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AWS認定試験対策本、コンプリートへの道

 こんにちは、佐々木です。 先日、AWS 認定データ分析 - 専門知識の対策本を出版しました。自身としては、6冊目の認定試験対策本です。

 現在のAWS認定試験が12個あるので、半分まで到達したことになります。ここまで来たら、全部執筆することに挑戦も良いかもしれません。そこで、残りの6冊について執筆の難易度と、執筆するとしたらどんな内容にするのか考えてみます。今後、認定試験対策本を全部書いてみようという人に対しての道標になれば幸いです。

AWS認定 クラウドプラクティショナー

 技術書で一番売れるのは、実は入門書です。そしてAWS認定試験の入門の位置づけにあるのが、クラウドプラクティショナーです。つまり執筆者として一番美味しいのが、この試験になります。また個人的には、初心者向けの本を書くのは嫌いではないです。そういう背景があるものの、既に日本語の対策本が何冊もあるので後回しにしています。
 対策本として考える上で重要なのが、クラウドプラクティショナーはAWS認定試験の中で唯一、技術者以外も受けることを想定して設計された試験であることです。そのため対策本を書くとしたら、個々の機能の説明は最小限に留めて、サービスの特徴の解説とそのサービスが必要とされた背景は何かという点と、それを使うことにより何が解決されるのかを中心にする事が重要です。ただし、そのスタイルにするとどうしても抽象的な話が多くります。抽象的な話は読んでいると、何となく解った気になるが実は解っていなかったという事態に陥りがちです。それをカバーするために、細かい単位で練習問題を入れるスタイルが良いのではないかと考えています。

AWS認定 デベロッパー アソシエイト

 実はこの試験、SysOpsと同時並行で書いていました。が、途中で試験の改訂が入ったことやSysOps本を優先させたために頓挫しています。一緒に書いてくれた人のためにも、どうにかしないとなと思っています。最近、試験のバージョンが DVA-C02に改訂されたこともあるので、再度調整するのも良いと考えています。
 アソシエイトレベルの試験は、ソリューションアーキテクト、SysOps、デベロッパーと3種類あります。ソリューションアーキテクトの場合は、コンピュートやストレージ、ネットワークといったサービス分野別に書くのが良いと考えています。一方で、SysOpsやデベロッパーについては、監視やデプロイ、リファクタリングなど、実施事項を中心にその中で利用するサービスとして書く方が良いと考えています。ソリューションアーキテクトは、ブロックを組み合わせてシステムを作るのが役割です。デベロッパーやSysOpsは、目的を元に逆算するのが理解しやすいという考えからです。この書き方は、他の専門知識の対策本と同じです。そういった意味では、デベロッパーとSysOpsは、専門知識寄りの試験ではないかと考えています。

AWS認定 ソリューションアーキテクト プロフェッショナル

 ソリューションアーキテクトのプロフェッショナル(SAP)については、書籍としてどういうアプローチの本にするか、まだ考えられていません。試験範囲自体は、ソリューションアーキテクト アソシエイト(SAA)と殆ど同じです。違いとしては、問われることの深さです。その深さをまともに向かい合って書くと、アソシエイトの倍くらいのページが必要になりそうです。あまり分厚いと、読む方にとって大変なので工夫が必要そうです。
 書き方の一つのアプローチとしては、問題集を中心とした試験です。アソシエイトの対策本を読んでおいて貰うという前提を置いた上で、より細かい部分の解説と問題を解くことを中心とした構成にするという方法です。あるいは、解説編と問題集編の2部構成にするというのもありかもしれません。
 しかし、自分としては認定試験の対策本であったとしても、試験に受かることだけを目的とした本は書きたくないです。書くのであれば、読んで学習することによりプロレベルの実力を身につけるキッカケとなる本にしたいです。そのためには、アソシエイトレベルとプロレベルの人間の違いがどういうところにあって、どういうものであればその差を埋める道標になるのかを掘り下げる必要があります。その分析は、まだできていません。今すぐ書く訳ではないので、じっくりやっていこうと思います。

AWS認定 DevOpsエンジニア プロフェッショナル

 今のところ日本でサッパリ出てくるという話を聞かないのが、DevOpsエンジニア プロフェッショナル(DOP)の対策本です。身の回りをみてもSAPを目指している人に比べて、DOPを目指す人が圧倒的に少ないです。DOPを取っている人は、12冠の過程で取るという人が圧倒的に多いように思えます。なぜこんな不人気なんだと不思議に思う試験です。個人的にはDOP-C01は、実務でもよく使うサービスや考え方が問われて実用的な良い試験だと思います。
 DevOpsエンジニアの対策本を書くとすると、わりとノリノリになると思います。DevOpsの流れの源流の一つとなるリリースの高頻度・高度化や、開発と運用を一体化したシステム開発の在り方、その背景となっているアジャイルの考え方は、今までずっと向き合ってきたテーマです。その辺りの解説から、AWSのサービスの紹介、実運用を見据えた設計の仕方などを解説するのが良さそうです。また恐らく比率が増えているであろうCDKなどについても、体系化して学ぶには良い機会ですね。最近、DOP-C02に改訂されたこともあり、出版社の皆様も検討始めているのかもしれませんね。

