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スキルについて最近思うこと

こんにちは越川です。スキルと言われると、皆さんはどんなイメージをしますか?。最近では、VUCAという言葉をよく耳にするようになりました、このVUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、変化が激しく今後の予測をすることが難しくなっている状況を指します。今回は変化の激しいVUCAと言われる時代の中で、最近、思うことを書いてみようと思います。

スキルの種類

スキルには様々な定義がありますが、その一つにソフトスキルとハードスキルという考え方があります。簡単に言うと、ハードスキルというのは、特定の訓練によって得られる技術的・専門的なスキルを指します。一方で、ソフトスキルというのは業務遂行をする上でベースとなるスキルを指します。

具体的には、ソフトスキルは、コミュニケーション力や問題解決力、ファシリテーションスキルなどを指します。ハードスキルについては特定の分野や技術的な領域を指しますから、IT業界の場合、プログラミング言語(JavaやRuby,JavaScriptなどなど)や、クラウド(Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google Cloud Platform)などを指します。ハードスキルは業種が変わると、求められるスキルは変わります。一方で、ソフトスキルに関してはハードスキルと比較すると汎用性が高く、仮に異業種に行ったとしても応用が効きやすいスキルです。

名称 概要 具体例
ハードスキル 専門的な知識や技術 プログラミング言語、クラウドサービスなど
ソフトスキル 業務を遂行する上でベースとなるスキル コミュニケーションスキル、交渉スキル、ファシリテーションスキルなど

双方をバランスよく身に着けることの重要性

一般的にはハードスキルとソフトスキルは上記のように定義されますが、ハードスキルというのは結構イメージが付きやすいかと思います。エンジニアの方でしたら、各専門領域を指しますから、僕の場合はクラウドをメインに利用するのでAWSになります。一方で、ソフトスキルはどうでしょうか?このスキルはどうもイメージがしにくく、体系化もハードスキルと比較すると難しい点があります。

ただし、ここで言いたいことは、ソフトスキルとハードスキルの双方をバランス良く身に着けることが大事なのではないか?という点です。ハードスキルは先述のとおり、ソフトスキルと比較すると体系化しやすく、その分、可視化しやすい物です。一方でソフトスキルは体系化はある程度、されてはいるものの、実際に習得しようと思うと取得の基準も曖昧ですし、できてるのかできていないのかの判別も難しいという点があります。

そういった特性を鑑みると、どうしても可視化しやすいハードスキルに目が行きがちです。加えて、冒頭にも述べた通り変化の激しい時代では、ハードスキルの移り変わりが非常に速いです。少し前まで流行っていた技術が、半年経つと名前も聞かなくなった、なんてことはよくあります。そうなると、常に新しい技術にキャッチアップすることが重要になってくるため、より一層、ハードスキルへの注目度を高めているのかなと思います。しかし、実際に業務を遂行する上では双方のスキルをバランスよく使いこなすことが重要になってきます。


例えば、以前僕が記載した、エラー解決の際に多用する思考法では、主に3つのスキルが登場します。

No 名称
1 AWSに関する知識
2 構造化思考
3 仮説思考

この中でもAWSに関する知識はハードスキル、それ以外の2つはソフトスキルに分類できます。つまり、片一方のスキルだけではなく、双方のスキルが使われているということですね。

ここからも言えるとおり、実際の業務を行う上においては、双方のスキルのバランスが非常に重要です。技術的な知見があっても、ソフトスキルが不足していれば、プロジェクトを推進する上でも弊害が出てきます。逆も然りですね。どちらかが沢山あれば良いというわけではなく、どっちもバランスよく保持している、ということが望ましいんじゃないかなと思います。


個人的に重要だと思うソフトスキル5選

ソフトスキルが大事なんだねって話だとありきたりな内容になってしまうので、ここでは個人的に大事だなと思うソフトスキルを列挙してみようと思います。

1.構造化思考

これはエラー解決の際にもご紹介した思考パターンで、あらゆる事象を構造体として捉える考え方です。エラー解決に限らず、それ以外の業務においても活用できる、非常に汎用性の高い思考法です。僕は結構、忘れっぽい性格なんですが、この思考法を使うことで抜け漏れはある程度、防ぐことが出来ています。

例えば、議事を書くというタスクを例に考えてみます。構造化思考を用いると、議事という作業は、ほぼ終端に位置していることが分かります。ここで、議事を書くというシングルタスクのみを考えるのではなく、その前後にあるタスクを実際に洗い出してみます。

構造化思考の具体的なイメージ

このように、各タスクをぶつ切りに考えるのではなく構造体として考えることで、各タスク間の依存関係、開始条件や終了条件を自ずと意識するようになります。

スポットで対応する場合
全体的な工程をイメージした場合

常に構造体として物事を考える癖をつけておくと、その人の頭の中では徐々にニューラルネットワークのようにあらゆる要素が脳内で繋がっていきます。そうすると、タスクの抽象度はどんどん上がっていき、その抽象化されたタスク同士の依存関係も頭に入ってきます。最終的には、その人の頭の中で膨大な数の構造体が完成し、結果、自走できるようになるんじゃないかなと思います。とはいえ、いきなり一人でこういった要素を洗い出すのは難しいので、上長などが一緒にサポートするとよりスムーズかもしれませんね。

