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Webディレクターから「ダメ出し王」へ!? サイトの課題抽出はこうやる!

本記事は NRIネットコム Advent Calendar 2022 12日目の記事です。
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こんにちは。Webディレクターの西田です。  
 
Webディレクターの皆様!
日々多岐にわたる業務をしなければならない我々ディレクターですが、皆様が一番好きな業務はなんですか?
コンテンツを企画することでしょうか?それとも、スケジュールをパズルのように組み立てていく作業でしょうか?

私が一番好きな仕事は、そう、「ダメ出し」です。

ダメ出しと言っても、決して後輩をいじめているわけではありません…!!
お客様のサイトをユーザーインターフェイス設計のプロという立場で分析し、ユーザビリティやデザインの観点から問題点をひたすら洗い出す作業のことを指しています。
専門用語では「ヒューリスティック評価」と言ったりもしますね。

個人的にはお客様に「評価」や「ダメ出し」なんて言葉を使うのは気が引けますので、私は便宜上「課題抽出」と呼んでいます。
わかりやすいし、何より身の丈にあっているかと…(笑)  
 
 
本題です。
皆様はこの「課題抽出」を経ずに、サイトのリニューアルの提案をプレゼンしたり、推進していないでしょうか?

お客様に信頼いただき、リニューアルを成功させるには、課題抽出は非常に大切な工程です。
何も大規模なサイトのリニューアルでなくても、1ページのLPを改修する時にだって、有効な手段です。

・そういえば今まであまりちゃんとやったことがないな
・他のディレクターはどうやってるの?

という方に、少しでも参考になれば幸いです。
 
 

そもそもいつやるの?

多くの場合、
・お客様からサイトのリニューアルを依頼された
・サイトリニューアルのコンペに参加する
・サイトのリニューアルを営業したい
…という時に、自主的に現行サイトの課題を出しにいきます。

お客様から「今のサイトの課題を教えてくれないか」と課題抽出そのものをお願いされることは少ないです。
あくまでもリニューアルを成功させるためのプロセスになります。

なんでやるの?

「お客様に刺さる提案ができれば、今のサイトの課題なんてどうでもよくない?」
というディレクターのあなた。

Nooooooo!
 
 

課題抽出の目的、それは
①客観的に見たサイトの課題を、お客様にも認識いただくこと
②お客様が抱える他の課題も引き出すこと
だと私は思っています。
 
 

まず①について。
私は一度、あるお客様のサイトリニューアルに参画した際、腕によりをかけて新しいページ構成案を提案したことがありました。
私の提案どおりに作ればかなり使いやすいサイトになる!と思ってたのですが、お客様から返ってきたのは「長年使い慣れてるサイトなのに、勝手に変えないでください」という怒りでした。
こっちの方が絶対いいじゃん……リニューアルってそういうことじゃないの……と当時は理不尽に思いましたが、今の私ならわかります。当時はちゃんと課題の認識合わせができていなかったと。
私の中では”今のサイトの課題”を徹底的に解消した提案だったのですが、お客様は私が考えている課題なんで知る由もなく…。だから「勝手に変えられた」と不安になるのも当然ですよね。
新しいページの構成案を提案する前に、しっかり解消すべき課題を認識合わせする大切さを実感しました。
  
 

そして②も重要なポイントです。
実はサイトの課題をご提示すると、私たちがサイトを見ただけでは知りえない運用上の課題や、いたしかたないルールなどが浮き彫りになることが多々あります。
お客様から「ここは別の部署が好き勝手作ってしまってて…」「ここは〇〇報告書に合わせてて…」など、本当に想像もしていなかった裏事情をたくさん教えていただけるのです。
リニューアルに際して簡単に変えられない事を知るのも、変えられないと思い込んでる根深い問題を紐解くのも、私達の大事な役目です。

どうやってやるの?

私が普段行っているやり方をご紹介します。
あくまで個人のやり方ですので、体系的に学びたい方は期待値を落としてください。  
 

(1)まずはターゲットになりきってサイトを使ってみよう

どんなサイトにもメインターゲットがあるはず。そのターゲットになりきって、まずは一度サイトをざっと使ってみます。
学校の先生をターゲットにした商品のサイトなら、校長先生にだってなりきります。 信頼できる商品なのか調べたり、商品説明を読んでみたり、申し込みフォームを入力してみたり。

その体験の中で、少しでも使いづらかった、違和感を覚えた、理解できなかった部分を、とにかくメモってください。

(2)課題抽出の観点を決めよう

ここからがプロの仕事です。
何も考えずに見るターンが終われば、次は課題を抽出する際のポイントを決めます。
    
課題抽出の観点はさまざま。対象のサイトがどういった種類なのかによって、指標を決めるのをおすすめします。
たとえば…

  
  

・「商品購入」「サービス申込」など明確なゴールがある場合

こういったサイトの場合は、ユーザーがサイトに入ってからゴールに向かうまでの過程を軸に、課題がないかを確認するとやりやすいです。
例えばこんな感じ。

  
  

