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Web担当者が考慮すべき自身とユーザーのリテラシー

本記事は  Designers Week 2022春  8日目の記事です。
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はじめに

はじめまして。Webディレクターの大坪と申します。 私は入社後、主に通信業界のサービスサイト、キャンペーンサイト等、一般消費者向けのサイトを中心に制作進行やワイヤー制作などのディレクションを進めてきました。

...と早速ですが、先ほど「一般消費者」と一言でまとめましたが、みなさんはご自身が担当しているWebサイトのユーザーのことを、正しく理解されていますか?もう少し嚙み砕くと、「サイトの担当者 = サービス内容やWebについて一番リテラシーの高い」あなたは、何も知らないユーザーが利用したときに不親切に思わない設計をできているでしょうか?

この疑問は私自身のことを振り返った時に考えたことです。 私は入社前までは社会学を勉強していた文系大学生で、Webのリテラシーはゼロに等しい状態でした。(くろーむ?ぶらうざ?レベルで、周りが何を言っているのか分かっていない状態でした。)そこから素敵な上司や同期に恵まれて、勉強しながら仕事に揉まれていくうちに、気がつけば業務の幅も広がっていました。

ただ、Webや担当案件への理解が深まっていく一方、大学生の自分に理解できるようなページを作成できているのか疑問に思うようになりました。一度知ってしまうと知らない状態に戻れないように、高リテラシーの人と低リテラシーの人との間には見えない壁があります。 いつしかこの壁ができていたとしても、それに気づいていない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本来であれば毎回ユーザーテストをできればベストですが、予算的にもスケジュール的にも厳しいプロジェクトが多いかと思います。 そこで、当時の自分やWeb、サービスに慣れていない方にも理解しやすいサイトを設計するために、元々リテラシーが低かった人間としてUI設計や運用時に意識している3つのことをこれから記載していきます。

1. ユーザーと同じ言葉を使えているか

まずは同じ言葉を指していても、知識の有無で思い浮かべる想定、景色が異なる場合があるということです。例えばみなさんは「お城」という言葉から何を想像するでしょうか。

左のような日本のお城を想像した方もいらっしゃれば、右の西洋のお城を想像した方もいるでしょう。また、左の写真を指してお城と答える方も多いかもしれないですが、これはお城に詳しい人間からすると「天守閣」という建造物であり、正しくはお城ではないと捉える方もいるでしょう。

このように知識の有無で認識が異なる言葉を使ってしまうと、言葉を使った側と受け取った側で頭に浮かべるものが異なり、ユーザーを正しく導くことができなくなります。

また知識ではなく、感覚の違いで認識が異なる言葉もあります。 キャンペーンサイト等でよく使われがちな「お得」や「贅沢」という言葉、これらはユーザーの感覚によって言葉通りに感じるかどうかが変わってくるにもかかわらず、もはや慣習のように使われているように感じます。

例えば特典で50ptがプレゼントされるキャンペーンがあった場合、これを「お得だー!」と感じる人がどれほどいるでしょうか。お得という言葉につられて画面遷移をした結果、がっかり感を与えてしまうのはストレスになってしまいます。その場合は、「このステップだけでポイントがもらえます。」と書いた方がストレスは少ないかもしれません。

このように、普段使っている言葉でも人によって認識が違うものについては、改めて精査して違う言葉に変える、またはイラストやツールチップを挿入することでイメージを補足してあげる必要があるでしょう。

2. ユーザーを迷子にさせていないか

例えばあなたがスマホを購入したいと考えていて、サービスサイトで商品を選んでいるとします。 恐らくそのサイト内ではそれぞれのスマホや期間限定のキャンペーンが盛んに紹介がされていると思います。そしてサイト内の情報を参考にスペックや価格を比較検討したあとに、購入手続きのページに至ります。しかし、その購入手続き中や購入後に「事前にエントリーしておくと〇〇もプレゼント!」という情報を目にして、購入し直す羽目になったとします。(私は何度かこれに遭遇して、今じゃないやろ!と思ったことがあります。) 正しい導線であればユーザーの購買意欲向上に寄与するはずが、これでは全くユーザーのためになっていません。

サイトの管理者はその商品に紐づくキャンペーンや値引き情報等を詳しく把握している分、今のサイトのつくりがどこか当たり前になっている部分があります。これはサービスサイトに限らずどの種類のサイトでも、毎日見て慣れてしまったがために、見落としてしまうユーザーの躓きがあると思います。 特にサイト立ち上げから時間が経ち、日々コンテンツが追加されているサイトでは、いつの間にか想定していた導線ではなくなっていた場合もあるかと思います。そのようなサイトほど今一度カスタマージャーニーを考えてみたり、同僚にサイトを触ってもらったりしてみた方がいいと思います。

3. ユーザーの感情を理解できているか

サイト設計時にあまり考慮されていないのがユーザーの感情ではないでしょうか。 例えばお問い合わせページへ訪問した時のユーザーを想定したとします。お問い合わせページに訪問する目的は「わからないことを解決したい!」であり、その時の感情は恐らく他のページを訪問した時よりもナーバスではないかと推察されます。

サイト管理者は、サイト内のサービスにもサイトの使い方にも詳しいですが、そのどちらにも詳しくないユーザーにとって、項目数の多いお問い合わせ内容から自分の課題解決に繋がる項目を見つけるのは困難です。そのため、一覧性を高めたりカテゴリーごとに絞り込みができたり、他のページよりも気遣いのできるページ構成にする必要があります。

また、近ごろ導入するサイトも増えてきているAIチャットボット、これも精度が低い上に回答まで時間がかかるような場合、ユーザーの感情を逆なでしてしまう可能性があります。そのような場合には、ユーザーがナーバスな状態で触れるページにはあえて導入しないようにすることも検討した方がよいでしょう。

ページを作成するにあたり使いやすさ、わかりやすさの観点は重視されていると思います。それに加えてそのページを利用するシーンのユーザーの感情や意思についてもあわせて考えることが、より一層ユーザー目線に寄りそうための助けになるでしょう。

おわりに

以上、Web担当者が考慮すべきポイントを3点に絞って述べてきました。ここ最近ではUI/UXの重要性は広く認識されてきているように感じます。Web担当者の方々もそれぞれの立場でUIについて検討する場面が多いのではないでしょうか。 ただ、リテラシーの高い方がユーザーに寄りそったUIを設計するには、いくつか突き当たる壁があるものだと思われます。その際にユーザーの言葉や感情、記憶やイメージなど、体験について事細かく考えてみることが助けになるのではないかと思います。みなさまの運用中のサイトについて、少しでも改善のヒントになれば幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました。