本記事は
Designers Week 2022春
3日目の記事です。
🌱
2日目
▶▶ 本記事 ▶▶
4日目
🌱
はじめまして、UI/UXデザイナーの田原です。
NRIネットコムでWebサイトのUI/UXの検討・デザイン制作を担当しています。
様々なクライアントのWebサイトをデザインする機会がありますが、最近はサイトのデザインだけでなく、「UXとしてどういう体験を与えることができるか」と言った提案をお客様にさせていただく機会が増えてきました。
そこで、この機会に私もHCD(人間中心設計)の認定試験を受けてみました! 今回は認定試験についての体験レポートを書いていきます。
まず、HCDとは
HCD = 人間中心設計 です。
…
……
………何も分からない。名前が強そうなことだけは分かりますね(?)
といっても、UI/UXというワードが飛び交う世界では、HCDという言葉もだいぶ使われるようになったと思います。
HCDとは、ISO9241−210「インタラクティブシステムのための人間中心設計(HCD:Human-centered Design)」で定義された内容です。
日本ではJIS Z 8530:2021(人間工学-インタラクティブシステムにおける人間中心設計)としてJIS規格化されています。
ISO9241−210における、人間中心設計とは
システムの使い方に焦点を当て、人間工学やユーザビリティの知識と技術を適用することにより、インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的としたシステムの設計と開発へのアプローチ www.iso.org
としています。
それを元に、以下のようなデザインプロセスを定義しています。
- 人間中心デザインプロセスの計画
- 利用状況の理解と明示
(※アンケートやインタビューなどが用いられる) - ユーザーの要求事項の明示
(※ペルソナなどが用いられる) - ユーザーの要求事項を満たす設計による解決策の作成
(※絵コンテやワイヤフレームなどを用いて具体的な設計案が作られる) - 要求事項に対する設計の評価
(※ユーザビリティテストやフィールドワークなどが用いられる) - 以上2〜5の工程を、ユーザーの要求事項を満たす設計解決策が得られるまで繰り返す
日本でこのようなHCDを啓蒙・普及させることを目的とした人間中心設計推進機構(HCD-Net)という団体は、上記のデザインプロセスを元に、HCDプロジェクトを定義しています。
HCDプロジェクトとは、以下のような状態を指します。
ユーザーに対する仮説を立て、実際にインタビューやプロトタイピングを経て 実証・検証のサイクルを回していくプロジェクトであれば、HCDプロジェクトと呼べます。 drive.google.com
こう聞けば、皆さんなんとなくイメージできるのではないでしょうか?
つまりは、
- 現状調査を行ない
- 現状分析を行ない(As-Is)
- 理想的な体験を提案し(To-be)
- 実際制作したものをユーザーテスト等で検証する
といった流れです。
こう見ると、一連の流れをやったことがある方も多いのではないでしょうか?
特に1~3のプロセスは、これまでもデザインを制作する過程で意識的に検討されていたかと思います。
そこに、4の検証のステップまでを回して検討しようというのが、HCDのデザインプロセスを元に策定された、HCDプロジェクトの基本的な考え方です。
このようなHCDプロジェクトを実施できる人材の認定を、HCD-Netで実施しています。
HCD(人間中心設計)の認定の種類
HCD-Netで実施している、HCDに関する認定は2種類あります。
正式名称:「特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構認定 人間中心設計専門家」
略式名称:「HCD-Net認定 人間中心設計専門家」
英語正式名称:「Certified Human Centered Design Professional」
英語略式名称:「Certified HCD Professional」正式名称:「特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構認定 人間中心設計スペシャリスト」
略式名称:「HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト」
英語正式名称:「Certified Human Centered Design Specialist」
英語略式名称:「Certified HCD Specialist」
www.hcdnet.org
こちらでは簡単に、略称ベースで以下と呼ばせてください。
- HCD-Net認定 人間中心設計専門家=専門家
- HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト=スペシャリスト
名前的にはスペシャリストの方が凄そうでは?と思うのですが(筆者感覚)、専門家の方が上位の認定にあたります。
なぜなら専門家は、HCDプロセスにおける各コンピタンス(後ほど説明します)を実施できるだけでなく、
HCDというプロセス自体の提案・導入、人材の育成をできる人を指すからです!
