックチェーン、NFTの活用を見合わせているメタバースもある。「VR Chat」は、2022年1月にブロックチェーン、NFTとの統合を今後も予定していないと発表した。しかも、「VR Chat」上で許可を得ることなくブロックチェーンや、NFTに関する宣伝、広告、勧誘等を禁じるというメッセージも発信している。本記事では、メタバースの発展にNFTが寄与しているという点をご紹介してきたが、このように反対姿勢を示すメタバースもあり、今後も動向の注視が必要だ。
NFTの今後のビジネス活用
今回ご紹介したNFTは、様々な業種、サービスでの活用が始まっている。NFTアートやメタバース上の不動産以外で、現在活用されている例として、NBA Top Shotは一番有名だろう、NBAのプレーのハイライト動画をNFTとして所有できる。その他、トレーディングカード、メタバース上のアバター用アイテム、ゲームアイテム、NFT音楽、電子書籍、会員制サイトやオンラインサロンの会員権に活用されていたり、NFTを活用した美術館なども登場し、さらに活用の場は広がっていくと考えられる。企業におけるビジネスとしても金融であれば、NFTを担保としたローンも考えられる。その他、ソフトウェアライセンスや、コンピュータプログラム等、あらゆる知的財産権を持つコンテンツのNFT化が考えられる。本業のデジタルマーケティング分野では、屋外広告のNFT化、Cookieの代替としてNFTを活用することも進みつつある。
今後は、広くNFTの活用について情報収集しつつ、弊社のビジネス展開にも活かせるよう主要なメタバース上のNFT活用、ビジネス、マーケティング活用にフォーカスしていきたい。 海外、国内とグローバルにこのNFTが華を添えるVR・メタバース市場は活気を帯びてきている。本業のビジネスで寄与できるよう、寝る間もおしみ情報収集し、ビジネス企画、提案していきたい。