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    新米プロジェクトリーダーが身に付けたい指示の技術

    本記事は  【Advent Calendar 2025】  23日目の記事です。
    🌟🎄  22日目  ▶▶ 本記事 ▶▶  24日目①  🎅🎁

    はじめに

    こんにちは、まだまだ新米でいたい永川です。
    とはいえ、立ち位置としてはそれを許してもらえず、最近は自分のタスクを持ちつつ、チームのマネジメントも任されるようになりました。

    いわゆる「プレイングマネージャー」と呼べるほど立派なものではありませんが、実態としてはそれに近い状況です。
    正直なところ、メンバーとしてもまだ分からないことは多く、マネジメントに関しては完全に初心者です。日々メンバーに助けられながら、なんとかやっています。

    そんな中でマネジメントについて悩むことも増え、自分なりに学んだことや、意識するようになったことが少しずつ出てきました。
    この記事では、それらを整理し、同じように悩んでいる新米プロジェクトリーダーの方に向けて共有したいと思います。

    指示の重要性

    自分のタスクを抱えながらチームのマネジメントも行う中で、痛感していることがあります。
    それは、「メンバーにどう指示し、どう仕事を任せるか」が、想像以上に重要 だということです。

    というのも、自分ひとりで全てを把握し、全てをやり切ることは現実的ではありません。
    もしメンバーにうまく動いてもらえなければ、仕事は回らず、プロジェクトリーダーや一部の優秀なメンバーに負荷が集中してしまいます。
    それはプロジェクトリーダーにとってもよくないですし、チームにとっても健全とは言えません。

    一方で、「どう指示を出せば、メンバーが自律的に動いてくれるのか」というのはなかなか難しいテーマだとも思います。

    私自身も、ちゃんと伝えたつもりでも、アウトプットを見てみると期待と違っていたことがあったり、逆に細かく指示しすぎて「自分でやったほうが早いやん」となったりしてしまうことも少なくありません。
    その度に、自分の伝え方が悪かったのか、任せ方がよくなかったのか、と反省しています。

    ゴールは「自律して動けるチーム」

    理想の状態はシンプルで、
    「メンバーそれぞれがゴールを理解し、自律的に動いてくれること」
    だと思います。

    ただし、現状は多くの場合、下記のような状態ではないでしょうか。

    • メンバーごとにスキルや経験のレベルが異なり、抽象的な指示で動ける人もいれば、逆に動けなくなる人もいる
    • 同じ指示でも、タスクの理解度に差があり、アウトプットの質に大きな差が出る
    • レベルの高いメンバーに細かい指示を出すと、やる気を削いだり、反感を買ったりしてしまう

    つまり、メンバーによって必要な指示の出し方は異なり、レベルに合わせた支援が必要 だということです。
    メンバーのレベルや特性に合わせた指示を出しつつ、少しずつ自走できるように成長を支援するのが、上手な指示だと感じています。

    指示の出し方を整理する考え方:SL理論

    指示の出し方を考える上で、参考になるのがSL理論(Situational Leadership Theory)です。

    SL理論とは、メンバーの状況(スキル・経験・自信)に応じて、リーダーの関わり方を次の4つに分けた考え方です。

    ① 指示型リーダーシップ(Directing)

    対象

    • 業務経験が浅い
    • 何をどう進めればいいか分からない状態

    指示の出し方

    • 作業内容を具体的に伝える
    • 手順・期限・判断基準を明確にする
    • 「なぜそうするのか」も併せて説明する

    この段階では、抽象的な指示は逆効果です。
    基本的な仕事の進め方を覚えてもらうことが最優先になります。

    ② コーチ型リーダーシップ(Coaching)

    対象

    • 基本的な作業はできる
    • ただし一人で作業を進めるのにはまだ不安がある

    指示の出し方

    • 方向性は示す
    • 選択肢を一緒に考える
    • 判断理由を言語化してもらう

    一方的に教えるのではなく、
    「考え方」を身につけてもらうフェーズです。

    ③ 支援型リーダーシップ(Supporting)

    対象

    • スキル・経験が十分にある
    • 判断力も育ってきている

    指示の出し方

    • ゴールだけ共有する
    • 進め方は本人に任せる
    • 要所で壁打ち相手になる

    ここでは「指示」というより相談に近い関わり方になります。

    ④ 委任型リーダーシップ(Delegating)

    対象

    • 自律して動ける
    • 結果に責任を持てる

    指示の出し方

    • 目的と制約条件だけ共有
    • あとは任せる
    • 結果をレビューする

    この段階が最終的なゴールです。

    大事なのは「レベルに合った指示」を出すこと

    振り返ってみると、指示がうまくいかなかった場面では、 メンバーのレベルに合っていない指示を出してしまっていたことが多かったと感じています。

    たとえば、「経験者だから大丈夫だろう」と思い、新しくチームに入ってきたメンバーに対して、 いきなり支援型リーダーシップに近い指示を出してしまい、結果的に後から多くの修正が発生したことがありました。

    逆に、支援型リーダーシップのレベルにあるメンバーに対して、 指示型リーダーシップのような細かい指示を出しすぎてしまい、 本来発揮できたはずの能力を引き出せず、無駄にコストをかけてしまったこともあります。

    実際には、支援型や委任型に切り替えたことで、 自律的に動いてくれるようになり、私自身もかなり楽になりました。

    指示がうまくいかなかったと感じたときは、 次の視点で振り返ってみるとよいかもしれません。

    • 今、このメンバーはどの段階にいるのか
    • その段階に合った指示になっているか

    この2点を意識しながら、少しずつ指示のレベルを上げていくことが、 結果的にチームの自律性を高め、仕事の成果も大きくしてくれると感じています。

    おわりに

    正直に言うと、私自身もまだ全然できていないです。
    変な指示を出してしまい、メンバーを混乱させてしまったこともあります。

    とはいえ、一人では仕事はできません。
    だからこそ試行錯誤しながら努力しています。

    この記事が私と同じく新しくマネジメントを任された人のヒントになれば幸いです。

    参考文献

    執筆者:永川陽大 インフラエンジニア