はじめに
来週はラスベガスでre:Invent 2024が開催されますが、今回は2024年9月に参加してきたシアトルのAWS Ambassador Global Summitについてお伝えします。
1日目のシアトル到着からThe Spheres見学、日本のAmbassadorsとのディナーまでの様子は下記記事でお伝えしました。2日目以降は本格的なセッションが始まり、最新技術やビジネストレンドについて多くの学びがありましたので、その内容をご紹介したいと思います。
セッション全体の傾向
昨年のAWS Ambassador Global Summitと比較して、今年特に印象的だったのは、ビジネス系セッションの大幅な増加です。昨年は技術的な内容が6割以上を占めていましたが、今年はビジネス系のセッションが約6割まで増加しました。
この変化は、Ambassadorの役割自体が大きく進化していることを示しています。従来のAmbassadorは主に技術専門家としての役割が期待されていましたが、現在は技術的な専門性に加えて、ビジネスリーダーやコミュニティビルダーとしての側面も重要視されるようになってきています。
セッションの内容を分析すると、5つの重要なテーマが浮かび上がってきました。
まず、最新技術の実践的応用です。昨年は概念的な説明が多かった生成AIやクラウドネイティブ技術について、今年は具体的な実装事例が数多く共有されました。次に、ビジネス価値の創出に関する議論が昨年の2倍以上に増加し、技術をビジネスの文脈でどう活用するかという視点が強調されました。
3つ目のテーマは、リーダーシップとソフトスキルの重要性です。昨年はほとんど触れられなかった内容ですが、今年は技術力だけでなく、チームを導き、効果的なコミュニケーションを行う能力の重要性が強調されました。4つ目は組織文化とイノベーションで、昨年よりも深い議論が交わされました。
最後に、グローバル視点とコミュニティ貢献の重要性が挙げられます。昨年から継続しているテーマですが、今年は世界中のAmbassadorとの交流を通じて、より実践的な議論が行われ、グローバルな視野を持ちながら、地域のコミュニティに貢献することの価値が再確認されました。
これらの変化は、Ambassadorに期待される役割の拡大を反映しています。技術力は依然として重要な要素ですが、それに加えてビジネス価値の創出能力、組織変革力、そしてグローバルな影響力が、これからのAmbassadorに求められる重要な要素となっています。つまり、クラウド技術の位置づけが変わったのではなく、Ambassadorがより包括的な役割を担うようになってきているのです。
主要セッションのハイライト
ここでは、AWS Ambassador Global Summitでのセッションに基づきつつ、一般的な業界トレンドや公知の情報を中心にご紹介します。具体的なセッションの内容はNDAにより公開できませんが、全体的な傾向や注目すべきポイントについてお伝えします。
効果的なキーノートスピーチの実践
ビジネスセッションの中で特に印象的だったのは、効果的なプレゼンテーションとキーノートスピーチについての議論です。技術的な内容を聴衆に分かりやすく伝えるためのアプローチとして、以下のような重要なポイントが共有されました。
- プレゼンテーションの最初が最も重要で、この時間で聴衆の興味を引き付けることが求められる
- 聴衆を理解し、適切な内容と構造を設計すること
- ストーリーテリングやメタファーを効果的に活用すること
- 真正性とインパクトのある話し方の重要性
私自身、プレゼンテーションは好きで、いくつかのポイントは認識していましたが、今回のセッションで提示されたフレームワークに沿って考えてみると、自分の中で足りていない部分が明らかになりました。特に、聴衆の理解とストーリーテリングについては、まだまだ改善の余地があると感じました。
以前のプレゼンで、資料の投影がうまくいかずに慌てていた時に、資料の内容に沿って聴衆にアンケートで手を挙げてもらったり、ゴールに関して少し冗談を交えたら、その後の話もかなり真剣に聞いてくれ、質問も多く寄せられた経験があります。この経験から、プレゼンテーションの最初がいかに重要かを実感しました。
これらの不足している部分をしっかりと生成AIでレビューし、今後のプレゼンテーションに取り入れていきたいと思います。
CI/CDの転換期:AWSサービスの今後の展開
もう一つの重要なセッションでは、AWSのCI/CDサービスの将来についての議論が行われました。先日発表されたCodeCommitとCloud9の新規利用停止のアナウンスに関して、グローバルでの反応が特に興味深い内容でした。既存顧客向けのサービスのみ継続されることに対して、特にCodeCommitについては、全世界的に大きな影響があり、多くのユーザーからサービスの継続性や信頼性への不満や懸念の声が上がっています。一方、Cloud9については、グローバルでの言及は比較的少なく、日本企業での利用が他地域と比べて多かったという可能性が示唆されました。
これらのサービスを長年利用してきた企業、特にCodeCommitを基盤としたCI/CDパイプラインを構築している組織にとっては、今後の移行コストや代替サービスの選定などは、大きな課題となっています。日本企業においては、Cloud9からの移行も含めて、より包括的な対応が必要となるかもしれません。
グローバルな学びと交流
Ambassadorコミュニティでの貴重な経験
今回のサミットでは、日本のAmbassadorと深い交流ができたことが特に印象的でした。技術的な議論はもちろん、人材育成に関する課題も共有し合いました。特に興味深かったのは、Builders Cardを使ったアーキテクチャ学習です。上司からのレビュー以上に、Ambassadorたちから細かく具体的なアーキテクチャレビューを得られる貴重な機会となりました。
テクノロジーを活用したグローバルコミュニケーション
今回のサミットでは、最新のテクノロジーツールを活用することで、英語でのコミュニケーションを大きく改善することができました。中でも以下のツールが特に効果的でした。
- Microsoft Translator:リアルタイムの翻訳機能により、セッションの内容をリアルタイムで理解することが可能に
- Otter:音声の自動書き起こし機能で議論内容を正確に記録・保存
- 複数人の会話も話者を区別して記録
- タイムスタンプ付きで後から参照可能
- Bedrock:
- スライド内の図表や画像をChat with Image機能で解析し、詳細な説明を生成
- Prompt Managementを活用し、会話ログから以下を自動生成:
- セッションのサマリー
- アクションアイテムリスト
- フォローアップ質問の提案
これらのツールを組み合わせることで、会話の文脈を適切に理解し、自然なタイミングでの反応や笑いも可能になりました。テクノロジーの支援により、言語の壁を越えた深いコミュニケーションを実現できたことは、大きな収穫でした。
サミットからの学びと今後の展望
技術とビジネスの融合がもたらす可能性
サミットを通じて特に印象的だったのは、次の内容です。
- Amazon Qを中心とした生成AI技術の急速な進化
- クラウドネイティブ技術の実践的な応用
- 効果的な情報発信とSNS活用戦略
Ambassadorとしての成長
このサミットは、私にとって以下の点で大きな価値がありました。
- APNの新しい取り組みへの理解深化
- グローバルなネットワークの構築
- 技術リーダーシップスキルの向上
- 継続的な学習の重要性の再認識
未来への展望
この経験を活かし、以下を目指していきたいと考えています。
- 最新技術とソフトスキルを組み合わせた、組織のAWS活用力向上
- 来年のAmbassador Global SummitでのLT登壇にチャレンジ
- 学んだ知見の日本のコミュニティへの還元