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UXデザイナーが考えた、誰でも始められるUXデザインの心得3選

それなりにUX/UI関連の仕事をして来たので、もっとUXデザインを広めていくにはどうしたら良いのかなと考える事が増えています。

「UX的な取り組みって当たり前になってきたよね」とは聞くものの、実際にはそこまででも無いよなぁと感じる事も多いのがその理由であったりします。 とは言え、堅苦しく学ぶような形では無く、誰もが取り組みやすくするにはどうすれば?などと...。

私の実感としては何でも良いので、とにかく始めてみた方がUXに対する理解は進むと思うのですが、何かハードルがあって動き出せない人に向けて、まずはそれを解消できる心の持ち方を三つ挙げてみました。

1.UXって自分でつくるもの

ひとつめ。自社のプロダクト開発でUXを導入したいなと思っても、部品のように仕入れてすぐ利用出来る形でどこかで購入できる訳ではありません。

もしどこかで売られているのなら、イマイチ理解出来ていないままUXを探し求めてみなさんが右往左往する状況は起きていないはずですよね。

デザイナーがそんなこと言って良いのかと思われるかも知れませんが、どんなに頑張って探しても「これがぴったりだ!」というUXをいきなり出してくるデザイナーは存在しないと思います。

UXデザイナーは一体何を仕事としているのか?というと、デザインに関する知識や、時間を掛けて重ねてきた知見、デザインのセオリー等々をデザインの過程に活用しているだけであって、在庫をぽんぽんと売り捌いていたりはしないのです。

ではUXを必要としている時にはどうすれば良いのかというと、仕入れが不可能な訳ですからUXを自前で用意しなければいけないという事になります。

これって当たり前の話で、自前で用意するからこそ他社との差別化がされるとも言えますし、自社が提供するサービスの価値は自社がつくるというスタンス自体、本来企業としてあるべき姿ですよね。

その必要性を認識した企業であればUX内製化の為の人材確保や専任チームを組織するような動きは実際に見られて来ています。

2.UXって一人でやるものではない

そうするとやはり専門性のある人材やUXデザイナーを囲おうか?と考えてしまいがちなのですが、むしろUXは誰が取り組んでも良い…というか、みなさんで取り組んでほしい活動です。

私自身もUXデザイナーとして一人黙々と作業を行う事が理想の姿という風には考えていませんし、周囲とのコミュニケーションは不要であると考えているデザイナーにもこれまで会った事がありません。

そもそもデザインというのは特殊なスキル(技能)の事ではなく、マインドセット(思考・行動パターン)であると言われています。

つまり、つくりたいものをただ無軌道につくる状態ではなく、ユーザーの目的を達成させる事を企図している状態にある、マーケターやプランナー、プロダクトマネージャー、ビジュアルデザイナー、エンジニア、サポート、その他大勢の方々は既にデザインしている状態にあると言って差し支えがありません。

少なくともみなさんが行うものづくりは、ただ一人の人物によって完成出来る様なものでは無いと思います。

そして、良いものづくりをする為にUXを考える事は重要ではありますが、UXデザイナーがいるからと言って良いものになる事が約束されている訳でも無いでしょう。

それよりは参画するメンバーの誰もがデザインのマインドを持っている状態にある方が良いものが生まれる土壌として可能性を感じさせます。

3.UXって正解が無い

デザインに関するセミナーなどで講師をすると良く頂く質問に、「プロジェクトで意見の集約が出来ず物事が決められない時はどう決めるべきなのか?」と言うものがあります。

答えとしては、特に議論が尽くされないまま鶴の一声や多数決で決めるのは好ましく無いとお伝えしています。

鶴の一声では声の大きい方の思い入れや、所謂大人の事情に流されて決まるだけですし、一見公平に感じられる多数決も敢えて判断基準をぼかしているに過ぎず、どちらもデザイナーとしては評価しにくい決め方だと言えます。

更に言えば、物事を決定する責任を他者に委ね自分自身の意見をUXに込める状態にはなっていないとも捉えられます。

何故そうなってしまうのでしょうか?デザインってよく分からないので自信がない。成果が上がらなかった場合に責任を問われる事にはなりたくない。と言った心理が影響しているのかもしれません。

ですがそんな事はデザインにおいて大して気にする必要さえ無いのです。

何故なら自分達がこれから新たにUXを考えるのですから予め正解が用意されている訳では無いのです。

UIの設計であればセオリーは存在していますが、UXデザインではいきなり大きな成功を納めるなんて事は起こり得ないのですから頭を悩ませるだけ損というものです。

勿論、世の中には個人の名前で仕事をするような、そこに勘所があって安定して成果を導き出すデザイナーも存在しています。

それに対してUXデザインというのは生来のデザイナーではない私達でも経験を積み重ねる事で成果を得られるよう、先達が構築してくれたフレームワークと言えるでしょう。

まとめ

どうでしょう?UXデザインに取り組む際のハードルなど何も無いような気もして来たでしょうか。

むしろ外堀が埋まって「早くウチも始めなければ!」という気持ちかもしれません。

繰り返しになりますが、UXデザインはこれから提供しようとするサービス、プロダクトの価値を自分達で創造する訳ですから、誰かにやらされている感の無い、クリエイティブで楽しく感じられる取り組みだと思います。

百聞は一見にしかず。まずは実際にUXデザインに触れてみて実践してみる事が一番の近道です。

個人としてUXデザインをやってみたいと思っていても、周囲の理解が得られない、何から手を着ければ良いだろうか、といったお悩みもあるかもしれませんが、それに応えていく事がUXデザイナーの役割だと思います。

もしそんなお悩みがあればコメントなども頂ければ幸いです。

つづく(かも)

執筆者:長田和之

UI/UXデザイナー、人間中心設計専門家