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    Webディレクターも知っておきたい!「上級ウェブ解析士」の資格を取得するメリットと活用シーン

    本記事は  Design Week 2023  4日目の記事です。
    🌈  3日目  ▶▶ 本記事 ▶▶  5日目  💐

    初めまして、Webディレクターの伊東です。2022年12月に中途で入社し、現在はWeb制作のディレクションを担当しています。

    以前は、10名程度の小さなWebマーケティング会社で、営業兼ディレクターとして新規顧客の開拓から実務まで幅広く携わっていました。Webディレクターになった当初、クライアントへ提案する中で、スキルアップを目指して「上級ウェブ解析士」の資格を取得しました。

    上級ウェブ解析士って実際どうなの?と思われる方もいるかもしれませんが、 実際に取得してみて、他の資格とは一線を画していることを実感しました。

    そこで今回は、Webディレクターの立場から、上級ウェブ解析士の資格を取得して感じたメリット実務での活用シーンを紹介します。

    ウェブ解析士とは

    ウェブ解析士は、一般社団法人ウェブ解析士協会(WACA)が運営する民間資格です。

    アクセス解析をはじめとしたウェブ解析データを活用し、デジタルマーケティングを通して事業の成果を導く人材、それがウェブ解析士です。

    引用:https://www.waca.associates/jp/course/wac/

    とあるように、アクセス解析にまつわるマーケティング知識を習得したい方におすすめです。2022年12月時点で累計受講者が約5万人いるため、Web業界の方であれば一度は「ウェブ解析士」を聞いたことがあるかもしれません。

    Webサイトの改善に必要な知識やスキルを効率的に習得できるため、Webディレクターにとっても必見の内容が盛りだくさんです。

    ウェブ解析士は3つの資格から構成されており、上級ウェブ解析士になるには「ウェブ解析士」の試験から受ける必要があります。

    ウェブ解析士の種類
    ウェブ解析士の種類

    引用:https://www.waca.associates/jp/course/

    1. ウェブ解析士

    • 概要:ウェブ解析・マーケティングの用語理解・知識習得
    • 費用:17,600円(税込)
    • 試験内容:120分50問、4択問題

    2. 上級ウェブ解析士

    • 概要:実戦経験によるコンサルティングスキルの習得
    • 費用:88,000円(税込)
    • 試験内容:講座受講、レポート課題の提出

    3. ウェブ解析士マスター

    • 概要:指導・育成能力の習得
    • 費用:3コース合計 440,000円(税込)

    求められるハードルは高くなりますが、上級ウェブ解析士まで挑戦することで、Webディレクターとしての活躍の幅をさらに広げることができる(と思う)ため、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

    次章から、上級ウェブ解析士について、詳しく紹介していきます。

    上級ウェブ解析士の試験内容・取得方法

    上級ウェブ解析士は、選択式試験のウェブ解析士とは異なり、実践形式となります(疑似コンサルを体験できる)。講座+レポート提出のため、試験のようなドキドキ感はありませんが、それなりに時間を費やす必要があります。※目安:1か月半~2か月(学習時間:40時間~60時間)

    ウェブ解析やウェブマーケティングに関する応用知識を習得し、データの正しい認識を基に、クライアント及び社内経営陣・上長への説明、交渉等、事業の成果につながる提案スキル向上を目指します。

    引用:https://www.waca.associates/jp/course/

    上記の上級ウェブ解析士の概要にあるように、上流工程の事業分析からマーケティング戦略の立案、KPI設計まで、より実践的な知識やスキルが求められます。

    上級ウェブ解析士を取得するまでの流れ
    上級ウェブ解析士を取得するまでの流れ
    引用:https://www.waca.associates/jp/course/swac/

    流れとしては、講座の申し込みから、「事前課題」→「中間課題」→「修了レポート」の提出を経て取得することができます。

    実際に私が受けた際の提出物は下記で、事業分析からマーケティング戦術を計画し、最後に提案書に落とし込む、といった流れです。(その間、ウェブ解析に関する講座も2回あります)

    自分でレポートを作成するため、データから課題を発見し、具体的な改善行動に結び付けるような一連の流れを経験することができます。

    提出物1)事前課題:事業分析・経営戦略の策定

    • 5フォース分析
    • クロスSWOT分析
    • NPS
    • ペルソナ
    • カスタマ―ジャーニーマップ
    • ロジックツリー

    提出物2) 中間課題:マーケティング戦術書の作成

    • マーケティング計画書 ※売上20%UPのための根拠を集客チャネルごとに記載
    • Googleタグマネージャー設計指示書
    • 改善と設計の提案
    • 施策評価シート

    提出物3)修了レポート:実際の提案書に落とし込む(15ページ以上)

    ※ 当時の分析ツールはGoogle Analytics(UA)でしたが、2023年度の上級ウェブ解析士認定講座では、GA4を使った分析に全面的に改定する予定みたいです。(気になる…!)

