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インターネットの次の革命「VR・メタバース」 Web3時代に企業は「VR・メタバース」をビジネスにどう活用するべきか? vol.1

NRIネットコムでデジタルマーケティング領域を担当する山田輝明です。インターネットの次の革命といっても過言ではない、VR・メタバースのビジネス、マーケティング活用についてVR・メタバースの海外、日本での旬な情報を集約。 連日ニュースを賑わすWeb3時代のVR・メタバース、をいかに企業は活用すべきかを今後投稿予定。まずは第1弾として、ぜひご一読ください。

<バーチャル・リアリティ・デイ>

1989年6月7日バーチャル・リアリティ・デイと呼ばれているこの日は、VRがビジネス的な市場デビューをした日だ。サンフランシスコで開催されたTexpo’89というイベントで、VPL Research社が初めてVRの製品デモを行った事が起源とされる。 まさにVRの創世記が始まった日と言える。その後のVRの歴史は枚挙にいとまがないため、ここでは割愛するが、ぜひVRの歴史という面に興味があれば、こちらの書籍をお薦めする。

VR原論 人とテクノロジーの新しいリアル(服部 桂 著)

バーチャル・リアリティ・デイ以降、軍事、医学、科学、エンジニアリング、通信など様々な分野で、VRはテストされ、実用化され、進化してきた。 日本でも様々な分野での活用が進んでいるが、セガ、タイトー、ナムコなどゲーム、エンターテインメントの領域がVRの進化を引っ張ってきたとも言える。 NRIネットコム社も、2003年に発表された、「Second Life」のビジネスユースにも取り組んだ。しかし、当時はネットワーク、PCのスペック等、インフラ面が追いつかずビジネスユースの定着には至らなかった。

そして、2019年についに5Gが始まった。1984年に、日本で初めてのインターネットであるJUNET(Japan University Network)が開通してから、35年を経て、物理的な回線の壁を乗り越え、日本国土の空間上に新しい高速ネットワークが生まれた。この5Gと、ブロックチェーンの一つの技術により一般化してきたNFTが、今のVR・メタバース新時代のきっかけとなっている。 2019年は、人類として直近の最大の脅威と言えるコロナと共に、VR時代の再出発の年になった。

<海外のメタバースの動き>

海外では、かなりメタバースが一般的に定着しつつある。大きな転換点は2014年にフェイスブック社が、Oculus社を買収した事が、大きかったのではないか。その後、メタバース熱に拍車をかけたのが、テレワーク、外出ができず自宅での巣篭もりを強いられた2021年に、フェイスブック社がメタ社に社名を変更したことであろう。今では、有名各社がメタバースのデファクトスタンダードを取るべく新サービスを展開している。 いくつか、海外のメタバースを紹介する。

最も有名なメタバースで、メタバース熱に拍車をかけたのはメタ社の「horizon-worlds」だろう。Oculusを使えば、最初からインストールされていて、facebookのアカウントがあればすぐに世界中の人々とアバターで、話したり、コミュニケーションが可能だ。

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メタ社「horizon-worlds」 

「The Sandbox」は、有名企業のメタバース内での不動産取引を始めていて、その取引が活発化していることで有名になった。直近の国内企業の動きでは、エイベックス社がNFTアイテム制作に取り組んだり、SHIBUYA109は、「The Sandbox」内に109を建てる計画をしている。2021年11月には、不動産投資ファンドが、約5億円で土地を購入している。

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The Sandbox」 
同じく不動産取引が活発なもう一つのメタバースが、「Decentraland」だ。「The Sandbox」と同じように不動産取引も活発だが、「Decentraland」内で、世界初のファッションウィークが開催される。毎年1〜3月にかけてNY、ロンドン、ミラノ、パリと4大ファッションウィークが開催されるが、このメタバース上のファッションウィークは、かなり注目されている。2022年3月24日から開催とのことなので、ぜひキャッチアップしたい。また、この「Decentraland」内に、米金融大手のJPモルガンが、店舗を開設。「Onyx Lounge」というラウンジを展開している。これも世界初のメタバース上の銀行になる。直近こういうニュースが「The Sandbox」と「Decentraland」では、目白押しだ。
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Decentraland」 
また、日本でもかなり有名なのが、「VR Chat」だ。日本では、HIKKY社が2018年から展開する、メタバースイベントの「バーチャルマーケット」があるが、この「VR Chat」がベースとなっている。
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VR Chat」 

