本記事は
技術書著者Week
5日目の記事です。
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佐々木です。今日は技術書著者Weekということで、執筆にちなんだことを書いてみます。 執筆の流れなどは既に書かれているので、そもそも無名のエンジニアが編集者から声が掛かり、商業誌を執筆するになるまでの道のりを書いてみます。自分も本を書いてみたいと思う人に、何かヒントになればと幸いです。
編集者から声が掛かるキッカケ
私が初めて著書を世に出したのは、もう8年近く前の2014年8月22日です。『Rubyによるクローラー開発技法』という本で、実はAWS関係の本ではありません。また執筆のキッカケはAWSのコミュニティや会社経由の紹介ではなく、編集者さんが私が個人で書いていたブログを読んでメールで声を掛けてくれたのが始まりです。当時は趣味でいろいろなデータを収集し分析して、その過程でクローラーやスクレイピング手法について調べていました。調べたことを備忘録代わりにブログで公開していて、Rubyでクローラー・スクレイピングを検索すると私のブログが常に上位にくるという状態になっていました。
今でこそ実名でやっていますが、当時は匿名でブログもTwitterをやっていました。またAWSのAmbassadorやTop Engineerという肩書もなく、本当に無名のエンジニアです。そんな自分を、Googleさんが編集者さんとつないでくれたということですね。
編集者は著者に何を求めているのか?
では編集者さんは、なぜ私に声を掛けようとしたのでしょうか?商業誌が発行される前には、必ず企画があります。この企画には、著者が持ち込むものと、編集者が作るものの2種類があります。編集者が作った企画については、それを書く人を探す必要があります。その際、編集者はまず知り合いの著者に声を掛けます。知り合いの著者に書ける人がいないか、著者の知り合いに書ける人がいないかの順ですね。それでも居なければ、ネットなどを通じて書ける人を探します。ブログや勉強会でテーマに関連していることをアウトプットしている人、あるいはテーマに沿ったことを専門としている会社があれば、そこにコンタクトを取ることもあるようです。
当たり前ですが編集者さんは、企画に沿ったテーマについて書ききる知識を持った人を探しています。文章力などは、編集でなんとかなるので、(もちろん文章力は重要ですが)そこについては二次的な要素として捉えられているようです。ということで、自分が書きたいと思うテーマがあるのであれば、何らかの形でアウトプットして世の中に書けるよ〜っとアピールすることが大事です。どんなに凄い事が書ける人でも、それを世の中の人が知らなければ、残念ながら存在しないと同じだから。
商業誌で執筆するためのファストパス
これまで紹介した手法は、編集者に自分を見つけてもらう方法です。薄々感じているかもしれませんが、かなり受け身な方法ですし運にも左右されます。また、そもそも自分が書きたいテーマが、世の中に企画として存在しない可能性の方が高いです。世の中の流れを変えるのだという独自の熱い企画は、日の目をみることはなさそうですね。そんな場合にお勧めの手法としては、まずは自分で書いて出版してしまうという方法です。
今までは書籍の流通経路としては、出版社を通じてネットやリアル書店で販売してもらうのがほぼ唯一の経路でした。しかし、今はKindle ダイレクト・パブリッシングで電子書籍として流通するルートがあります。また、技術同人誌という分野も活発で、自分で製本して直接販売するというルートも出来ています。昔からある自費出版に流通経路が拡張されたような形ですね。
私自身も実際に技術同人誌を書いてみたのですが、上手く行けば数百〜数千部の販売もありえます。通常の商業誌は3,000部前後を初版とすることが多いので、個人でそれに匹敵する流通ができるのは驚異的です。実際、私が監修として関わらせて頂いたAWSのコンテナ本は、もともと技術同人誌として新井さん・馬勝さんが執筆して話題となったものを、改めて商業誌として企画して出したものになります。サクセスストーリーですね。また売れる売れないは関係なく、自分で1冊の本を書き上げる経験は得難いものです。自分で書いてみると、世の中に沢山の本があることのありがたさに気がつけます。
執筆者が沢山いる環境に身を置く
もう一つの手法としては、執筆者が沢山いる会社に在籍するということも有効です。先に述べたように、編集者は企画があれば知り合いの著者にまず声を掛けます。著者は自身で受けられれば良いですが、そうでない場合は周りに書ける人がいないか考えます。その時に候補にあがるのが、一緒に働いていて実力を把握している同僚です。私の場合は1冊本を書き終わると、平均して編集者から2冊くらい執筆依頼を受ける無限回廊に陥っています。なので、積極的に同僚を巻き込んでいます。その際は懇切丁寧にお願いしているつもりですが、頼まれた方としては青天の霹靂のようです。
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こんな感じで執筆の機会が転がっています。また、そもそも執筆ってどうやって進めたらいいのというのは、やったことが無い人はサッパリ解らないと思います。更に言うと執筆はなかなかに孤独な作業です。これを一人で進めるのではなく、みんなで進めることにより完成までにこぎつけられる可能性がぐっと高くなります。NRIネットコムは450人前後の会社ですが、執筆経験がある社員が20ほどいます。その数も毎年、どんどん増えていっています。割合としてはかなり多いのではないでしょうか。キャリア採用も積極的にしているので、興味がある人は是非見てみてください。
まとめ
私が知っている範囲で、技術書の企画から執筆開始までの流れをまとめてみました。執筆してみたいという方は、自分の環境と照らし合わせて、どうすればチャンスを得られるのか検討してみるとよいでしょう。他の業界の実態は知りませんがIT業界においては、執筆する前に想像していたよりは著者になるチャンスが転がっています。自分には無縁な世界と思わずに、ぜひぜひ機会を狙ってください。そしてチャンスがあれば、是非挑戦してみてください。