はじめに
Google Cloud Next 2026(以後GCN)@ラスベガス に参加中の高梨です。
早いもので、もう最終日に差しかかろうとしています。
GCN初日の4/22に行われた「Opening keynote: The agentic cloud」について、個人的な重要ポイントをまとめてお送りします。
※keynoteのすべての内容を記載しているわけではありませんので、ご了承ください。
概要
今回のkeynote最大のメッセージは、「AIのパイロット版の時代は終わり、エージェントの時代(Agentic Era)が到来した」というものでした。
その例として提示されたのが、Google自身の「カスタマーゼロ(最初の顧客)」としての成果で、すでに社内の新規コードの約75%がAIによって生成され、 マーケティング制作時間は70%削減、セキュリティの脅威緩和時間は90%以上短縮されているという事実は衝撃でした。

単なるアシスタントとして駆動していたAIが自律的に思考しタスクを実行するAIエージェントへ進化し、それが広がり「Agentic Era」を迎える今年、Google Cloudがエージェントのすべてをまとめる包括的プラットフォームとして打ち出したのが「Gemini Enterprise Agent Platform」です。
このサービスは、Vertex AIの進化版として位置づけられており、従来のVertex AIの機能に加えて、AIエージェントの統合、DevOps、オーケストレーション、セキュリティに関する新機能が追加されています。
そして、これを支え、AIエージェントをビジネスで本格稼働(スケール)させるための全体構造として、以下の5つの枠組みが提示されました。
- AI Hypercomputer:基盤となるインフラストラクチャ
- Agentic Data Cloud:エージェントの判断基準となるデータ基盤
- Agentic Defense:自律化されたセキュリティ体制
- Agent Platform and Models:エージェント構築・管理の中核プラットフォーム
- Agent Task Force:即戦力となる特化型エージェント群

新機能とアップデート
単なるAI活用サービスや特化型AIエージェントの発表ではなく、それを動かすための物理的なインフラから、データ基盤、セキュリティなど、「エージェントを組織・企業で使うため」のすべてを提供するということが今回の大きな見どころでした。
ここからは、先ほど挙げた5つの枠組みに沿って、それぞれどのような新サービス・新機能が発表されたのか簡単に整理していきます。
1. AI Hypercomputer
- 「コンピュートはもはや『チップ単体』で定義されない」
- Agentic Eraがもたらす膨大な計算需要を満たすため、データセンター全体を一つのコンピュートとして提供する。
| 新サービス名 | 概要 | 提供ステータス |
|---|---|---|
| 第8世代 TPU (At/Ad) | トレーニング特化(At)と推論特化(Ad)の2種類。Adはメモリキャッシュをシリコン上に統合し遅延を極限まで削減。 | - |
| Google Cloud Axion CPU | 同等のx86インスタンスと比較して最大2倍の価格性能比、80%の電力効率向上を実現するARMベースCPU。 | - |
| NVIDIA Vera Rubin NVL72 | "Massive exaFLOPS of inference performance per rack" ラックあたりでエクサフロップス級の推論パフォーマンスを提供。 |
Coming Soon |
| Virgo Network | "Doubles connectivity beyond the superpod" 最大96万基のチップを接続し、スーパーポッドを超えたスケーラビリティを実現。 |
Coming Soon |
| Google Cloud Managed Lustre | "Now supports up to 10TB throughput per second to handle massive AI workloads" 大規模AIワークロード処理のため、毎秒最大10TBのスループットをサポート。 |
General Availability |
2. Agentic Data Cloud
- 「コンテキストのない推論は単なる推測にすぎない」
- エージェントが当てずっぽうではなく自律的に確実な意思決定を行うための信頼できる文脈(コンテキスト)を提供するデータプラットフォーム。
| 新サービス名 | 概要 | 提供ステータス |
|---|---|---|
| Knowledge Catalog | 構造化・非構造化データを横断してタグ付けやエンティティ抽出を自動で行うユニバーサルエンジン。 | Preview |
| Smart Storage | "Unstructured data made agent-ready" 保存された非構造化データを即座にエージェントが利用可能(agent-ready)にする機能。 |
Coming Soon |
| Data Agent Kit | "Bringing a Gemini-powered data engineering experience to your favorite data practitioner tools" VS Code等の開発ツール内で、自然言語によりデータパイプライン構築を自律支援。 |