以上に紹介した海外メタバースは、企業がスポンサーや土地を購入して入るが、どちらかというと、ゲーム性やエンターテインメント性が強いメタバースとなる。「Spatial」と、「Virbela」は、それらとは違いかなりビジネス寄りのメタバースになる。「Spatial」は、VR会議を強みにしており、「Virbela」は、オフィスを再現したり、展示商談会の開催に使われたり、カンファレンス会場にも活用されている。

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Spatial」 
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Virbela」 

最後に、ビジネス寄りのメタバースとして注目すべきは、マイクロソフトが2022年にリリースする予定の「Mesh for Microsoft Teams」 だろう。現在日本でも多くの会社で採用されているリモート会議ツールのデファクトスタンダードとも言える、Teamsをメタバース化したものになる。リモートでの仕事を余儀なくされている今、このデファクト製品がそのままメタバース化すれば、利用者数はとてつもない数となる。

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「Mesh for Microsoft Teams」

米Microsoftが、2021年4月27日の2021年度第3四半期の決算報告で、オンライン会議ツール「Microsoft Teams」のデイリーアクティブユーザー数が1億4500万人になったと報告しており、全世界でのユーザー数は一気にNo.1になる可能性が高い。

<日本のVR・メタバースの動き>

では、日本ではVR・メタバースの動きはどうだろう。いわゆるメタバースとして、マーケティング・集客等に活用可能性が高い、3つのメタバースをご紹介する。 まず1つ目は、先程少しご紹介した、「バーチャルマーケット」だ。VR法人HIKKIY社が主催するメタバース上では日本で最大のマーケットイベントになる。2021年までに7回開催されており、来場者数は、100万人を超える。「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」としてギネス世界記録(TM)に認定されている。すでに大手企業の協力数も多く、JR東日本、BEAMS、大丸松坂屋等、様々な企業が出展している。実際にメタバース上で商品が買えたり、友人のアバターとともに買い物もできる。現状では日本で最大の集客数を誇るメタバースと言って良いだろう。2022年2月17日のHIKKY社のプレスリリースでは、世界100都市をメタバース化する『パラリアルワールドプロジェクト』を発足との事で、飛ぶ鳥を落とす勢いのメタバースだ。

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バーチャルマーケット2021」 

2つ目は、クラスター株式会社が展開する「Cluster」だ。こちらも「バーチャルマーケット」に負けず劣らずの話題を呼ぶイベント等を開催している。2022年2月に開催された、「バーチャル雪まつり2022」にもClusterが利用されていたり、KDDIと協力し、「バーチャル渋谷」をメタバース上に2021年の12月に展開している。「バーチャル渋谷 au 5G X'mas 2021」というタイトルであり、まさに5Gとメタバースの関連に意味があることの象徴と言えるだろう。また、最も最近のニュースでは、2022年2月28日に都市連動型メタバースとして、「バーチャル大阪」が誕生した。「AVATARIUM(アバタリウム)」という全身をカメラで撮影し、アバターを作れてしまうアバタープラットフォームと連携し、「バーチャル大阪」誕生のセレモニーでは、吉村大阪府知事、松井大阪市長等がアバターで登壇するなど、話題となっている。「Cluster」もかなりの集客力を誇っており、2020年11月のプレスリリースでは、「Cluster」で開催されたイベントへの総動員数が、過去10ヶ月間で300万人を超えたと発表している。

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Cluster」 

3つ目は、メタバースとは遠い存在のようだが、実際、三越伊勢丹百貨店の新規事業として立ち上がった、「REV WORLDS」をご紹介する。三越伊勢丹では、毎年新規事業の企画を出し、実際に新規事業を立ち上げることができる仕組みがあるとのことだが、この「REV WORLDS」もこの新規事業として立ち上がっている。「REV WORLDS」の最大の特長としては、スマホでアプリをインストールすることで簡単にアクセスできる手軽さにある。スマホで簡単にアクセスできるため、移動時間やスキマ時間のアクセスも見込むことができる。「REV WORLDS」には、仮想新宿に仮想伊勢丹百貨店が建っており、その中のテナントとして協力企業が入っている。すでにディズニーとのコラボであったり、お笑い芸人のEXITとのコラボであったり、企業連携は進んでいる。違った面での特長としては、「REV WORLDS」内には、競合他社や同業も同居することができる。まさにリアルワールドと同じ用に使えるメタバースを目指している。この「REV WORLDS」に立ち上げから、情熱を注いでいる方がいる、「「百貨店に来る若者が減った」。バーチャル伊勢丹は未来の顧客を掴む打開策となりうるか」というタイトルで記事も出ているのでぜひその情熱を感じてもらえればと思う。

