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    なぜ、AI活用はプロジェクトに定着しないのか

    長田です。AIの進化速度にあわせて再登場です。
    前回のブログはAIと向きあう人の話でしたが、今回はAIとのお付き合いについてです。

    生成AIの進化によって、仕事の進め方は変わってきています。
    ただ開発プロジェクトにおいては、「AIは使うと便利なのに、実際のプロジェクトではまだ定着できていない」と感じる人も多いでしょう。
    そして、AIを使って作られるものの品質はこれまでより向上したのか、というと、そんな実感もあまり無いようです。

    AIは使える。けれど、プロジェクトには定着しきれていない。今回はこのモヤモヤを掘り下げます。

    AIに仕事が奪われるのか、という問い

    ウェビナーやブログなどで、AIに関して取り上げられる話題も様々ですが、その中で私たち自身の将来像を問うものを多く見かけます。
    そう、「この仕事はAIに置き換わるのか?」という話です。

    開発プロジェクトにおけるデザインワークに限らず、どんな仕事であっても、特にホワイトカラーの現場の多くではAIが入り込んできていると思います。
    そんな現状ではあるので、「自身が受け持っている仕事は今後AIが行うのか?」といった関心が生まれるのは自然なことです。

    ですが、この問いには少し注意が必要です。この問い方では見えなくなるものがあるからです。
    なぜか。私たちが携わる開発プロジェクトという仕事はひとつの作業ではなく、複数のタスクが重なり合っているものだからです。

    「AIが仕事を奪うか、奪わないか」というのは、わかりやすく興味をひく一方で、論点を必要以上に単純化してしまいます。


    必要なのは「AI導入」ではなく「再設計」

    特定のタスクはAIととても相性が良いかもしれません。
    確かに、今のAIのレベルで十分なアウトプットが得られるタスクも多くあります。
    一方で上手くいかないタスクもあって、AIの支援があってもなお、人の関与の仕方が重要で、もっとAIの性能が上がれば解決する、といった類のものではなかったりします。
    これが認識できると、「この仕事はAIに置き換わるのか?」という単純な話ではないことに気づけます。

    今考えなければいけないのは、「この職業、職能が残るかどうか」「仕事が奪われるかも」ではなく、私たちが主体的に仕事を変えられるのか、ということです。
    つまり、実際のプロジェクトで、「何をAIに任せるとよいのか、何を人が担うべきなのか」という役割の再設計です。

    AI導入によって可視化されたUXデザイン

    AIを開発プロジェクトで活かすために重要になるのは、「そもそもこれは何を提供するための開発なのか?」という実際に関わる人たちの視点です。

    興味深いのは、これまでデザイン専門外の方には曖昧に捉えられがちだったUXデザインという工程を、AI導入を意図することによって掴みやすくなったことです。
    以前は「UXデザインとは画面遷移のこと」のようにざっくりと捉えられがちでしたが、要件の整理やワイヤー作成などと言った形で具体的にAIに任せようとすると、そのタスクや成果を、「パターン化、形式知化しやすい領域」「文脈理解や価値の定義が必要な領域」というように整理しやすくなったのです。
    これによって、UXデザインのプロセスが腑に落ちやすくなり、誰でもAIの適用を検討しやすくなりました。

    ユーザー視点が成果の質を決める

    UXデザインの中でどのタスクをAIに任せるかは、そのサービス設計やユーザー体験の質に影響を与えます。
    AIの特長をフルに発揮させて活用すべきタスクなのか、逆に人が強く介在した方がより良いアウトプットに繋がるタスクなのか。
    こうした見極めは、開発に携わる私たちがユーザー視点を持てているかどうかにかかっています。
    
 AIを導入し活用しても、その生成物がユーザー視点で適切にレビューされることもなくリリースしてしまえば、それはAIを使っただけの、どこかで見たようなもののコピーであり、ユーザー体験としては他との差別化を生みません。それはどこにでもある凡百なものになってしまう可能性さえあるでしょう。

    定着するAI活用の条件

    AI活用の定着を考える時、「AIが仕事を奪うか、奪わないか」という二択で捉えてしまいがちですが、ことUXデザインの視点からすれば、プロジェクトとしてどのようなユーザー体験を提供するのか、そのために人とAIの役割をどう再設計するのかが本質になります。

    AI活用が定着するかどうかは、ツールの性能や入力するプロンプトだけでなく、プロセス全体の中でその能力が正しく発揮させられるかどうかで決まります。
    その意味で、AI導入は技術の話であると同時に、業務設計〜体験設計の話と言えます。
    その設計ができるかどうかが、AI活用定着の成否を分けていくのでしょう。

    【ウェビナーのご紹介】

    本記事に関連して、5月29日にウェビナー『AIとの共創をUXデザインで高める』を開催いたします。
    AI導入における人とAIの役割分担、AIの活用から成果へとつなげるために必要なUX視点について、UXデザインの観点から解説します。

    ご興味、ご関心を持たれた方は以下よりお申し込みください。みなさまのご参加をお待ちしております。

    [ウェビナーは終了しました。ご興味のある方は下記URLよりお問い合わせください。]

    お問い合わせ | NRIネットコム(野村総合研究所グループ)

    執筆者:長田和之

    UI/UXデザイナー、人間中心設計専門家