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【実体験から学んだ】視覚障がい者の私が思う壊れにくいメンタルの話

本記事は  【Advent Calendar 2023】  10日目の記事です。
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こんにちは。人材開発部の塩田です。
2023年10月にNRIネットコムに入社しました。

 

まだ会社に慣れていない状況ですが、ブログ執筆のお声がけがあり二つ返事でお受けしてしまいました。(ブログ書いたことないのに)

 

タイトルにもありますように、私には視覚障がいがあり非常に狭い視野と限られた視力でどうにかお仕事や日常生活をおくっています。

周囲の人からは「そんな状態でよくメンタル壊さないね」や「メンタル強いね」と言われることもありますが、決して私はメンタルが強いとは思っていません。

 

むしろ心無い発言や他人のことを考えない行為等に心を痛めることもあります。

 

一時的には凹むことはありますが(たまに一時的が長いことも・・・)、総じて楽しく人生を送れていると感じています。

 

そういった意味で私はメンタルが強いのではなく、元に戻る力、つまりレジリエンスは比較的高い方なのかなと思います。

 

今回はこの壊れにくいメンタルについて執筆していきます。

 

 

 

 

 

壊れにくいメンタルとは何か

 

 

 

早くもメンタルというカタカナを打ちすぎておかしくなりそうですので、よくたとえ話としてあげられる「筋肉」の話をします。

 

 

プロスポーツ選手の肉体美にあこがれる人は多いと思いますが、彼らの筋肉は想像以上に柔らかいといわれています。普段から鍛え上げた筋肉を適度に休息させ、マッサージ等でケアをすることで硬くパンパンの状態ではなく、やわらかくしなやかな状態に保っています。

休息やケアを怠った筋肉は衝撃によって怪我につながるからです。

 

 

余談ですが、私は中学時代に「無理して頑張れば結果が出た」という経験をそのまま高校に持ち越してしまい、肉離れと疲労骨折をして結果を出せなかった苦い思い出があります。

 

 

心についてはどうでしょうか。弱音を吐かない、弱みを見せない、常に鎧を着ているような「鋼の心」をもっていそうな人はたまに見かけますが、その硬い鋼ですらいずれはヒビが入って壊れてしまうかもしれません。
壊れた鋼の修復は難しそうですね。

 

 

一方でゴムボールのように衝撃を吸収して一度は凹むけどすぐに元に戻るしなやかな心はどうでしょうか。決して強くはありませんが壊れにくいと思います。

 

この壊れにくいメンタルについて、人生を共にしている視覚障がいから学んだ3つの方法を紹介します。

 

*今回の内容は私の実体験から学んだものの一部となり主観的な意見です。これだけやっていれば大丈夫というものではありませんのでご理解ください。

 

 

 

凹むことに普段から慣れる

 

 

 

私は障がいがあるがゆえに凹む出来事が人一倍多いように感じます。

 

例えば、
 ・日常的に顔や足をどこかにぶつける(物理的にも凹む)
 ・白杖を使っている私がスマホを見ていたら舌打ちして「見えてんじゃん」
     *全く見えていないわけではないのでスマホは使います
 ・すごく喉が渇いていてお水を飲みたかったのに自販機から出てきたのはスポドリ
 ・帰り道に白杖が足に当たってしまった人に駅からついてこられる

 

不幸自慢をしたいわけではありませんが、このようなことが結構な頻度で起こるんです。
慣れないうちはきついですが、毎回凹み度合いは弱くなっていきます。

 

 

少し仕事の話に置き換えてみます。
後輩指導や新人育成の際、失敗をしてほしくないという気持ちから先回りしすぎてしまうことってありますよね。それを継続してしまうといつしか失敗をしたことがない中堅社員へ育ちます。

 

とは言ってもいつかは大きな失敗やミス、予想外の出来事が起こります。その際に物理的にも心理的にもリカバリーの仕方がわからないと大抵はパニックゾーンに陥ってしまいます。

 

そう、凹みなれていないから。

 

 

とはいえ社外や他部署の人に迷惑をかけるわけにもいきませんので、自分や自部署の管理内で、耐えられそうなミスをあえてさせたり、少しだけ背伸びをする必要がある課題を振ったり、かっこいい先輩を演じずにリカバリーを後輩にさせたりといったことが大切だと思います。

 

上手な歩き方を教えることも大事ですが、上手な転び方を教えてもらった方が大怪我はしなそうですよね。

 

 

上記はワクチン接種のようなものと考えています。多少の副反応はありますが凹むことへの免疫をつけるうえで重要です。

 

 

失敗するかもしれないけど一歩踏み出してみる。
自分含め対象者が耐えられそうな負荷を見極めて凹むことに慣れることで、元に戻る力を鍛えていきましょう。

 

 

 

 

自分の弱点分析をして弱さを受け止める

 

 

 

「見えないことは恥ずかしいもの」・・・とまではいきませんが、社会人になりたての頃の私はなんとか工夫すれば仕事はできるだろうと無理して仕事をしていました。

どうにかなる部分もありますがやはりできないものはできない。そのことをなかなか受け止められなかったんです。

 

結果、評価はされましたがその分期待値も上がり自分を追い込むことになってしまいました。
人を頼ればいいということはわかっていてもなかなか急にはできないものですよね。

 

 