「百貨店に来る若者が減った」。バーチャル伊勢丹は未来の顧客を掴む打開策となりうるか|三越伊勢丹 仲田朝彦

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REV WORLDS」 

国内のメタバースには、マーケティングとは違った活用で注目されているメタバースがある。先程までご紹介してきたメタバースは、様々な人々がアバター等でメタバース上で交流したり、活動できる集客の場として活用されている。しかし、コロナ禍で出社や登校が叶わず、コミュニケーション不足に陥りがちなビジネス上の交流、会社、学校内のコミュニケーションを活性化させるためのメタバースがある。有力な2つのビジネス向けメタバースをご紹介しよう。 1つ目は、まさに、オフィスをバーチャル空間で実現する「oVice」だ。かなりの勢いで企業に導入されており、リモートワーク環境でのオフィスコミュニケーションに活用されている。このメタバースは、3Dのアバターではなく、2次元のウェブ上で表現されている。自分のアイコンを他の人のアイコンに近づけると会話ができる。また、近くにアイコンが接近すると他の人々が話している声が聞こえたりするため、かなりリアルに近いイメージでバーチャルオフィスを感じることができる。バーチャル上で会議室等も準備されており、会議室内で話している内容は、会議に参加しているメンバーのみしか聞こえない、などかなり工夫されている。このメタバースを開発している会社は、東京にはない。石川県の七尾市に本社があり、社員は当然全員リモートワークを行っているそうだ。世界で毎日100個以上の「oVice」による仮想空間が開設されているとのことで今後の活用動向に注目していきたい。

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oVice」 

今回最後にご紹介する、2つ目のビジネスメタバースは、「RISA」だ。こちらもウェブ上でオフィスを再現し、オフィスコミュニケーションを仮想空間上で実現する。先ほどと同様に平面上でオフィスを再現したメタバースだが、アバターを自分自身で設定できる点が特長だ。アバターの動きや効果音機能を備えており、実際のオフィスで動いている時に近く直感的に同僚の状況を把握することができる。この直感性、アバターを選択できる事が、導入が進んでいるポイントであろう。 2つのビジネスメタバースは、クレジットカードでも支払いができる。一昔前の企業向けサービスではあまり考えられなかったが、リモートワークが前提のビジネス環境では、紙の契約書では効率が悪いため、SaaSが当たり前となった今を象徴している。

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RISA」 

今回は、VR・メタバースの起源に触れ、まずは海外、国内で有力なメタバースをご紹介した。今後さらに活用が進むVR・メタバースについてまとめつつ、本来の業務として、企業に役立てるようビジネス展開を進めていきたいと思う。ぜひご意見やご要望があればお問い合わせいただきたい。

インターネットの次の革命といっても過言ではない、VR・メタバースのビジネス活用は、待ったなし。夜明けはもうすぐであり、寝ている暇はない。



<VR・メタバース関連 参考書籍>
  • VR原論 人とテクノロジーの新しいリアル(服部 桂 著、翔泳社)
  • メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」(岡嶋 裕史 著、光文社)
  • ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ (GOROman(近藤義仁)著、星海社新書)
  • ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記(GOROman 著、翔泳社)
  • VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学(Jeremy Bailenson 著、文藝春秋)
  • VRインパクト―――知らないではすまされないバーチャルリアリティの凄い世界(伊藤 裕二 著、ダイヤモンド社)
  • VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む(新 清士 著、NHK出版)
  • 未来ビジネス図解 仮想空間とVR(株式会社往来 著、エムディエヌコーポレーション)
  • 60分でわかる! VRビジネス最前線(VRビジネス研究会 著、技術評論社)
  • VRが変える これからの仕事図鑑(赤津 慧 著、鳴海 拓志 監修、光文社)
  • トコトンやさしいVRの本(廣瀬 通孝 監修、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター 編集、日刊工業新聞社)
  • VR for BUSINESS ─ 売り方、人の育て方、伝え方の常識が変わる(株式会社アマナVRチーム 著、インプレス)
  • VRコンテンツ最前線 事例でわかる費用規模・制作工程・スタッフ構成・制作ノウハウ(桜花一門 著、翔泳社)