    Webディレクターが上級ウェブ解析士を取得するメリット

    実際に上級ウェブ解析士を取得してみて、以下のようなメリットがあると感じています。

    • 事業分析やマーケティング戦術を考える練習により、事業戦略全体の理解を深めることができる
    • Google Analyticsの解析スキルも習得できる
    • データから課題を特定し、具体的な改善策に結びつける力が身につく
    • 上級ウェブ解析士の肩書を持つことで、社内外からの信頼度が高まる(気がする)
    • ウェブ解析士向けのセミナーを受講できる(上級でなくても可)

    ▽参考:過去に参加したセミナー
    ウェブ解析士会議 2019
    https://www.waca.associates/jp/news/34129/
    ※GA界の巨匠、小川卓さんも登壇されていました

    より実践的な学びと、”上級”がつくことで箔がつきそう、といった理由で取得しましたが、色々なシーンで恩恵を受けることができたため、結果的に取って良かった資格となりました。

    実践で役に立った活用シーン

    最後に、Webディレクターの業務は人それぞれ違うかもしれませんが、自身の業務で役に立ったシーンを紹介したいと思います。

    ① 営業/提案

    A社)BtoC/ECサイト

    役に立ったこと

    事業分析→マーケティング計画に落とし込む考え方

    活用シーン

    定期購入が伸び悩み、競合他社も台頭している状況下で、Webマーケティング戦略の見直しが必要となりました。現状分析や競合調査を通じて、メインターゲットの優先順位を再評価し、Webサイトの訴求メッセージやビジュアルの改善、商品画像の刷新、LPの制作、広告施策など、マーケティング戦略の観点からKPIを設計し、月ごとの施策計画を策定することができました。


    B社)BtoB/サービスサイト

    役に立ったこと

    ユーザーエクスプローラーの機能を使った問い合わせ導線の解析
    ※ユーザーエクスプローラー: 一人ひとりの行動を詳しく見ることができるGoogle Analyticsの機能。 いつ、何時何分に、どのページを見ていたか、を把握できるため、 コンバージョンした人の経路を理解するのにも役立つ。

    活用シーン

    問い合わせのあったユーザーの流入チャネルやページ遷移、コンバージョンに至るまでの流れを集計し、グループ化することで、ペルソナの再定義やコンテンツ作成の計画に役立てました。

    さらに、営業時には、ユーザーが直前に閲覧していたページから、そのユーザーの関心事を推察してアプローチすることで、効率的な営業活動ができるような仕組みを構築しました。

    ② リニューアル

    C社)BtoC/ブランドサイト

    役に立ったこと

    閲覧開始・ページ遷移の解析によるSEO×UI視点のサイト改善

    活用シーン

    ヒューリスティック評価の裏付けのため、アクセス解析を実施しました。主力商品のブランドページへの流入が減少しており、検索順位も下がっている状況でした。(ブランドページだけが下降)

    閲覧開始・ページ遷移の解析をしたことで、SEOとUIの観点でサイト構造に問題があることが浮き彫りになったため、サイト構造の見直すためのリニューアルを行いました。グローバルナビのメニュー項目を大幅に改修し、ページの階層を変更するなど、SEOとUIの観点からリニューアルを実施し、検索順位を上げることに成功しました。

    ③ 運用

    D社)BtoC/サービスサイト

    役に立ったこと

    ページの貢献度を図るためのコンテンツ解析

    活用シーン

    流入×CVの視点で各ページを4象限に分類し、コンテンツSEOの運用効率化を実現することができました。それぞれのページがどの程度流入につながっているか、どの程度コンバージョンに貢献しているかを把握した上で、より成果につながるコンテンツSEOのテーマやキーワードを考案しました。その結果、流入数だけでなく、記事からの間接的なコンバージョンも増加しました。

    以上、上級ウェブ解析士を取得して役に立った活用シーンを紹介しました。

    上記はさまざまな要素が複雑に絡み合っているため、上級ウェブ解析士を取得したからといって すべてを解決できるわけではありませんが、少なからずそこで得た知識が土台となり、成果を出すことができたと感じています。

    まとめ

    Webディレクターにおすすめの資格はさまざまありますが、上級ウェブ解析士は、知識のインプットからアウトプットまでを体系的に取り組むことができるため、Webディレクターになりたての方から、よりレベルアップしたい方まで、幅広くおすすめできる資格です。

    ただ単にサイトを制作するだけではなく、マーケティング視点を持ちクライアントの成果につなげられるWebディレクターは、活躍の幅が広がると同時に自分もそうでありたいと改めて思いました。

    上級ウェブ解析士の資格は、時間も費用もかかりますが、名刺に“上級ウェブ解析士“と記載されているだけで華やかになる嬉しい特典もありますので、興味のある方はぜひ挑戦してみてください!

    執筆者:Ito Webマーケティング会社でのコンサルティング営業を経て、現在はWebディレクター。上級ウェブ解析士、人間中心設計スペシャリスト。フルマラソン挑戦中。