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SIer勤めの僕が考えたエンジニア生存戦略

本記事は  【Advent Calendar 2024】  11日目の記事です。
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こんにちは、越川です。昨今の技術革新により、私たちの生活はますます便利になりました。しかし、こうした技術の進歩に伴い、私たちの仕事が将来奪われてしまうのではないか?という話も良く聞くようになりました。

これはエンジニアである私たちにとっても他人事ではなく、エンジニアの仕事も将来的に生成AIなどに代替されるのではないか?という類のコンテンツは増えてきたかと思います。

そこで今回は、SIerの中でエンジニアとして働く私が、今後、エンジニアに求められるものについてまとめてみようと思います。

なぜ今、生存戦略を練る必要があるのか

生成AIの進化は目覚ましく、音楽を即興で作成してくれたり、アプリケーションを自動で作ってくれたりと、今や様々な種類の生成AIがあります。

こうした、生成AIの活用によって、実際の業務スタイルも大きく変わって来たのではないでしょうか? 分からないことを気軽に聞けるようになったり、成果物の壁打ちができるようになったりと、正に私もこのブログを書く上で生成AIを活用しています。

こうした生成AIの台頭により、単純な仕事やミスが許されないような細かいタスクは、生成AIに代替されていくと考えています。

というのも、そういった作業は、機械の方が得意だからです。私自身、細かい作業が苦手なので、これは常に感じています。人間である以上、ヒューマンエラーは避けられません。

そのため、単純作業や注意が求められる仕事は生成AIに任せ、人間はもっと別の領域にパワーを注ぐべきです。このような状況を踏まえ、今後エンジニアがどのように振る舞うべきかを考える必要があります。

どのようなエンジニアが求められるのか

では、私たち人間はどこに力を注ぐべきでしょうか?それは、現時点の生成AIでは解決できない、より抽象度が高く複雑な仕事です。

特に、様々な要素が絡み合った事象を俯瞰的に捉え、その中で最適解を見いだせる人間が今後、価値を持つと考えています。

実際にプロジェクトを進める上では、様々なステークホルダーや業界事情、各チームメンバーの属性など、複数の事象が絡み合います。それらを総合的に捉え、あらゆる角度から物事を見て最適解を導き出せる人が市場価値的にも高くなっていくのではないでしょうか?

そのためには、技術的なスキル(ハードスキル)はもちろんですが、より抽象的で言語化しにくいスキル(ソフトスキル)の重要性も一層高まっていくと考えています。ソフトスキルについては過去のブログで詳しく述べていますので、ご興味のある方はご覧ください。 tech.nri-net.com

今回は、このような抽象度が高く複雑な仕事をする上で、個人的に重要だと思うマインドセットについて書いてみようと思います。

重要なマインドセット

エンジニアと一括りに言っても様々な種類が存在します。何か特定のエンジニアについて述べるというよりは、個人的にこういうマインドセットがあまねくエンジニアに求められるのかな?という観点で5つほどピックアップしてみました。

1.ラーニングゾーンに身を置く

皆さんはコンフォートゾーンという言葉を聞いたことがありますか?これは、ストレスや不安を感じず、心理的に安全で居心地の良い領域を指します。

コンフォートゾーン以外にもラーニングゾーンとパニックゾーンというものがあります。ラーニングゾーンは未知の領域を指し、パニックゾーンはストレス過多で何も考えられない状態を指します。この3つのゾーンの中で、人が最も成長するのはラーニングゾーンだと言われています。

ラーニングゾーンの特徴は、一定のストレス負荷がかかるということです。ストレスフリーで仕事ができれば望ましいですが、それでは成長が見込めません。コンフォートゾーンは快適ですが成長の機会を逃しやすい、また居心地が良いため漬かりやすい、いわゆるゆでガエル状態になりやすいゾーンです。

成長するためには、未知の領域に踏み込むことが必要不可欠です。不慣れなことをするため一定のストレスがかかりますが、この状態が最も成長する状態です。変化の激しい時代には、自ら積極的にラーニングゾーンに足を踏み入れる勇気が必要です。

補足すると、パニックゾーンに長期間いるのは健全ではありません。職場としては、常にラーニングゾーンになるような環境作りや仕事の振り方をし、何かあればすぐにコンフォートゾーンに戻れる状態を作ることが重要です。

ラーニングゾーンは慣れていくと、やがてコンフォートゾーンになります。そうすると、全体で見た時にコンフォートゾーンの領域が広がっていきます。そうして、またラーニングゾーンの領域を拡大していくんですね。自分の慣れ親しんだ領域を広げつつ、更に未知の領域に入って行くというマインドが重要になります。

