はじめに
こんにちは、クラウド事業推進部の今村です。
re:Invent期間中は毎日平均20キロ弱歩いていたので、タコス・ハンバーガー・ステーキ・ホットドッグ・ピザ・ドーナツの生活でもなんとか太らずに帰国できました。
今回はカリフォルニア州の失業保険、障害保険などの福利厚生プログラムを管理しているカリフォルニア州雇用開発局(以降、EDD(California’s Employment Development Department)) がオンライン失業申請業務を改善した事例の一部をご紹介します。
私は前職で中央省庁システムの業務に従事していたこともあり、アメリカの公共機関がAWSをどのように活用し業務を改善したのか気になったので聴講しました。
今はやりのAIや最新のAWSサービスを利用した構成ではないものの、2020年新型コロナウイルスのパンデミックを経験した公共機関が顧客体験を向上させようと活動した内容はとても聴きごたえがありました。
セッション概要
タイトル:
Driving transformation for California’s workforce
概要:
EDD ではサービス利用者と従業員の顧客体験を変革するための EDDNext(※1) という取り組みを行い、顧客目線での改善活動を実施している。
アメリカで最も人口が多いカリフォルニア州では、1/5の家庭で英語以外の言語が利用されている、かつ、Executive Order 内の言語の公平性の基準(※2)に沿うために、EDDNext の取り組みの一つとしてEDD サービスを様々な言語で利用可能にしている。
現在では英語のほか、スペイン語・簡体字中国語・繁体字中国語・ベトナム語など、カリフォルニア州で利用されている上位8言語での利用が可能。また、重要なドキュメントも多くの言語に翻訳している。
多言語化対応ではAmazon Connect や Amazon Lex を活用し、音声通話・ライブチャット・チャットボット機能を搭載したことで、顧客満足度が2022年から11%アップ
※1 EDDNext
We’re updating online applications, contact centers, the claims process, policies, procedures, and forms, to make your experience easier and faster.
※2 Executive Order 内の言語の公平性の基準
Under the order, the California Health and Human Services Agency and Government Operations Agency will also develop recommendations to improve language and communications access to state government services and programs.
Integrated Contact Center - Amazon Connect
新型コロナウイルスのパンデミック時、それまで58,000件/週程度だった申請件数が1,000,000件/週を超え、オンラインでも電話でも申請できず紙の申請書が大量に届き、とても大変だったそうです。 あの時はどの国も大変だったんですね。。
そんな20年間使い続けたスケール機能すらないシステムを刷新し、2022年からたった2年で顧客満足度を11%アップさせました。
ここでは、刷新したシステムの中でも Amazon Connect を活用した障害保険の問い合わせに関する音声通話フローをご紹介します。
- ユーザーから電話を受け付け、言語チェックを行います。 言語チェックでは電話番号と言語設定が紐づいていれば別システムと連携しユーザーに適した言語で通話が開始し、言語設定がされていない場合は音声ガイダンスに従って変更可能なようです。
- Welcome prompt 直後の Rundom number generator では乱数を生成&再生し、それをユーザーに入力させ、スパムコールを除外します。
- Main menu に移動したタイミングで、「How can I help you 」とユーザーに問いかけます。
- ユーザーが話した内容は自然言語理解サービスの Amazon Lex を利用することでインプットされます。
- その後、社会保障番号や生年月日での認証を行い、問い合わせ内容に対する回答を行います。回答に利用される情報はDynamoDBから取得します。
- 最後にユーザーからの問い合わせを別のサービス(人間)に転送するかどうかを確認して終了となります。
- 通話記録や、通話までの待ち時間、対話型音声応答で解決できなかった場合の転送先などの情報が CloudWatch を経由した S3 に保存されます。
このシステム運用開始後、電話問い合わせの2/3はオペレーターを介さない対話型音声応答のみで解決できるようになりました。さらに、電話をかけた際に待ち時間が発生したとしても、顧客が都合のいい時間にEDDからかけ直す仕組みをつくったことで、顧客体験のみならず従業員の業務効率も向上させたようです。
Amazon Connect とは
Amazon Lex とは
AWSブログの類似記事
AI を活用した IVR(Interactive Voice Response) システムと IVA(Intelligent Virtual Assistant) 、 Amazon Connect を統合し、企業が顧客体験をさらに向上させる方法についてアーキテクチャ付きで解説しています。
最後に
これまで私は、Amazon Connect も Amazon Lex も名前は知ってるけど、くらいのレベルだったので、どのように利用されているのかデモンストレーション付きで紹介してもらったおかげで使い方のイメージが簡単にわきました。
また、「カリフォルニア州 × AWS」というアメリカ同士の組み合わせではありますが、重要な個人情報を取り扱う公共機関でもAWSが利用され、柔軟なシステム開発が行われていることはとても新鮮でした。
EDD では2022年に顧客調査を行い、顧客体験に重点を置き、かつ社会に最も影響を与えるプロジェクトを優先してプロジェクトを推し進めてきたようです。
2年で一つの公共システムをAWSに完全移行し、今後もさらなる顧客体験の向上のため開発を進めているそうで、便利で優れたシステムを提供したいという熱意がとても伝わりました。
ふと、日本のガバクラってどうなったんだけ?と気になったので調べたところ、こんな記載を見つけました。
ユーザー体験を向上させ、世の中の状況の変化に応じて情報システムを柔軟に変更できるような現代的なアプリケーション開発にとって、柔軟かつ迅速にITインフラを構築することは必須となります。
日本のガバクラも今後どうユーザー体験を向上させていくのかとても楽しみです。