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    ミニユーザビリティテストを一人で回してみたお話

    はじめに

    こんにちは!社会人3年目の小澤です。
    前回の記事からおよそ2年が経ちましたが、相変わらずミッフィーが大好きです。

    この1年半は、保守・運用案件やリニューアル案件に携わってきました。
    お客様へ提案をする機会も増えてきましたが、その中で改めて重要だと感じているのがまずリサーチすることです。

    ユーザーの使いやすさや満足度を軸にしたプロセスである人間中心設計(HCD)でも調査や検証といったリサーチが重視されるように、現状の問題点をきちんと洗い出すことは提案の精度に直結します。

    人間中心設計(HCD)の4つのプロセス
    引用:https://tech.nri-net.com/entry/hcd_specialist_exam

    理想を言えば、実際のユーザーを対象にユーザビリティテストを実施して問題点を抽出したいところです。しかし、ユーザビリティテストは専門家のサポートがないと実施が難しい面があります。私も学生時代にユーザビリティテストを実施したことがありますが、所属教授の多大な支援を得てなんとか実施した経緯があります。また実務では、調査にそこまでの時間をかけられないことも多いと思います。

    そこで今回は、私が実務の中で一人で回したミニユーザビリティテストのステップを、そのまま共有したいと思います。ユーザビリティ評価の代表的な手法からエッセンスを取り入れた、一人で回せるステップをご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

    実施したミニユーザビリティテストの目標とステップ

    今回の調査は、対象サイトから網羅的に問題点を抽出することが目標です。

    ここでの網羅的とは、一つのコンテンツや機能だけに偏らず、サイト全体を多面的な観点で評価することを指します。ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン氏が示すユーザビリティの5要素(学習しやすさ、効率性、記憶しやすさ、エラー発生率、主観的満足度)に基づき、サイトの挙動や操作性、目的の情報に辿り着くまでの導線設計といった「使いやすさ」の観点に加え、見出しや要約、コンテンツの視認性といった「コンテンツの分かりやすさ」も評価していきました。

    今回の調査は以下の3ステップを、パソコンとスマートフォンそれぞれで実施しました。 それでは、各ステップの詳細をご紹介していきます!

    ステップ1:自分を初見ユーザーと想定してサイトを触り、直感的に気になった点を洗い出す

    まずは、自分を初めてサイトを訪問した人と仮定して、サイト全体をざっと眺めます。ユーザーの属性は自分自身でOKです。ただ、サイトに関する既存知識や情報は意図的に忘れるようにしてください。

    ここで今回テストを実施したサイトについて軽くご紹介すると、私が半年ほど保守運用していたサイトで、およそ1年前に全面リニューアルが行われました。そのリニューアルにも参画していたため、仕様や挙動もよく知っています。しかしこのテストでは、そうした知識は置いておいて、初めてこのサイトを見た人はどう思うか?を常に意識してサイトを操作します。

    さらに、自分が頭の中で考えていることを出来るだけ声に出していきます。これは、ユーザビリティ評価の手法である思考発話法を模しています。思考発話法とは、ユーザーが行動しながら口にする考えを記録・分析することで、利用中の迷い・誤解・期待のズレから問題点を抽出する手法です。

    私がこのステップでよく喋っていたことは、こんな内容です。

    • こんなことをしてみたら、どうなるんだろう?こうなるのかな?
       └あ、そうなるんだ!思ってた動きと違う!
       └おー動いた動いた。
    • こういうことがしたいけど、どうすればいいんだろう?
       └こうやるのかな?いや違うな、、
       └こうか!出来たぞ。

    赤いテキストのような発話は、ユーザーが迷ったり混乱したりしているサインであり、ユーザビリティが低い部分。つまり、問題点として挙げられる部分になります。ステップ1では、自分がユーザー兼観察者として、声に出した内容を自分で分析していきます。パソコンでの確認に飽きたら、気分を変えてスマートフォンでも同じように実施していきます。

    ステップ1で見つかる問題点は、「ここが押せると思ったのに押せない」、「ポップアップと重なって表示が見えにくい」など、すぐに気づきそうな基本的なものが多いです。まんべんなく問題点を洗い出すという目標においては、こうした内容も大切です。可能な限りこの後のステップも、引き続き考えを声に出しながら行っていきます。

