本記事は
【Advent Calendar 2025】
24日目①の記事です。
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23日目
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24日目②
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みなさん、こんにちは。林です。
アドベントカレンダー企画も、残すところあと2日となりました。毎日熱量の高い記事が続いており、私もいい刺激を受けています。そのバトンを受け取り、今日は、当社で働く社員はもちろん、同じSIer業界で日々奮闘しているエンジニアの皆さんに向けて、「AI時代における、SIerで働くエンジニアの仕事」について、マネージャ目線で考えてみたいと思います。
はじめに
最近、社内での会話や業界のニュースを見聞きしていると、「生成AIがコードを書く時代に、エンジニアは必要なのか?」「事業会社においてシステム開発の内製化が進む中で、SIerは不要になるのではないか?」といった、一見するとSIerの私たちにとって悲観的な話題を耳にすることがあります。
特に若手の皆さんの中には、これからのキャリアに漠然とした不安を感じている人もいるかもしれません。ですが、私はこう考えます。
「AI時代だからこそ、SIerで働くエンジニアの仕事はむしろ増えるし、その価値は高まる」と。
AIの登場で、エンジニアの仕事はなくなる?
皆さんは「ジェボンズのパラドクス」という言葉を聞いたことがありますか。
これは1865年に経済学者のジェボンズが提唱した、「技術の進歩により資源利用の効率が高まると、資源の消費量は減るのではなく、逆に増える」という逆説的な理論です。かつて蒸気機関が改良され、石炭を燃やす効率が劇的に良くなりました。そのため、当時の人々は「これで石炭の消費量が減る」と考えました。しかし結果はどうだったでしょう?
効率が良くなったことで、あらゆる産業がこぞって蒸気機関を使い始め、結果として石炭の消費量は爆発的に増えたのです。これを現代のIT業界、そしてAIに当てはめてみましょう。
- 資源 = エンジニアリング(開発リソース)
- 技術進歩 = 生成AIによるコーディングやテストの高速化・低コスト化
AIによって開発効率が上がれば、エンジニアの仕事は減るでしょうか?
いいえ、逆です。
これまで「コストが見合わない」とシステム化を諦めていた中小規模の業務や、ニッチな領域のシステム化、および、PoC(概念実証)案件の数が劇的に増えていくはずです。皆さんの周りでも、既にそういったことが起こっているのではないでしょうか。
また、DXの流れが加速していることにより、あらゆるビジネスの根幹がソフトウェアになりつつあります。そのような状況において、企業の内製化チームだけで全てのシステム化需要を賄うことは困難です。
効率化されればされるほど、大小あらゆる規模におけるシステム開発の「総量」は増え続け、私たちSIerの出番は形を変えて増え続ける。これが、マクロな視点で見た時の今後の方向性ではないかと考えます。
AI時代のシステム開発を成功に導く「人間力」
AIの活用が広がっても「仕事の総量は減らない」ということはお分かりいただけたかと思います。
では、SIerで働くエンジニアは、これまでのように仕様を決め、設計書を書き、設計書通りにコードを書いていればいいのでしょうか?
もちろん、答えは「No」です。
コードを書くスピードや正確さにおいて、私たちはAIに勝てなくなる日が来るでしょう(もう来ているかもしれません)。
私自身、エンジニアとしてこれまで多くのプロジェクトに関わってきましたが、その中でたびたび感じたことがあります。それは、「システム開発の成否は、技術力以上に『人と人との関係性』で決まる」ということです。
- お客様自身も気づいていない「本当の課題」を引き出す対話力
- 相反する意見を持つステークホルダー同士の利害調整
- 現場のユーザーが「これなら使いたい」と思えるような感情や現状業務への配慮
- 社内外関わらず、困りごとをみんなで解決しようとする姿勢
これらは、論理的な正解を導き出すAIにとって、苦手な領域です。
AIは「How(どう作るか)」を劇的に助けてくれますが、「Why(なぜ作るか)」「What(何を作るか)」を定義し、そこに関係者の「納得感」と「熱量」を込めたり、「合意」を形成したりするのは、依然として人が中心になります。
だからこそ、これからのAI時代は、この泥臭いとも言える「人間力」こそが、エンジニアにとって強力な武器になると信じています。
SIerで働くエンジニアが目指す姿
AIという強力なパートナーを得た今、SIerで働くシステムエンジニアは、これまで多くのリソースを費やしてきた「システム構築・運用」という役割から、活動の重心を「顧客ビジネスの共創」へとシフトさせる時が来ています。
私たちが目指していきたい新しい姿。それは、「技術と人間力の両輪で、お客様のビジネスを『共創』するパートナー」です。
- AIを使いこなして圧倒的なスピードでプロトタイプを作る(技術)
- お客様と膝を突き合わせて「本当にやりたいこと」を対話で引き出す(人間力)
- 内製化を進めるお客様とは「対立」ではなく「補完」の関係を築く(共創)
そう考えると、私たちの仕事はもっとクリエイティブで、もっと人間味のある面白いものになっていくはずです。
おわりに
技術の進化は早く、日々のキャッチアップに追われる中で、AIの実用化も進み「システムエンジニアとして、自分の居場所がなくなるのではないか」と、不安になることもあるかもしれません。ですが、未来を過度に恐れる必要はありません。今回お話しした通り、効率化の先には、まだ見ぬ膨大なニーズ(仕事)が待っています。
ただ、そのチャンスを掴むためには、私たち自身もアップデートし続ける必要があります。AIをベースとした、新たな価値を生むためのスキルアップやリスキリングへの意欲。その「学ぶ姿勢」さえ忘れなければ、これからの時代はチャンスに溢れています。プロジェクトを動かす中心にいるのは、これからも「AI」ではなく、情熱と技術を持った「人」なのですから。
私はマネージャとなり、開発現場の最前線で日々お客様と向き合うことはなくなりました。日々お客様と向き合うエンジニアは、目の前のことで精いっぱいになることも多いでしょう。だからこそ私は、長期的な目線で、技術だけではなくチームやお客様との「関係性」を深めることの大切さを伝え、人間としても成長できるような環境を作っていきます。まずは自分の手の届く範囲から。
この記事を読んでくださった皆さんが、それぞれの場所で「AI時代のSIerも悪くないな」と、前を向くきっかけになれば嬉しいです。