受験申請時は「専門家」で応募し、もし「専門家」として認定されなくても、「スペシャリスト」で認定される場合もあるそうです。
というわけで、私は可能性を信じて「専門家」で申し込んでみました。
(この結果が凶と出るか吉と出るかはまた後ほど……)
私が試験を受けるにあたり、弊社にいる人間中心設計専門家、長田さんに多大なご支援・ご指導をいただきました。感謝!
長田さんが書かれた記事も是非ご覧ください。
私が躓いたところ、わかりやすく教えてもらったところを紹介できればと思います!
どんな受験の流れなの?
毎年11月中旬~12月上旬に受験申請期間があります。
受験料納付後、審査書類がGoogleドライブにて提示されます。
(申し込み等含め、Googleフォームを使用するため、事前のGoogleアカウント作成は必須です)
あとは審査書類を、約1ヶ月ちょっと後の1月中旬~下旬の締め切りまでに書き上げればOK!
あとは3月末の結果発表を待つだけ!
……と聞けば
「レポート出すだけじゃ~ん!なんだ簡単!」
と思われるかもしれませんが……
その審査書類がなかなかに曲者。
次からは審査書類の各項目について触れていきます。
審査書類の内容について
審査書類は受験者専用のGoogleドライブにて、Googleスプレッドシートで配布されます。
それをエクセルに変換してDL。
ファイル内のシートの内容は以下です。
a. プロジェクト整理シート(※)
b. 手法から関連コンピタンスをチェックするシート (※)
c. プロジェクト記述書
d. コンピタンス記述書
たくさんシートがありますが……なんと、(※)のシートは審査対象外です。
受験者が、自身が記載するHCDプロジェクトについての整理をするためのシートになります。審査対象外の書類も配布して、受験者のプロジェクト整理を支援するなんて、手厚いですね。
最低3件、最高5件のプロジェクトを記載する必要があるのですが、そのためには自分がどのようなプロジェクトをしてきたか、振り返る必要があります!
私は「a.プロジェクト整理シート」を使って、記載するプロジェクトを整理しました。
「a.プロジェクト整理シート」では、以下の各コンピタンスを対応したことがあるかをサマリで確認することができます。
A群: HCD基本コンピタンス
B群: プロジェクトマネジメントコンピタンス
C群: 導入推進コンピタンス
L群: テクニカルコミュニケーション能力
専門家については A群から7項目以上 + B・C群から合計3項目以上(B・C群から各1項目必須)
スペシャリストについては A群から6項目以上
の記載が必要になります。L群に関しては、共通して加点項目となります。
つまり……専門家の方が書く内容が多い!!!!
(上位認定だから当たり前です)
「b.手法から関連コンピタンスをチェックするシート」に関しては、実際自分が対応した手法*1に対して、それがHCD基本コンピタンスに属するかを教えてくれるシートになります。(完全にスペシャリスト向けシートです。)
こちらは自分だと何がどのコンピタンスに属するのか分からない!といった時に使用してください。
その場合、1プロジェクトに対してbのシートを複製し、1プロジェクトずつ確認していきます。(今回私は使用しませんでした)
あれ…??
そもそもコンピタンスとは…!?
大事な話をしていませんでした。
そもそもコンピタンスとは
人間中心設計(HCD)のプロセスを実践するために必要となる能力・技能・知識のことです。
このコンピタンスは、UXデザイン、サービスデザイン、ユーザビリティ評価などの実践にも用いられます。 HCD専門資格コンピタンスマップ(2021年度).pdf - Google ドライブ
うーん、分かるような、分からないような……
このコンピタンスに沿って、審査書類の「c.プロジェクト記述書」「d.コンピタンス記述書」(特にd)の記載を進めていきます。
このコンピタンスをひとつひとつきちんと理解するのがとてもややこしい…!
長くなってしまったので、一旦ここまでで!次回からは各コンピタンスについて触れていきます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
*1:例:カスタマージャーニーマップ(To-Be)をたてた、ユーザーインタビューをやった等