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情報編集と情報設計について

本記事は NRIネットコム Advent Calendar 2022 23日目の記事です。
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はじめまして。長くデザインと会話してきたシニアスタッフの梶野です。 今回、情報を編集して意味や価値をもたせた「情報編集のデザイン」について少しお話ししたいと思います。

情報編集と情報設計のプロセス

情報編集は、情報の収集段階において基本情報とその関連する周辺情報の収集から編集プロセスが始まり、分類・整理、構造化・体系化、関係の構築、ときには情報に意味や類似項目を付加させて新たな価値をもたせデザインしてアウトプットへと進めます。
※人の行動でも、無意識に日常生活において情報編集が行なわれていると思います。

一方、Webサイトの構築プロセスに情報設計の制作があります。サイトの規模や目的、情報量によっても違いますが、情報の収集、要件定義から始まりそれらから導き出した結果に対して設計フェーズ、制作フェーズのプロセスを行いWebサイトが出来上がります。

情報編集は 1と2 / Webサイト情報設計は 2と3のプロセス

この情報とは「意味のあるデータの集まり、あるものごとの内容や事情についての知らせ」のことです。 なぜ、このような話をするのかといいますとWebサイトの構築に関わりながらも「情報とは何か?」に執着した経験談もあり、情報に意味や価値を付与して制作した「未来予測年表」のこと、そこで参考にした「情報の歴史*1という歴史本の話をしたかったからです。この本は、膨大な情報量と素晴らしい編集力によって完成されて秀作本です。いろいろな発見があると思います。

常に情報更新が必要になる「未来予測年表」

以前にお客様からの相談もあり、未来予測年表を制作しました。基本となる情報から予測される未来についての情報収集を行い、編集更新を繰り返して完成させました。内容は、当社NRIネットコムの事業領域となるコンテンツ関連を軸に5年先の予測でした。

この未来予測年表は「情報の歴史」を参考にして社会動向に対して「コンテンツ&デジタルマーケティング、ウェブ技術、デバイス関連、ネットワーク環境」など、多様な情報編集を行い見開きA3サイズの年表が出来上がりました。

当時、この未来予測年表を受け取っていただいた方には好評で 3年程アップデートを行いましたが、時代変化のスピードと諸般の事情から更新は途切れてしまいました。今日のVUCA時代*2に「未来を予測する」という成果より「未来を構想していく」時代の流れにシフトして来ていたのかもしれません。

【未来予測年表】コンテンツ&デジタルマーケティングの予測(2014年作)

未来予測年表の制作と同時期にインターネットの潮流「UI・UXの変遷」や「Webコミュニケーションの進化」「マーケティング3.0」などの情報編集して利活用しました。情報は、常にアップデートを繰り返し動向を観察し更新していかなければなりませんでした。

インターネットの潮流とマーケティング市場環境の動向

❶. インターネットの潮流「UI・UXの変遷」 ❷. インターネットの潮流「Webコミュニケーションの進化」 ❸. マーケティング市場環境の動向「マーケティング3.0」 ❹. マーケティング市場環境の動向「トリプルメディア」

歴史情報に関係を持たせて新たな意味や価値が生まれる

未来予測年表の制作にあたって「情報の歴史(監修:松岡正剛/著・文:編集工学研究所/著・文:イシス編集学校)」という本を参考にしました。人類の誕生から通信ネットワークや人工知能の飛躍的な進化に至るまでの歴史を宗教、学問、美術などの事象についてジャンルを横断し「人類はどのように情報を編集してきたか」という視点で構成した斬新な世界年表です。情報編集という視点において大集成といえます。
「情報の歴史には実にさまざまな表情がある。空間と時間の歴史、認識と表現の歴史、戦争と生活の歴史、大衆と個性の歴史、経済と技術の歴史、機械と医療の歴史、繁栄と失望の歴史…あらゆるコミュニケーションの歴史であって、またメディアのすべての歴史だった。本書はそのような情報文化史を、国や民族やジャンルをこえて初めて"同時年表化"した一冊である。」(初版カバー表紙より)

例えば、本の見開きで同じ時代に世界中で何が起きているのか出来事の関係や構造をイメージして、理解するのに役立つように編集されています。未来予測年表も見開きで情報が俯瞰して把握できるように拘りました。監修の松岡正剛さんは、編集工学研究所所長であり多岐にわたって活動されております、若い頃に私自身もお仕事をご一緒させていただきました。

情報は、活用されてこそ価値がある

情報編集(Information Editing)と情報設計(Information Architecture)
「情報をいかに正しく理解し、理解させるか」
Webデザインにおけるナビゲーションや情報アーキテクチャーの手法も「情報を理解する」ことであり、情報建築家(インフォメーション・アーキテクト)、リチャード・ワーマンによって書かれた「それは「情報」ではない。無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン(エムディエヌコーポレーション出版)」で書かれています。

著者ワーマン氏は、情報の選択が重要であった時代に「何が情報なのか? 情報とは理解に結びつく形になったものを指す」と述べています。この「理解」こそが、混迷の情報時代を生き抜くキーワードであり「理解」への本質について多岐にわたって解説しています。何がよい情報であるのか? 情報を伝達するコミュニケーションとは? 間違ったコミュニケーションや良いインターネット検索エンジンとは? 積極的に情報と立ち向かう戦術などが記載されています。少し前の書籍ですが、情報編集や情報設計を行う上で参考になると思います。

情報とは、単なるデータであり「良い情報」も「間違った情報」も意味や関係をもたせることで新しい価値に生まれ変わります。情報の編集活用を行い新たな価値共創に向けて未来を構想していくことにこれからも邁進して行こうと思います。

*1:「情報の歴史」本は「日本の電話100年」の記念事業の一環として1990年に初版、1996年に増補版、2021年に再増補版「情報の歴史21」が発売されています

*2:VUCAとは、元々アメリカで使われていた軍事用語。1990年代にアメリカとロシアが対戦していた冷戦が終結し、核兵器ありきだった戦略が不透明な戦略へと変わったことを表した言葉。Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味する

執筆者:梶野徳衛 シニアスタッフ ブランド推進委員会所属