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【YouTube広告】動画視聴キャンペーン(VVC)で得た驚きの結果

本記事は  デジマウィーク2024  5日目の記事です。
📊  4日目  ▶▶ 本記事 ▶▶  6日目  📈

部署異動してWebディレクターからWeb広告運用・コンサルタント業務をしています、ガリです。
入社当初に執筆したコロナ禍Webディレクター3年目の私が継続していること3選 に引き続き、2度目の執筆となります。

はじめに

YouTube広告で主流のインストリーム広告をはじめ、最近では視聴回数やリーチ最適化に特化したメニューが出てきました。特徴や設定方法等をまとめた記事はネットで調べれば出てくるものの、運用してみた結果等は見つからず、新しいメニューということもあり実施に踏み切れない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新しいメニューの動画視聴キャンペーン(VVC)を運用してみた結果をまとめてみましたので皆様のメニュー検討材料になれば幸いです。

動画視聴キャンペーン(VVC)とは?

概要

動画視聴キャンペーン(以下、VVC)とは、その名の通り【視聴回数の最大化】を狙うメニューです。使用できるフォーマットは「スキップ可能なインストリーム」「インフィード」「YouTube ショート」の3つです。この複数のフォーマット(以下、マルチフォーマット)を活用することで、複数面に動画を配信し効率的に視聴数を獲得するというのがこのメニューの特徴です。

課金方法について

<スキップ可能なインストリーム>
広告視聴単価制では、ユーザーが動画を 30 秒間(30 秒未満の広告の場合は最後まで)視聴したか、30 秒経つ前に動画を操作した場合に料金が発生します。

<インフィード>
料金が発生するのは、ユーザーが広告をクリックして視聴した場合、または自動再生で 10 秒以上視聴した場合のみです。

<YouTube ショート>
YouTube ショート広告では、インプレッション、視聴、エンゲージメントに対して料金が発生します。
視聴回数がカウントされるのは次のような場合です。

  • 自動再生が 10 秒経過した後
  • 広告がクリックされた後(クリエイティブがループする場合、課金は 1 回のみで、1 回の視聴としてカウントされます)
  • 広告の最小長さが 6 秒の場合: 10 秒未満の広告の全部が視聴された後

参考: 動画視聴について - Google 広告 ヘルプ

メニューの中でも何のフォーマットを使用するかで課金方法や視聴カウントが変わってくるようです。なかなか複雑な仕様なので、新しいメニューを実施する場合はGoogle広告ヘルプを熟読したほうがよさそうです、、。

運用結果から考えられること

今回は複数のパターンで運用を実施しましたので、まずはキャンペーンの詳細をご紹介をさせていただきます。(VVCとの比較のため、おまけでVRCもご紹介)

キャンペーン設定内容

① VVC(単数サイズ×単数秒数クリエイティブ)
サイズ:1,920×1,080px(横向き)
長さ:15秒動画

② VVC(複数サイズ×複数秒数クリエイティブ)
サイズ:1,920×1,080px(横向き)、1,080×1,920px(縦向き)、 1,080×1,080px(スクエア)
長さ:15秒動画、30秒動画

③ VRC(おまけ)※VVC(単数サイズ×単数秒数クリエイティブ)のリーチ最適化Ver.
サイズ:1,920×1,080px(横向き)
長さ:15秒動画

正直なところ、運用のしやすさ・メンテナンスのしやすさを考慮すると①が一番やりやすかったです(笑)
ですが今回は検証ということもあるため、いろいろと試行錯誤してみました。かなり面白い結果になりましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

Q.複数フォーマットがあるけど、クリエイティブも最適なフォーマットで最適化されるのか?

A. 適切なフォーマットで配信される

私的に実施前に結構気になっていたポイントなんですが、機械学習ってすごいんですね~ちゃんと最適化してくれました!
詳細は下記をご覧ください。

■ VVC(単数サイズ×単数秒数クリエイティブ)の場合
クリエイティブのサイズが横向きのみであったこともあり、最適な配信面であるスキップ可能なインストリームとインフィードで多く表示されました。しかし、視聴回数を見てみると、スキップ可能なインストリームで多く視聴数を獲得していることが分かります。

■ VVC(複数サイズ×複数秒数クリエイティブ)の場合
① 横向きクリエイティブ
横向きクリエイティブのみで絞ると、インフィード面ではありますが上記VVC(単数サイズ×単数秒数クリエイティブ)の場合と同じように横向きに適したフォーマットでの配信で多く視聴数を獲得しました。

② 縦向きクリエイティブ 縦向きクリエイティブのみで絞ると、こちらも同じく最適な配信面であるショート動画で多く表示、視聴数を獲得していました。

③ スクエアクリエイティブ スクエアクリエイティブのみで絞ると、ショート動画で、多くの表示と視聴数を獲得していました。スクエアに関してお試しという形でどのフォーマットが適しているのかを確認する目的もあったため、今回ショート動画が適した配信面であったことも併せてわかりました。

以上のことから、最適化はクリエイティブにも影響を受けるため、配信したいフォーマットがある場合は下記を参考にクリエイティブを作成してみると良いかもしれません。
※今回はマルチフォーマットを設定せずにクリエイティブが想定されたフォーマットで配信されるか確認するため、マルチフォーマットの設定はしていません。

Q.視聴率はどうなのか?

