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    Agentic AIが変えるシステムのモダナイゼーション

    はじめに

    こんにちは、小野です。AWS re:Invent 2025に参加してきました。
    普段はアプリケーションエンジニアとして既存システムをクラウド化する案件に携わっていることもあり、モダナイゼーションのセッションに参加してきました。
    本記事では、AIエージェントの登場によってモダナイゼーションの進め方がどのように変わりつつあるのかについて、セッションの内容をもとに整理していきます。

    セッション概要

    今回視聴したセッションでは、企業が抱えるレガシーシステムの課題と、それらをクラウドへ移行していく際に、AIエージェントがどのようにアプローチできるのかが、デモを交えて紹介されていました。
    セッションはURLから視聴可能なので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

    www.youtube.com

    レガシーシステムの課題

    セッションでは、企業システムの約65%がレガシーシステムであるというデータが紹介されていました。
    多くの企業が何らかの形でレガシーシステムを抱えたまま事業を継続しているのが現実です。

    レガシーシステムが抱える代表的な課題として、以下が挙げられていました。

    • ドキュメントの欠落
      改修が積み重なった結果、最新の仕様が残されていない
    • 技術的負債が蓄積している
      依存関係が複雑化し、修正時の影響範囲が読みづらい
    • 古いランタイムやフレームワークへの依存
    • 保守・運用コストが高い

    これらの要因が重なることで、モダナイゼーションが必要だと分かっていても、どこから手を付けるべきか判断できないという状態に陥りやすいと説明されていました。

    モダナイゼーションの4つのパターン

    レガシーシステムの移行アプローチには、主に以下の4つのパターンが存在します。

    1. Rehost
      アプリケーションには手を加えず、実行環境のみをクラウドへ移行する方法です。
      クラウド活用の第一歩として位置づけられていました。
    2. Replatform
      アプリケーションコードは維持しつつ、OSやミドルウェアをマネージドサービスへ移行します。
      運用負荷を下げながら、可用性や安定性を高められる点が特徴です。
    3. Refactor
      言語やフレームワークを含めて刷新し、技術的負債を根本から解消するアプローチです。
      効果は大きい一方で、難易度やコストも高くなります。
    4. Reimagine
      既存システムを前提とせず、ビジネス機能そのものを再定義する方法です。
      AIの支援は活用できるものの、業務判断や優先順位付けは人が主導する領域だと説明されていました。

    とくにRefactorやReimagineは理想的な姿ではあるものの、期間・コスト・リスクの観点から採用するハードルが高いアプローチでした。
    今回のセッションでは、こうした課題に対してAIエージェントがどのようにアプローチしていくのかが紹介されていました。

    AIエージェントが変えるモダナイゼーション

    AIエージェントの本格的な登場により、モダナイゼーションの進め方そのものが再定義されつつあります。
    これまで主流となっていた対話形式のAIとは異なり、AIエージェントは単に指示されたコードを書くだけでなく、目標達成に向けて自律的にタスクを計画・遂行する実行主体として機能します。

    セッションで説明されていたAIエージェントの特徴は以下の通りです。

    • 自律的なタスク分解
      「Javaを最新バージョンにしたい」といった抽象的な目標を理解し、必要な作業を自動でタスク化する
    • リポジトリ全体を対象とした変更
      単一のファイルだけでなく、リポジトリ全体を対象に影響範囲を把握し変更後の整合性を担保する
    • ツール連携と実行
      コンパイラやテストツールなどを状況に応じて呼び出し、コード変換やテストの実行までを自動で行う
    • マルチエージェント連携
      分析、変換、テストといった役割を持つ複数の専門エージェントが連携し、全体としての品質を高める

    これにより、従来は人間が数ヶ月単位で行っていた調査・変換・テスト工程が、圧倒的なスピードと安定した品質で完結し得る世界が示されていました。

    AIエージェント活用の具体例

    セッションでは、AWSのサービスを用いた具体的なデモが紹介されました。
    その中の一例を紹介します。

    ブラックボックスの可視化(AWS Transform)

    仕様書がないレガシーコードを理解するため、複数のエージェントが協力して解析を行います。

    • アプリ全体の構造や依存関係を可視化して整理
    • コードから最新の仕様書(Markdown形式など)を生成
    • 「この業務ロジックはどのようになっているか?」といった質問に対し、チャット形式でコードを根拠に回答する

    コードを1から読み解く負担が大幅に軽減され、時間を要しがちな調査を劇的に短縮できる点が有効だと感じました。

    依存関係の自動アップグレード(AWS Transform Custom)

    Java 11 + Spring Boot + AWS SDK v1 という古い構成のアプリを、最新のLTSバージョンへ安全にアップグレードするデモです。

    • 言語バージョン、ライブラリ、依存関係の一括アップデート
    • 変更に伴うコンパイルエラーを自動検知し、コード修正まで自動化
    • テストコードを実行して動作検証を行う
    • Gitのブランチ作成からコミット、PRの作成までを一貫して実施

    単なるライブラリの置き換えにとどまらず、リポジトリ全体の整合性を保ったまま移行可能であり、人間がレビュー可能な状態となるため、実運用に組み込みやすい現実的なアプローチです。

    仕様からコードを生成(Kiro)

    仕様駆動開発に特化した新しいエージェント型IDEのアプローチです。

    • 仕様書から、要件定義 → 設計 → 実装 を段階的に自動生成
    • ステアリングファイルにより、プロジェクト固有のルールやコーディング規約を初期段階から適用可能
    • 生成されたコードは設計書やテストケースと紐づいた状態で管理される

    コードを自動生成するだけでなく、仕様と実装の乖離を防ぎながら品質を担保するという開発プロセスとなる特徴を持っています。

    まとめ

    現在の案件では、まさにRefactorによる移行を進めていることもありセッションで紹介されていたアプローチは非常に魅力的に映りました。

    コードから仕様を復元し、アップグレードを行い、さらに仕様と実装の整合性を保ったまま新しいコードを生成するといった、一連の流れをAIエージェントに任せられる未来が現実的な選択肢として見え始めています。

    これにより、人間はコードの書き換え作業から解放され、AIが生成した仕様やコードをレビューし、最終的なビジネス判断を下すことに注力できるようになります。
    レガシー移行において高いハードルとなってきた課題に、正面からアプローチできる大きな変化だと感じました。

    今後もこうした技術やアプローチの動向を継続してキャッチアップしていきたいです。

    執筆者:小野 システムエンジニア