2.仕組みを作る側に回る

世の中には大きく分けて、仕組みを作る側と、その仕組みに従う2者に大別されます。希少価値が高いのは明らかに前者です。仕組み化とは標準化を指し、誰がやっても同じ結果になり、同じ品質が担保される必要があります。このような法則性を作ることは抽象度が高く、難易度も高いです。

仕組み化を進めるためには、常にあらゆる事象に対して問題意識を持ち、どうすればもっと良くできるかというマインドを持つことが重要です。つまり、課題を発見する力が求められます。変化の激しい時代において、時流を捉えて適応するためには非常に重要なスキルです。

既存の仕組みに乗るのではなく、その仕組みを改善し、必要に応じて新しい仕組みを作ってより効率化する。このようなマインドセットは今後さらに重要度を増していくと考えています。

3.問題解決を楽しむ

技術は日々進化し、その選択肢は加速度的に増えています。選択肢が増えると、それに伴い問題も増えていきます。

技術的に問題ないと思っていたら、思わぬところでハマったり、逆に技術的には問題なくても社内のセキュリティ事情でNGになったりすることもあります。選択肢が増える世の中では、問題解決の頻度や難易度が上がっていくでしょう。

このような状況で重要なのは、問題解決を楽しむことです。また問題が起きた。。と毎回思っていては、それ以降、太刀打ちできません。むしろ、問題は起きるものだと捉え、ある種のゲーム感覚で処理していく方が、かえって良い答えが出てくるのではないかと思います。

4.ドメイン知識を身に着ける

ドメイン知識とは、特定の領域に関する知識を指します。例えば、建築業界のDXを支援するには、建築業界の知識が不可欠です。

DXのような抽象度の高い仕事が増えている昨今、顧客のドメイン知識を深く理解することが重要です。技術的な観点だけでなく、ビジネスサイドでの最適解を見つけるために、顧客と共にソリューションを考える必要があります。

また、ドメイン知識は社内においても重要です。エンジニアであっても、社内の稟議や手続きについての知識は必要です。

私の会社では、エンジニアがプリセールスを行うことがあります。提案をする際には、与信判断や決裁手続き、契約署名の方法など、様々なプロセスを理解する必要があります。これらの契約の流れを知っているだけでも、社内でも大きなアドバンテージになります。

5.好きこそ物の上手なれ

これはエンジニアに限った話ではないのですが、今後は好きで没頭できるものを見つけることが大事だと思います。好きという感情は、最もローコストで自分を成長させてくれます。

何かをする上で無意識に行動してしまい、誰かにやれと言われなくても、気付いたら調べていた、やってしまった、そんな状態を指します。

よくエンジニアは休日も自己研鑽すべきか?というトピックが議論になりますが、そもそも好きで没頭してしまう人にはこのような概念がありません。誰かにやれと言われなくても、勝手にやってしまうからです。

何時間勉強すればいいのか?どれくらいの量を勉強すればいいのか?といった「〇〇すべき」という概念がないのです。

純粋に考えて、このようなマインドで仕事をしている人と、「いやだなぁ、勉強しないとなぁ」という人では、雲泥の差が開きます。「自分に無理を強いて頑張らないと無理!!」という人は、好きでやっている人には敵いません。

一定期間は無理をして凌ぐことができても、それは時間の問題でいずれ限界が来ます。ですから、自分が楽しい、もしくは得意だと思える分野で勝負することが重要だと思います。

また、情報過多の世の中では、情報を活用できる者とそうでない者で大きな差が開いていくと思います。

私もエンジニアとして毎日情報のアップデートを追っていますが、毎日おびただしい量の情報が発信されています。

それはクラウドプロバイダーのようなベンダーが公開する情報もあれば、個人が発信している情報など様々です。

こういった情報にアンテナを張るという観点でも、やはり好きという感情が重要になってくるのではないでしょうか。

さいごに

生成AIによって仕事が奪われるという脅威論が広まっていますが、個人的にはむしろどんどん活用して自分自身が楽をし、効率的に仕事を進めていけば良いと思っています。

その分、自分にしかできない領域によりパワーを注いでいけば良いのかなと思います。逆に言うと、そういった領域を開拓もしくは自認する努力も今後は必要になってくるかもしれませんね。一人でも多くの方の参考になれば嬉しいです。

執筆者越川

インフラエンジニアで主にAWSを取り扱っています。


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