Preview |
| Lightning Engine for Apache Spark | "Industry-leading Spark performance" 従来比2倍の価格性能比を誇る、業界最高クラスのSpark向けエンジン。 |
General Availability |
| Cross-Cloud Lakehouse | AWSやAzure上のデータ(Apache Iceberg標準)へ、データ移動なしで直接・低遅延アクセス。 | Preview |
3. Agentic Defense
- 「AI主導の攻撃には、セキュリティもマシンスピードで動かなければならない」
人には追い付けないほどのスピード(マシンスピード)で行われるサイバー攻撃や、管理外の「シャドーAI」のリスクに対し、セキュリティ自体も自律化・自動化させる枠組み。
Wizの統合 (AI-APP): Wizチームの技術を統合し、「AI Application Protection Platform」を提供開始。エージェントが連携し、クラウドやAI環境の脆弱性をマシンスピードで自律的に特定・修正する。
- Geminiネイティブ SOC: アラートのトリアージや脅威のハンティングをエージェントが自律的に行い、解決までの時間を短縮する。
4. Agent Platform and Models
- 組織独自のAIエージェントを構築し、エージェント管理のための Build・Scale・Govern・Optimize を実現する統合プラットフォーム。
- 今年は特に厳密なガバナンス機能が強化され、組織・企業としてエージェントを活用することができるようになった。
| 新サービス名 | キャッチコピー・概要 | 提供ステータス |
|---|---|---|
| Agent Identity | "Give every agent a unique, trackable identity" すべてのエージェントに一意で追跡可能なアイデンティティ(ID)を与え、最小権限を担保する。 |
General Availability |
| Agent Gateway | "Centralized location to manage policies" ユーザ-エージェント間/ツール-エージェント間/エージェント同士 のネットワークやアクセスに関するポリシーを管理するためのコンポーネント。 |
Preview |
| Agent Registry | "Curated library of every custom-built agent and tool in your enterprise" 組織内でカスタム構築された全てのエージェントとツールのキュレーションライブラリ。 |
Preview |
| Agent Observability | "Trace the agent reasoning path end-to-end through your logs" エージェントの推論プロセスや行動に至った経路を、ログを通じてエンドツーエンドで追跡。 |
Preview |
5. Agent Task Force
- 特定の業務や領域に特化し、従業員の生産性を即座に高めるエージェント群。
| 新サービス名 | キャッチコピー・概要 | 提供ステータス |
|---|---|---|
| Workspace Intelligence | "Unified, real-time understanding powering agentic work" Google Chatをコマンドセンター化(Ask Gemini in Chat)し、分散した情報を統合・理解。 |
General Availability |
| Deep Research Agent | "Answers to your hardest business questions, in just minutes" データ基盤(Knowledge Catalog等)と連携し、社内データやWebを横断調査して、困難な問題にも素早く回答を提示する特化型エージェント。 |
Preview |
まとめ
今回のKeynoteでは、個人的に「Agentic EraはすべてGoogleで叶う!」というGoogle Cloudからの熱いメッセージを受け取ったため、そこで提示された枠組みをメインにアップデートを整理してみました。
私が気になっているのは、Cross-Cloud Lakehouseです。業務ではAWSを多く利用していることもあり、それぞれのクラウドの強みを活かすことができるマルチクラウド構成の新しい形が見えてくるのではないかという部分に注目しています。
プレビュー状態のものも多くあり、本格的に導入していくのはまだ先のように感じますが、来るべき「Agentic Era」をキャッチアップできたことが何よりの収穫でした。
いかにAIエージェントを組み立て、管理し、拡張できるか、が今後のエンジニアの価値の一つになるかもしれません。置いていかれないように気合を入れて最終日に臨んできます。
keynote本編では、本記事に記載できていない新サービスや様々なAI技術を活用した具体的な事例紹介もありますので、以下の公式配信もご覧ください。
https://www.youtube.com/live/11PBno-cJ1g?si=kWtbkbNcP_K_DUji