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AWSパートナー企業に求められる役割ってなんだろう

本記事はNRIネットコム Advent Calendar 2021 13日目の記事です。
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こんにちは、上野です。

我々はAWSパートナー企業なのですが、その役割について最近悩むことも多いので書いてみました。

AWSパートナーネットワーク(APN)とは

公式ページの定義では次のようになっています。

AWS パートナーネットワーク (APN) とは、アマゾン ウェブ サービスを活用して顧客向けのソリューションとサービスを構築しているパートナーの、グローバルなコミュニティです。

顧客に対してAWSを使用したソリューションを提供している企業のネットワークです。テクノロジーパートナーとコンサルティングパートナーの2種類あり、NRIネットコムもコンサルティングパートナーの1企業です。

AWSを使用するシステムインテグレーターの多くも、コンサルティングパートナーとしてAPNに所属しています。

パートナー企業に今求められるもの

私自身もAWSを使用して多くのお客様の支援を行っています。従来はお客様からシステム構築の依頼を受け、我々のようなシステムインテグレーター、AWSパートナーが主体で構築を行うパターンが多かったです。最近は少し変わってきたと感じています。

結論から言うと、「お客様からシステム構築依頼を受けて構築する」から「お客様がクラウドを最大限活用できるよう支援する」役割に変わってきていると感じています。支援という言葉が入り、お客様がシステム構築・運用の主体になっているというのがポイントです。

※案件により、お客様が担う範囲は異なります。

ざっくりとしたイメージは次のとおりです。

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背景

各企業が自分たちでシステムを構築する、「内製化」が進んできていますが、これはなぜでしょうか。

色々と要因はあると思いますが、私が1つ考える要因はクラウド(AWS)の柔軟性です。従来のオンプレミスとは異なり、クレジットカードとメールアドレスさえあれば誰でも始められるのがAWSの特徴です。また、AWSには多くの学習リソースがあり、ハンズオン資料やブログ情報などを見ることで、それなりのシステムは簡単に作ることができます。壊すことも容易なので、失敗しながら学習できます。

この柔軟性から、「お、自分たちでやってみようかな」という積極的な企業も増えたのかなと思います。

ビジネスを速く進め、クラウドの速い進化に追随するため、さまざまな意志決定スピードUPを目的として内製化を進めている企業も多いかと思います。素晴らしいことですね。

AWSの経験があまり無い状態で進めた場合に発生する課題もあります。

課題1:AWSを最大限活用できているか?

初学者の方でもそれなりに動くシステムは構築できるかと思います。

たとえばシンプルなWEB(Amazon EC2)+DB(Amazon RDS)のシンプルな構成です。

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この構成でも、「それなりに動作する」でしょう。それなりに正常動作するので、AWSを知らない人が動作確認したら「うん、OK!」となるかもしれません。

同じEC2とRDSを使用した構成で、もう少し他のサービスも含めAWSを活用した構成にしてみます。

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どうでしょうか?構成要素が増えましたね。正直AWSを始めたばかりでここまでのサービスを活用するのは難しいかと思います。

EC2の部分をコンテナ、Lambda、RDSをDynamoDBにする場合もあるでしょう。

数多くあるAWSサービスを、うまく活用するのが難しいという課題です。

課題2:学習

背景のところで、AWSには学習リソースがたくさんあり、それを参考に構築ができると書きましたが、サービス数が多く細部まで学習できない方も多いかと思います。実際にメンバー、組織の学習に悩まれているお客様の声も多く聞きます。

システム構築以外にも無数の業務が存在し、みなさん忙しいという現実もあります。弊社でもそうです。

組織として技術のキャッチアップができないという課題です。

さて、これらの課題解決を支援するのがAWSパートナーの役目です。我々AWSパートナーがメインとなってシステム構築をするというのも一つの支援なのですが、ここではお客様中心で構築する場合の支援を考えてみます。いずれの支援方法も、基本的な構築スキルだけではなく高度なAWS活用スキルが求められます。

ノウハウ、知見の共有

我々は複数のお客様環境で実際に本番稼働しているAWSシステムを構築しています。実際に構築、運用して得たノウハウがあります。そのような知見は、他社の構築案件でも大きく役立ちます。

こういった生きた知見は色々なお客様にも感謝されますし、学習だけでは得られないこのような情報は今後もきっと重宝されるでしょう。

ある1社で得た知見はその会社に留めるべき、という意見もあるかもしれませんが、私としては積極的に他社でも活用し、(ブログ等で)公開もしたほうが良いと考えています。AWSの技術的な情報は公開されているものなので、その活用方法は公開してより色々な人に活用してもらったほうが良いと思っているからです。

Well-Architected レビューの実施

AWSにはWell-ArchitectedフレームワークというAWS活用のベストプラクティス集があります。NRIネットコムもWell-Architectedパートナーとして認定されており、このフレームワークに沿ってアドバイスが可能です。

たとえば以下のようなアドバイスをすることになります。

  • 障害に耐えられるよう、リソースは複数のAZに配置しましょう
  • AWSアカウント内の不正イベントを検知できるようGuardDutyをONにしましょう
  • IAMユーザーにはMFAを使用しましょう
  • AWS内のリソースは、アクセスキーではなくIAMロールを使用しましょう

レビューを実施してこのような情報を初めて知る方も多いです。

また、これらの項目を理解して実施されている方もいますが、改めてレビューすることで安心感を持っていただけることもあります。

研修プログラム、学習方法の提供

お客様が自分たちで学習できるよう支援することもあります。AWS公式のトレーニングも多くありますが、NRIネットコムオリジナルで提供している学習プログラムもあります。

我々が提供するプログラムは、我々の現場で得た知見を使ったプログラムとなっています。また、お客様の業務内容を把握していることも多いので、その状況に合わせたカスタマイズも可能です。AWS公式とは違う、独自性を持ってよりお客様の実態に合ったトレーニングを提供できると良いと考えています。

また、AWS公式のトレーニングも情報量が多いので、私が学んできた経験からおすすめのトレーニングや学習方法を紹介するということもあります。雑談ベースの場合もありますが、重要かなと思います。

お客様の業務を理解して技術を活かす

ここが我々最大の強みと考えています。お客様の業務内容やビジネスの課題を徹底的に研究して整理することも多いです。長年同じお客様を担当している場合は、お客様より詳しくなることもあるかもしれません。

単にモダンな技術を使用するだけではなく、技術を活かしてお客様のビジネスを成功に導く必要があります。そのためにはまずお客様のビジネス状況や課題を理解しなければなりません。課題を理解し、AWS技術を活かして課題の解決に導くのが我々AWSパートナーの役割かなと思います。

組織のスキル状況や納期によっても使用するAWSサービスは異なってくるので、お客様の状況に合わせて適切なAWSサービスを選択するということが求められます。

まとめ

AWSパートナーに求められるスキルは、「深い業務知識と高度なAWS活用方法」かと思います。最終的にはお客様ご自身でAWSを活用できるようになるのが理想です。すべてのお客様が活用できたら「AWSパートナーの仕事無くなるじゃん」となりそうですが、現実としてまだまだAWS活用に困っているお客様は多い状況です。

私も単なるシステム構築屋にならず、ビジネスの成功へ繋がるよう、意識してスキルアップしていきたいと思います。

何かあればNRIネットコムまでご相談ください!

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執筆者上野史瑛

Japan APN Ambassador 2020
AWSを中心としたクラウドの導入、最適化を専門に行っています。

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