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「対話」できていますか?

本記事は NRIネットコム Advent Calendar 2022 8日目の記事です。
🎁 7日目 ▶▶本記事 ▶▶ 9日目 🎄


こんにちは、林です。
早いもので今年も終わりですね。ということで、Advent Calendar 2022の8日目を担当します。
よろしくお願いします。


はじめに

前回、マネージャーウィークに投稿した記事で、アジャイル思考に必要な組織風土について簡単に触れました。

  1. 心理的安全性の確保
  2. 対話によるコミュニケーション
  3. 経験学習によるスキルとノウハウの習得

今回は、そのなかから「対話によるコミュニケーション」をテーマに書きたいと思います。


なぜ対話が必要なのか

人はみな、異なった考えを持っている。おそらく、誰もが頭ではわかっていることではないでしょうか。にもかかわらず、「みんな自分と同じように考えているはずだ。」「みんな自分の考えを分かってくれているはずだ。」と思ってしまうことはありませんか?

この ”はずだ” によるズレを解消するためのコミュニケーション手法が「対話」だと思います。似たような言葉として「会話」「議論」「討論」という言葉がありますが、以下のような違いがあります。

  • 会話
    • 意見を述べ合うことはなどはせず、ただ言葉を交わすことでコミュニケーションをとること。
  • 議論
    • 結論を出すために自分の意見を述べたり、相手の意見を聞いたりして論じ合うこと。
  • 討論
    • お互いが持つ異なる主張をぶつけ合い、どちらが正しいかを決めること。
  • 対話
    • 信頼関係を築くために、自分の意見を述べたり相手の意見を聞いたりして相互理解を深めること。

私は、チームで活動するなかで、メンバーがお互いの理解を深め、信頼関係を築くことをとても大切にしています。また、お互いの考え方の違いを知ることで、一人では思いつかなかったアイデアが生まれることもチームで活動する魅力の1つではないでしょうか。いまある意見から答えを選ぶのではなく、お互いの考えを知ることで新たな選択肢を共に創り出せる。対話にはそんな力があると思っています。

とはいえ、「では、対話をしましょう」といって簡単に対話ができるかというと、私はそういうわけではありませんでした。ということで今回は、対話をするにあたり私が意識してきたポイントを書き記したいと思います。


問題解決モードではなく、対話モードになろう

対話をするときに大切なことは、「対話モード」になることです。現場で仕事をしていると、日々発生するいろいろな課題を解決する必要があるため、「議論」や「討論」といった「問題解決モード」になりがちです。実際、私も気がつくと問題解決モードになっていることが多いです。

お互いの考え方を知り、相手を理解しようという場面において、問題解決モードで対話を始めたとします。すると、考え方の違いは良くないことだと感じてしまい、”正さねば(解決せねば)” という思考になってしまった。そんな経験が何度もありました。これでは対話は深まりません。

このような経験から、対話をするときはお互いの考え方の違いを理解し合う「対話モード」になれるよう、意識的に「対話をする場なのだ」と自分に言い聞かせるようになりました。1on1や採用面接の前は、特に「対話モード」に切り替えるよう意識しています。相手にも対話モードになってもらうために、対話を始める前に何かしらのルーティンを決めるのもいいかもしれませんね。


同感できないときは、共感を示すだけでもよい

対話を進めるうちに、「それはちょっと自分の考え方と違うんだけどなぁ。」と思うことはよくあります。そのような場面で、自分も相手の考え方に合わせる(同感する)必要があると考えてしまうと対話はうまくいきません。無理に同感すると、自分の考えを相手に伝えられなくなるからです。自分の考え方と異なるときは、「あぁ、そういう考え方もあるんですね。」と受け入れる(共感する)だけでよいのです。お互いが違いを受け入れる姿勢が大切です。

と、いうのは簡単ですが、実は「共感する(=違いを受け入れる)こと」は、私にとって対話を進めるうえで一番苦労したところでした。「共感はできるけど同感できなかったら、結局、理解してることにならないのでは?」という疑念が一向に払拭できなかったのです。

そんな疑念を抱えていた時に、私のアイデアに同感してる様子はないけれど全力で共感されたことで「なんだか理解してもらえた気がする。」と思える経験しました。そして、さらに対話を続けることでお互いに気づいていなかった新しいアイデアに辿りつくことができたのです。この経験から、私は「共感を示すだけでもよい」ということを受け入れられるようになってきました(まだまだ修行中の身です)。


見える景色(視点・視野・視座)を重ね合わせよう

立場や役割、経験によって見える景色は異なります。「なんで、あの人はあんなこと言うのだろう。」と思うこともありますよね(逆に、思われていることも同じようにあるはず)。ですが、その人から見えている景色だと、間違ったことを言っているわけではないということもあります。各自が持っている情報量による違いもあります。対話は、この違いをなくす(共有する)ことで、見えいる景色(視点・視野・視座)を重ね合わせていく行為でもあります。

これに関連して、『他者と働く』という書籍で「溝に橋を架ける」ための4つのプロセスというものが紹介されています。この書籍も大変おすすめですので、ぜひご一読を。

  1. 準備(溝に気づく)
    相手と自分のナラティブに溝(適応課題*1)があることに気づく
  2. 観察(溝の向こうを眺める)
    相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る
  3. 解釈(溝を渡り橋を設計する)
    溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る
  4. 介入(溝に橋を架ける)
    実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く

ナラティブとは、「立場や役割、経験によって異なる各人の解釈(物語)」を意味しています。つまり、この4つのプロセスが、まさに見える景色を重ね合わせることに繋がっていくのです。簡単に言ってしまえば「相手の立場になって考える」ということに行きつくのですが、これがなかなかできません。常に、全体観をもって相手が「何を考えているのか」「何を気にしているのか」を意識していきたいものです。


さいごに

以上、対話をうまく進めるために私が意識しているポイントについて書きました。少しでも皆さんのチームに対話の風土が広がるきっかけになればうれしいです。対話がうまくできるようになるために必要なことは他にもたくさんあると思います。私も日々実践を重ねながら、対話をチームビルディングに活かしていけるようになりたいです。

では、私が対話(≒問いかけ)をすることで目指したい「みたい、ミライを*2」記して終わりたいと思います。

問いかけることは「VUCA」の意味を、
不安定からビジョンへ(Volatility→Vision)、不確実から理解へ(Uncertainty→Understanding)、複雑から明瞭さへ(Complexity→Cleary)、曖昧から俊敏さへ(Ambiguity→Agility)
と変える。

問いかけることは、自身や他者の目に見えていないもの、気づいていないもの、隠されているものに形を与える。

問いかけることは、新たな可能性、新たな学び、自分自身と世界への新たな視点を獲得するための道をひらく。

優れたリーダーは、はぜ「立ち止まる」のか』P.162(一部改変)

最後まで読んでいただきありがとうございました。それではみなさん、ごきげんよう。メリークリスマス🎄🎅

*1:自分の考え方や周囲との関係性を改善することによって解決できる課題のこと。知識や技術的なもので解決可能なものは「技術的問題」といわれる。

*2:「みたい、ミライを」は、NRIネットコムのミッションです。https://www.nri-net.com/company/

執筆者林晋一郎

大阪でインフラ部門のマネージャをしています。

X(旧:Twitter):@shin16884

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