    ステップ2:具体的なユーザー像と状況を設定し、その立場でサイトを操作して問題点を抽出

    次は、具体的なユーザー像と置かれた状況をいくつか仮定し、自身がなりきってサイトを操作します。想定するユーザーは、サイトの主な閲覧者層から大きく外れないように設定してください。状況も同様に、そのユーザーが置かれがちな、あるあるな場面を設定します。
    例:電車内でスマホ閲覧、顧客提案に向けた事前調査、複数サイトを比較検討中など

    分かりにくいと思うので、架空の会社が運営しているブログを対象として説明します。この会社では、社員が業務利用している技術や知識をブログで幅広く発信しています。まるでネットコムブログのようですね。同業技術者への技術発信はもちろん、採用中の学生に向けて、会社に興味を持ってもらいたいという思いもあります。そんな目的で運用されているブログの1記事がこちらです。

    何も意識せずに記事を見ると、よくあるブログ記事だと思います。
    ではこの記事を、就職活動中で、沢山の企業サイトを見ている大学生「システムエンジニア AI」と検索して見つけたこの記事を読んで企業に興味を持ってくれたという状況を仮定して見てみてください。

    「ふむふむ、いいことを実践している会社だな。」と記事を読み終えた大学生。ページ末尾を表示した状態で「この会社、今年新卒採用してるのかな?」と思って画面をスクロールしても...
    「採用情報」へのリンクがありません。

    熱心な学生であれば、企業名で検索してくれるかもしれませんが、採用中の学生が会社に興味を持ってもらうためというサイトの目的を踏まえると、ページ下部の方に採用情報への導線があるべきですよね。

    かなり分かりやすいケースで説明しましたが、こんな風に具体的なユーザー像と状況を仮定し、それになりきってサイトを操作することで、ユーザーの行動や感情の流れを踏まえた問題点を抽出できます。こうして得られた問題点は、それがどう問題であるかが他の人にも伝わりやすいというメリットもあります。

    このステップは、ユーザビリティ評価の手法である認知的ウォークスルーの考え方に近いです。認知的ウォークスルーとは、ユーザビリティ専門家が、ユーザーになったつもりで簡単なタスクを実施して問題点を抽出する手法です。
    「ユーザビリティ専門家」と書きましたが、日常的にデジタルサービスに囲まれて生活している私達は十分評価者になれます。重要なのはそのユーザーになったつもりで、具体的な状況に置かれたと仮定してサイトを操作することです。自分と大きく異なる属性になりきるのは難しいので、具体的な状況も組み合わせて想像することで、その人が考えそうなことや取りそうな行動をよりイメージしやすくなります。

    ステップ3:生成AIに簡単なタスクを作ってもらい、タスクを行う中で問題点を抽出

    このステップは生成AIの出番です。ユーザビリティテスト用の簡単なタスクやユーザー像、状況を生成AIに複数作成してもらいます。ステップ2では自分でユーザーの状況を考えましたが、一人で想定できる状況には限界があります。生成AIは、自分では思いつかないタスクや状況を網羅的に出してくれるため、抜けや偏りを減らすのに役立ちます。

    AIが挙げてくれた中で、実際に採用したユーザー像やタスク、状況は以下のような内容でした。

    • 法人担当者として、問い合わせ窓口へ辿り着くまでのタスク
    • 見込み顧客として、企業の提供サービスの概要を見つけ、主要なポイントを理解するまでのタスク

    法人担当者や見込み顧客といったユーザー像や、企業の提供サービス概要を見つけたいといった状況は、自分では出てこなかったので、抜けや偏りを減らすことが出来ました。

    生成されたタスクはステップ2と同様に、想定ユーザーになりきって実施し、詰まった点や迷った点を問題点として挙げていきます。ステップ1と同様、頭の中で考えていることを出来るだけ声に出しながら操作すると、発見も多いです。

    まとめ

    今回の調査は、対象サイトから網羅的に問題抽出することを目標としており、合計7時間ほどで約15個の問題点を洗い出しました。抽出された問題点は特定の機能だけに偏らず、導線・表示・操作性・コンテンツの分かりやすさなど、サイト全体にわたってバランスよく抽出することができました。
    ご紹介した3ステップは、ユーザビリティ評価の代表的な手法からエッセンスを取り入れつつ、一人でも回せます。皆さんもぜひ実務で活用してみてもらえると嬉しいです。

    最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

    執筆者:小澤 佑花 ミッフィーが大好きな人。