そんな時にちょうどいいタイミングで、自分の悩みを打ち明かして周りからアドバイスをもらう研修があり参加。その際にとある人からこんなことを言われました。

 

 

「あなたにはできることがたくさんあるのに、できないことを自分の中で差別視していませんか。みんなそれぞれ弱点はありますよ」

 

 

決して特別な言葉ではありませんがそのころの私にはとても刺さる一言でした、自分の障がいを自分で差別していたんだと。

 

 

それからはすっと霧が晴れたように、できないことはあるけど「仕方がない」と割り切れるようになりました。

 

だって、みんな弱点はあるから。

 

もちろん目を背けていいかというわけではありません。克服できるのであればそれは理想。ですので克服できそうな弱点とそうではない弱点にわけて考えるようにしています。

変えられるものは自己研鑽したりフィードバックをもらったりしますが、どうやっても克服できそうにないものはそういうものだと受け止める。
そしてできる人にお願いをするといったシンプルな考えです。

 

 

自分が戦えるフィールドを見極めるというのはよく聞きますが、自分が戦えないフィールドを理解してそこで戦わないことも大切だと思うんです。

 

どれだけ努力しても報われないのは辛いですよね。限られた時間やエネルギーをどこに向けるか。

 

自分の弱さを分析して受け止めることで回避できるたくさんのことがあるのではないでしょうか。
そのうえで最大限自分のパフォーマンスを上げられるフィールドで活躍できれば素晴らしいことだと思います。

 

 

 

 

起こった事象に対して視点を変えてみる

 

 

 

自分のキャパを超える辛い出来事が起きると、対処できず近視眼的になりがちです。自分の立ち位置から見えている範囲の特に気になるところばかりを見てしまうので。
そうすると必要以上にどんどん落ち込んでいくことってありますよね。

 

 

あまり暗いお話ばかりするのも気が乗らなくなってきたのでライトに触れますが、私も病気が発覚した際は受け止められずに負の感情が飛躍していく経験をしました。

 

そんなときに救われたのが周囲の人から発せられる違った視点の言葉たち。

 

多かれ少なかれ人には考え方の癖だったりこだわりがあるかと思います。起こった事象を自分とは異なる存在に共有することで、新たな視点から見える気づきを手に入れることができます。

 

当たり前のことを言っていますが、やはり誰かに吐き出すのはすごくいいんです。

 

 

私はカウンセリング関連資格を持っていることもあり、一人二役を演じてセルフカウンセリングを時々行います。

 

アウトプットしない感情は「ぼやーっと」「なんとなく」嫌なイメージがついているものが多いのですが、言語化して整理すると思っていた感覚よりもシンプルだったと気づけることがあります。
意味づけした自分の感情が論理的でなかったり思い込みだったりすることも多々。

 

 

セルフカウンセリングとまではいかなくても、自分とは全く違う存在、
例えば好きな漫画やアニメ、有名人が自分の立場だったらどうするか?どんなアドバイスをくれるかな?みたいな想像をするのも視点を変える1つの方法です。

 

あと、何か決断をするときや逆に躊躇しているときは自分に対して「それは幸せになるための考え方かな?」と問いかけたりします。

 

「大変なときにそんなことをする余裕はない!」と突っ込まれそうですね。

 

そうなるとやはり周囲の人に吐き出してみるというのがハードルは低そうです。
信頼できる会社の先輩や同期、家族、友人などなど。プロに聴いてもらうのも1つです。

 


年齢を重ねるにつれて、いつでも話せる存在は少なくなっていくかもしれません。
助けてもらうためではありませんが、心に余裕があるときは普段から小まめにコミュニケーションをとったり感謝の気持ちを伝えたりすることが大切だと思います。

 

 

最終的にはやっぱり助け合いかなと。
私は普段から多くの人に助けてもらい生きています。
だからこそ、できないことはたくさんあるけど、できることなら惜しまず手を差し伸べたいと思っています。


ぜひ耐えきれない出来事があったら周囲を頼り視点を変えてみてください。

 

 

 

おわりに

 

心という目に見えないものに対する絶対的な正解はありませんが、私が障がいから学んだ壊れにくい心をテーマにブログ初執筆してみました。
ここまで長文を読んでくださった方にとって今回の記事が少しでも参考になりましたら幸いです。

また、このテーマについては他にも探せば著書やWebで様々な方法が紹介されています。自分にとって合う/合わないあると思いますので、色々試してよりよいメンタルケア方法を見つけてください。

 

 

最後に私の好きな心理学者クランボルツ先生の理論を紹介
「計画的偶発性理論(Planed Happened Stance Theory)」

 

キャリアの大半は偶発的に起こる出来事であり予想するのは難しい
一方で行動によって偶発的な良い出来事を起こしやすくすることは可能

 

<良い出来事(ラッキー)を引き起こす行動特性>
 ・好奇心 何事にも興味をもって行動してみる 
 ・持続性 失敗してあきらめるのではなく挑戦し続ける
 ・楽観性 何かしら良いことは起こるだろうと前向きにとらえる
 ・柔軟性 1つに固執せず様々なアプローチで物事に当たる
 ・冒険心 失敗するかもしれないけど一歩踏み出してみる

執筆者 :塩田 直也 (人材開発部)
業務経験:システム企画、教育・研修、メンタルヘルス対策、カウンセリング