・コーポレートサイトなど情報提供を目的としている場合

こういったサイトの場合は、ユーザビリティ/デザインなどのジャンル別で確認すると良いでしょう。
例はこんな感じ。

このように、ある程度「こういうタイプのサイトはこの指標で見る」というのを予め決めておけば
課題抽出の最初の一歩が軽くなりますよ。   
  
  
  

(3)2で決めた観点をもとに課題を洗い出し

「(1)まずはターゲットになりきってサイトを使ってみよう」はひとりの人間としての感覚的なものだったのに対し、ここではプロとして、(2)であげた観点に基づきサイトを評価します。
例えば、1で「グローバルナビゲーションが使いづらかった」という感想を持った場合。
それが何故使いづらいかを言語化するのが、このフェーズです。

・メニューが多くメリハリもないので見つけづらい
なのか
・ラベルが抽象的な言葉なので、リンク先がどんなページか想像できない
なのか
・マウスオーバーしても下層ページのリンクが表れないから、サイトの全体像が捉えづらかった
なのか。
「使いづらい」の原因を深堀し、お客様にも伝わる言葉にします。   
  
ここもひとまず箇条書きのメモでOKです。
 
   
~~~【突然ですがここでよくある質問】~~~
 
Q.全ページやるの?
A.基本的には全ページ見ます。超特大ボリュームのサイトの場合は、ディレクトリ単位などで見ると良いです。 全ページ見ていると、そのサイトのルールやクセなんかも自然と理解しやすいです。
 
Q.どんな粒で課題を洗い出すの?
A.大きくても小さくてもとにかくメモしておきます。 課題には「このページは誰に何を伝えたいのかわかりませんでした」という根本的なものもあれば、「表記がお問い合わせ/お問合せで揺れています」といった重箱の隅をつつくような小さいものもあります。
どんな粒でもとにかくメモ!(あとで精査すればいいだけ!) こちらが小さい問題だと思っていても、お客様にとっては重要かもしれませんし、何より「細かいところまで見てくれていて信頼できる」という印象を持っていただける事もあります。  
Q.自分の指摘に自信が持てない
A.そんな時はとにかく他のサイトを見まくりましょう!
たくさんのサイトを見ていれば自然と「良い」「使いやすい」「好感度が高い」という基準が自分の中で出来てきます。
そうすると、「他社サイトと比較するとお客様のサイトはここがもう一息」と、わかるようになってきます。```

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(4)他社サイトの好事例を探そう

例えばグローバルナビゲーションに「メニューが多くメリハリもないので見つけづらい」という課題を出しても、お客様は「じゃあどうすればいいの?」と不安になります。
そうなる前に、参考になる他社のサイトも探しておきましょう!

グローバルナビゲーションのメニュー数は多いけど、メリハリがついていて整理が上手なサイト、必ずあるはずです。
理想どおりのドンピシャじゃなくても、「このサイトのこの部分が良い例です」というレベルでも十分です。  

  
  

(5)仕上げは資料作成

「まだあるのか~~!!」「資料苦手!!!」って思うかもしれませんが、せっかく洗い出した課題は、お客様に伝わらなくては意味がありません!

(1)と(3)でたくさんメモを書いたと思いますので、それをまとめていきましょう。ここはもうただ頑張るのみ。
私の場合は、パワポにスクリーンショットを貼り、課題を添える形にしています。
 
 
例 ※架空のサイトです

 
どこにどんな指摘をしているか、直感的でわかりやすいかと思います。
お客様が「で?」とならないよう、(4)で探した好事例も紹介したり、最後に課題をまとめとして要約してあげるのも大事ですね。   
  
 

最後に

イメージ沸きましたでしょうか?
あくまで私がやっている方法のご紹介ですので、みなさまもご自身や、ご自身のお客様に合うやり方を見つけてください。  
 
課題抽出はリニューアルする前に行う工程なので、実はお客様とはまだ信頼関係を築けていない時期ということがほとんどです。 もしかすると、今のサイトはお客様ご自身が作られた思い入れと愛着のあるものかもしれません。そんなサイトの「ダメ出し」を心無い言葉で伝えてしまっては大変です。
新しいサイトをよりよいものにしたい、という思いもしっかりお伝えしつつ、「この説明文はすごく理解できましたよ」「御社のサービス素敵ですね!だからこそもっと魅力が伝わるページにしましょう!」というポジティブな意見を添えるのも良いでしょう。

それでもお客様とだいぶ仲良くなったあと、お酒を飲みながら「西田さんのあの資料えぐかったわ~~」(訳:図星すぎてモチベーションが掻き立てられたわ~~)なんて言葉をいただきますがw
↑都合の良い意訳したな~~というつっこみが聞こえますが、でも本当に嫌な気分にさせてしまったと思った事はなく、どのお客様もとても前向きに受け止めて感謝してくださいます。
私がいいお客様に恵まれているだけかな(自慢)
 
 
愛を持った「課題抽出」をきっかけに、皆様も大切なお客様とのより良い関係を築けることを願っています!

執筆者西田愛

ウェブディレクター。プロジェクトマネジメントからウェブサイトのコンサルティング、UI/UX設計など、幅広い業務をしています。