最終的に複数の構造体がリンクして、タスク間の関係性を把握できるようになる

2.シミュレーション思考

これはあらゆる作業の手順をなるべく詳細にイメージする考え方です。詳細にイメージを膨らませることで作業工程の過不足に気付くことができます。 運用業務をされている方はイメージが付きやすいかと思いますが、例えば、既存のDBなどに何か変更を加える際に、誤操作をしてしまうと大事故になります。ですから、事前に検証作業をして、手順書を作成します。その手順書には徹頭徹尾、細かい手順が記載されています。どのアカウントにログインするとか、そこでどんな画面遷移を行うのか、といったそういうレベルです。これをあらゆる業務においてもこの思考法を用いるという考え方です。

具体例を出して考えてみます。例えば、社内の申請周りでフォーマットがエクセルファイルだったとします。一度、申請をしたのですが記載内容に不備があったようで差し戻しをされました。具体的には3シート目の記載に不備があったようです。その再申請を求められたとします。本来であれば、そのエクセルファイルを修正してそのまま出すだけじゃんと思うかもしれませんが、その申請ファイルをチェックする側の立場になって考えてみると以下の2工程が発生します。

No 作業内容
1 エクセルファイルを開く
2 該当のシートをクリックする

実際にこのように手順を起こしてみると、No2の工程は無駄じゃないかな?と発見があります。具体的には事前にシート3を開いた状態で保存して申請をすれば、No2の工程を省くことができます。これは凄くシンプルで分かり易い例ですが、こういったシミュレーション思考は日常業務のありとあらゆることに転用が出来ます。自分の中でより作業の内容を具体化することで、これ無駄じゃないか?、いやこれは先にやっておいた方がいいんじゃないか?とよりクリティカルシンキングが出来るようになります。それは相手の発言内容についてもそうですが、自分自身の内容についても当てはまります。つまり、自己矛盾にも気付くことができるわけですね。

具体的な作業をイメージすると過不足がクリアになる

3.天秤思考

これは物事を比較する考え方です。 満場一致でこの選択肢がベストだよね!!といったケースは経験上あまりなく、基本的に物事は比較検討の繰り返しです。比較をすることで各案のメリットやデメリットがよりクリアになります。その中で様々な要素を加味した上で最終的にどっちに天秤が傾くか?といった判断になります。ですから、1つの選択肢に拘泥するのではなく、複数の選択肢を用意しそれらを天秤にかけ、比較することが重要です。そうすることで、説得性も増し、より大局的な判断が行えます。

様々な要素を天秤にかけてジャッジする

4.個別最適化思考

これは受け手にとって最適解な形に情報やサービスを変化させるという考え方です。 例えば、無印良品の化粧水では同じ化粧水でも、さっぱりタイプ、しっとりタイプなど様々な種類があります。このように同じ製品でも、受け手のニーズに合わせて最適化することが重要です。

情報という粒度においても、それが対顧客向けなのか社内向けなのかでも提供すべき形態、ピックアップすべき情報の粒度も変わります。社内でもそれが上長なのか同期、新卒向けかでも変化します。対顧客という観点でも、部長層の方なのか、開発者向けなのか、その開発者はアプリ寄りなのか、それともインフラ寄りなのかで変わってきます。それは情報の受け手の理解度や、気にすべきポイントが異なるからです。情報のアップデートが目まぐるしく変化するということは、選択肢も加速度的に増えていきます。

となると、その時折の最適解が変わるスパンも速いということなります。したがって、この個別最適化思考という考えは今後、より一層重要な考えになると思います。

同じサービス・情報でも受け手によってニーズが変わる

5.優先順位付け

緊急度と重要度のマトリクスで考えようなんて話は良く聞くかと思います。ついつい、作業をしていると、やるべきタスクとやりたいタスクを混合しがちです。本来は優先順位が低いのに、そのタスクを優先度が高いと錯覚してしまうことは僕自身も結構あります。この思考法はそういったバイアスを排除して、客観的な視点でタスクの振り分けを行う考え方です。

また、相手から何かタスクを依頼された際もこれはどれくらいの重要度と緊急度を帯びているのかという振り分けを自身の中で行うことも大事かなと思います。これは温度感高そうだなと思ったら直ぐ返事をした方が向こうも助かりますし、かえってそこまで相手が急いでないような内容であれば、対応予定日を明示した上で、他の優先順位の高いタスクを優先した方がいいかなと思います。

バイアスを排除すると先述しましたが、自分自身が振り分けを行う以上、完全にバイアスを排除することは難しいです。後になって、あぁ、優先順位ミスったなーと思うことは僕自身よくあります。ですから、繰り返し優先順位付けをすることで、精度を高めていくことが重要かなと思います。

やりたいことと、やるべきことを区別する

おわりに

VUCAと言われる時代では常にありとあらゆる物が凄いスピードで変化しています。そういった変化に追従し続けるというのは結構大変なことです。ただし、ここで紹介したようなソフトスキルというのはそう簡単に大きくは変わらないのかな?と思っています。

それはハードスキルと比較して抽象度が高いからです。抽象度が高いということはその分、応用が効きます。とはいえ、片一方を身に着ければ良いという話ではなく、あくまで双スキルのバランスが重要であるということは自戒の念を込めて述べておきたいと思います。色々と持論を述べてきましたが、僕自身まだまだですので研鑽を重ねていきたいと思います。一人でも多くの方に参考になると嬉しいです。

執筆者越川

インフラエンジニアで主にAWSを取り扱っています。


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