AWS認定 機械学習 専門知識

 これまで紹介した4冊については、自分の中で書くための方向性はある程度見えています。ここから紹介する2冊については、鬼門です。自分にとって執筆することの難易度が一番高いのが、このAWS認定 機械学習 専門知識です。機械学習の対策本として、どのように書けば有用かというのは解っているつもりです。しかし、自分が機械学習についての解説することのハードルが高いです。G検定の教科書を作るみたいなリクエストと同義だと捉えているからです。
 一応、試験範囲の内容については理解しているつもりではあります。実は2000年代半に、ひたすら自然言語処理を学び、ベイジアンネットワークやサポートベクターマシン (SVM) を使っての製品開発に携わってたことがあります。叩き上げの知識として、ある程度は機械学習についても理解しているつもりではあります。でも、やっぱりその道の専門家からのマサカリが怖いです。自分が理解していることが1としたら、専門家はその背景となること含めて100くらいの知識があります。そこを踏まえて読者のレベルに合わせて解説するというのが、技術書には必須です。
 もし執筆するとしたら、機械学習の専門家を招聘する予定です。幸いにして、それを書けるだけの知識を持った人たちとは繋がりがあります。後は自分を含めて書くという覚悟を持てるかどうかです。

AWS認定 SAP on AWS 専門知識

 最後に残るのがAWS認定 SAP on AWS 専門知識です。この試験、みんなに言われているように、かなり特殊な位置づけです。もしこの試験が、SAP on AWSではなくオンプレミスからのマイグレーションという位置づけであれば、特に苦もなく執筆しようとしたでしょう。でも実際には、試験名にあるようにSAP on AWSです。SAPの知識を持った上で、クラウドにマイグレーションをする技能・知識を問われる試験です。
 私はSAPの知識は、試験勉強で学習した範囲のみしかありません。実務での経験はないし、今後もないでしょう。なのでSAPの専門家を探してくる必要があります。こちらも心当たりはあるのですが、どちらかというとやる気が起きないのですよね。そこが一番の課題です。一方で、SAP on AWSは、マイグレーションの知識やWell-Architectedな設計とは何かを問うという意味では、良い試験にまとまっています。だからこそ、悩ましいですね。

さらなる難題

 残りの試験を書く上で、執筆のポイントとなる点については整理できると思います。しかし、認定試験対策本の執筆コンプリートを目指す上で、それ以上の難題があります。それは、新しい試験の追加と試験の改訂です。
 新しい試験の追加は2年に1度くらいの頻度なので、そこまでは、大きな難題にはなりません。それよりも大変なのが既存の試験の改訂です。ここで、今までの試験の改訂の履歴を見てみましょう。

試験名 バージョン 正式版公開日
クラウドプラクティショナー CLF-C01 2018年4月
クラウドプラクティショナー CLF-C02 2023年9月
ソリューションアーキテクト アソシエイト PR000005 2013年6月
ソリューションアーキテクト アソシエイト SAA-C01 2018年2月
ソリューションアーキテクト アソシエイト SAA-C02 2020年3月
ソリューションアーキテクト アソシエイト SAA-C03 2022年8月
デベロッパー アソシエイト PR000029 2016年6月
デベロッパー アソシエイト DVA-C01 2018年11月
デベロッパー アソシエイト DVA-C02 2023年2月
SysOps アソシエイト PR000022 2016年11月
SysOps アソシエイト SOA-C01 2018年11月
SysOps アソシエイト SOA-C02 2021年7月
ソリューションアーキテクト プロフェッショナル PR000030 2016年5月
ソリューションアーキテクト プロフェッショナル SAP-C01 2019年5月
ソリューションアーキテクト プロフェッショナル SAP-C02 2022年11月
DevOps プロフェッショナル PR000075 2016年10月
DevOps プロフェッショナル DOP-C01 2019年3月
DevOps プロフェッショナル DOP-C02 2023年3月
セキュリティ SCS-C01 2018年11月
セキュリティ SCS-C02 2023年7月
ネットワーク ANS-C00 2018年11月
ネットワーク ANS-C01 2022年7月
データベース DBS-C01 2018年9月
データ分析 DAS-C01 2019年8月
機械学習 MLS-C01 2018年11月

※公開日については、可能な限り調べましたが、一部不正確なところがあります。大体の目安の情報としてください

 一番短いソリューションアーキテクト アソシエイトについては、大体2年くらいの頻度で改訂されています。他のアソシエイトやプロフェッショナルは3〜4年程度。専門知識も4〜5年の頻度です。これを考慮するとどうなるのか?
 そうです。だんだんと改訂版の対応が増えてきます。今だと年に1冊くらいだったのが、徐々に2冊3冊と増えてくるようになります。12冊まで出すと、ほぼずっと改訂版対応をしていることになります。改訂版を出さなければいいのではという意見もあると思いますが、編集者から改訂版を出しましょうという矢のような催促をどこまで放置できるのか、鋼の心が必要となります。

まとめ

 AWS認定試験の対策本を書く上での、考慮ポイントや関門について書いてみました。これから認定試験の対策本を書く際に、ぜひ参考にして頂ければと思います。そんなやつ、あまりいないよと言うツッコミが聞こえてきそうなので、今回の記事はそろそろ終わりにさせて頂きます。この本を優先してというのがあれば、参考にします。ぜひ、ブックマークやTwitterで、どの試験の対策本が欲しいのかコメントください。

執筆者 佐々木拓郎

Japan AWS Ambassadors
ワイン飲みながら技術書を書くのが趣味なおじさんです

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