A. 配信するフォーマットによって結果にかなり差がある

これも結構気になっていたポイントです!特にショート動画。普段私自身ショート動画をかなり見る側の人間な気がしていますが、ありえない速度でスライドして次の動画を見ているので実際のところどうなのかな~と思いましたが、、やはりね、、そうだよね、、
ではこちらも詳細をご覧ください。

■ VVC(単数サイズ×単数秒数クリエイティブ)の場合
本キャンペーンの100%視聴率の平均値は57.77%でした。また、多く視聴数を獲得していたスキップ可能なインストリームでは、平均値を越えて58.01%となりました。

■ VVC(複数サイズ×複数秒数クリエイティブ)の場合
本キャンペーンの100%視聴率の平均値は4.01%でした。また、多く視聴数を獲得していたショート動画では、平均値を下回り2.94%となりました。

この結果から以下2つのことが分かりました。

① スキップ可能なインストリーム・インフィードで配信されれば、ある程度の視聴率は担保されるのではないか(ショート動画に配信されるクリエイティブは配信しない前提)
② ショート動画で配信した場合、視聴率への影響が大きい

まず①について、クリエイティブが単数であっても複数であってもスキップ可能なインストリームでは視聴率は高いということが分かりました。また、25%-50%-75%の視聴率を見てもショート動画に比べるとかなり高い数値を出していることが分かります。
以上のことから、フォーマットそれぞれの仕様(スキップ可能なインストリームでは最初の5秒間は強制視聴、他フォーマットは制約なし)が影響している可能性は高そうです。

次に②について、①でも説明した通りショート動画の視聴率が他フォーマットに比べかなり低いことで、全体数値を大きく下げていることが分かりました。あくまでVVCは視聴最適化ということもあって、ショート動画の視聴率はあまり気にしないのが良いのかもしれませんね、、。気になる場合は他フォーマットで配信することをお勧めします。

Q.VVCは認知拡大を目的として運用できるか?

A. 認知拡大の施策の一つとしてはアリ

Google広告ヘルプで見ると、施策に合ったキャンペーンを選ぶと良いとのことですが実際のところどうなんだろう、と気になっていたので、これも検証してみて面白かったのでぜひ詳細ご覧ください。

まず認知拡大のメニューは動画リーチキャンペーン(VRC)というものがあります。

動画リーチキャンペーン(VRC)とは?

動画リーチキャンペーン(以下、VRC)とは、その名の通り【リーチ数(認知拡大)の最大化】を狙うメニューです。使用できるフォーマットは「バンパー広告」「スキップ可能なインストリーム広告」「スキップ不可のインストリーム広告」の3つです。付け加えてマルチフォーマットを使用することもできます。スキップ不可なインストリーム広告が使用できるのはこのメニューの特徴です。

参考:動画リーチ キャンペーン - Google 広告 ヘルプ

まず、認知拡大をするためにはリーチ(広さ)×フリークエンシー(深さ)が重要視されています。Google広告で言うとリーチはユニークユーザー数、フリークエンシーは頻度の分布という指標で見ることができます。
今回はVVCのほかにVRCも別で運用していましたので、実際に視聴効率重視のキャンペーンとリーチ効率重視のキャンペーンを比較してみましょう。

※設定環境は以下の通り
■共通設定
消化金額、クリエイティブ、ターゲティング、配信アプリ・ブラウザ(YouTubeのみ)
■個別設定
入札戦略(VVC:視聴数最大化、VRC:リーチ数最大化)
広告フォーマット(VVC:マルチフォーマット全て、VRC:スキップ不可なインストリーム)

まずユニークユーザー数に関して、VVCの方が多くVRCの約1.4倍でした。頻度の分布に関しても全体的にVVCの方で値が大きく、3回以上リーチしたユーザー数で比べるとVVCはVRCの約4.3倍でした。

この結果から、動画を完全視聴してほしいという目的がなければ、認知拡大という観点ではVVCを活用するのもよいということが分かりました。
今回実施したVRCではそもそも「動画を完全視聴してもらい、商品への理解・ブランドを認知してもらいたい」という顧客要望がありました。そのため今回は完全視聴に重きを置いて、VRCを選択しました。そのため顧客要望の目的は達成できたものの、結果的に上記観点で見ても完全視聴数はVVCが約175,756回、VRCは138,964回(表示回数×100%動画再生の割合)でした。視聴率で見るとVRCの方が良いことが分かりますが、完全視聴数にならすとVVCの方が成果が良いことが分かりました。
そのため、動画を完全視聴してもらいたいという要望がなければVVCで運用したほうが効率的に認知拡大も可能ではないかと思います。

まとめ

今回はいろんなバージョンのVVC、またVRCとの比較をしてみましたが皆様いかがだったでしょうか?
いつも運用してメンテして~という気持ちばかりで検証に重きを置いて業務するのはなかなか難しかったのですが、今回は運用していく中でもかなり役立つ結果&単純に面白かったと私は感じています。

まとめとして、今回の検証結果で分かったことは以下3つです。

  • マルチフォーマットを活用した場合、最適化はクリエイティブにも影響を受ける
  • 配信するフォーマットで視聴率の変動が大きく変わる
  • VVCは認知拡大でも活用できる可能性がある

前述していますが、メニュー・フォーマット・クリエイティブの掛け合わせで結果がこんなにも変わるとは筆者も驚きでした。以降も運用していく中で新しいメニューが出て実施する機会があれば今回のように結果がどうだったかをまとめてみたいなと思います。